第72話 後日談編 知恵と知識は幾つになってからでも手に入れられましてよ?
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早朝の各自の報告会にて、クリスタルから聞いた話はとても良いものでした。
文字を覚えていき、絵本で更にこの国の言葉を覚え、本を以て知識を蓄える。それは大変有意義なものでしょう。
ただ、クリスタルが懸念するべきことは、王太子としての知識や情報が手に入りにくいという事。
この国の王太子としての知識は、この国ならではの知識であって、シャルダン王国の王太子としての知識は、シャルダン王国でしか手に入れる事の出来ないもの。
ならば、どうするべきかと考えた時、リコネルはクスクスと笑い「あら、可笑しいですわね?」とクリスタルに問うた。
「クリスタルの情報は共有されているのでしょう? ならば、あなたがシャルダン王国の王太子として育てればいいではありません事?」
『おっと、それもそうであったか』
「シャルダン王国の現王太子様は、聞くところによるとあまり良くないお方の様子。王太子としての責務も真っ当出来ぬような方なのでしょう?」
そう、クリスタルの情報では国民を国民とも思わぬ発言が多く、考え方があのチャーリーに似ているのだというのです。
それではシャルダン王国の未来など真っ暗でしょう。
何時暴走するかも分からないシャルダン王国のクリスタルを想えば、今のうちにドグにシャルダン王国の王太子、もしくは王としての教育とは必要なのでしょうね。
『我に出来る教育をこれから施すしかあるまいのう』
「良いではありません事? 知識や知恵は幾つになっても、年は関係ありませんもの。得られる時に得られる。得ようとした時に得ればいいものですわ。ドグにはその機会が今までシャルダン王国では無かっただけの事。この国で得られる知識だというのならば、徹底して教えるのも良いものかと思いますわ」
『リコネルはスパルタじゃからのう!』
「あら、スパルタではありませんわ? 知識欲を突いただけですもの」
そう語るリコネルに私は笑い、隣に座るリコネルの頭を撫でると――。
「ふふふ、それはある意味、スパルタかもしれませんよ?」
「そうかしら?」
「でも、知識欲に火をつけさせるのはお上手ですね。知識、知恵、それらを得るのは幾つになってからでも遅くないのも同意します」
「ですわよね?」
「ドグ達は今がチャンスなのです。クリスタル、このチャンスを生かしましょう」
『うむ。このチャンス逃す事は大きな損益に繋がる。任せておれ』
こうして、ドグには内緒で秘密裏に、シャルダン王国の王太子としての勉強がスタートしました。
また、視察にはドグと弟妹を連れて行く事も決まり、彼らにこの国をもっと触れて貰おうという方針となったのです。
彼らは狭い世界で狭い知識の中で過ごしてきた。
折角この国にいるのならば、知見をもっと広げさせていこうと決めたのです。
「シャルも連れて行きますか?」
「そうですわね。まだまだあの子は幼いですけれど、ドグ達といる事で新たな発見や色々な体験が出来るかもしれませんわ。シャルにとっても良き機会に恵まれましたわね」
「ふふ、そうですね」
年近いドグの弟妹達と色々な事に触れ合えば、その相乗効果とは高いでしょう。
シャルにとっても、この国をよりよく知り、国民の事を思う次代の王となってくれる事を祈るばかりです。
我が国、アルフォルト王国は私の代で大きく変わりました。
今も変わっている最中ではありますが、国民が暮らしやすく、誰もが笑って暮らせるように努めるのはトップに立つ者の使命、責務です。
怠る事は、決して許される事ではありません。
そんな事をすれば、いずれ地獄に落ちる事でしょう……。
民を泣かすべからず……とても大事な事です。
『まぁ、子に熱心なのは良き事じゃが、次のお子はまだか』
「絶賛励んでましてよ!」
「リ、リコネル!」
「シャルも7歳、そろそろ下に弟か妹が欲しい頃合いですわよね? ね? ジュリアス様?」
「そそそそそ、それもそうですね! 励んではいますよ、励んでは!」
『むう、それならばよいが……』
「それはもう、燃えるように愛し合っておりますから、安心為さって?」
「「燃えるように」」
『はっはっは! よいよい! ジュリアスから搾り取れるだけ搾り取るがいい!』
「そうさせて貰ってますわ♡」
リコネル……リコネル!
確かに最近頻度が多いですが、第二子の為に頑張っていたんですね!
いえ、私も二人目は出来るだけ早く欲しいですが……!
「ジュリアス様」
「カティラス、何でしょう」
「今度、もっと強めの精力剤を用意しましょうか?」
「……お願いします」
リコネルが励むというのであれば、私も本気を出さねばなりませんね。
次は出来ればリコネルに似た女の子を。
ああ、それだと嫁に出せませんね……困りました。
でも、娘と言うのもまたいいと思うのです。
嗚呼、リコネルに似た可愛らしい娘……。
「リコネル、次は娘ですね」
「わたくしはどちらでも構いませんけど、ジュリアス様は娘が欲しいんですのね?」
「ええ、嫁に出せる気が一切しませんが」
「まぁ!」
「リコネル、そう驚く事でもない。俺も娘が一人いるが、嫁に出せる気が一切しない」
「お兄様まで!?」
「婚約者を決めるというだけで胃に穴が空きそうだ……」
「おお……お義兄さん、顔色が大変悪くなりましたよ!」
「ジュリアス様……覚悟を決めておいた方がいいですよ……。娘とはそれだけで破壊力が凄いのです」
「――覚悟をしておきましょう!」
「もう、まだ妊娠もしてませんわ!」
と、リコネルからの言葉にドッと笑いが出た執務室。
この執務室では、嬉しい事から悲しい事、辛い事、此れから奮闘せねばならぬことが山のように湧いて出る部屋でもありますが……今日は些か、明るい未来に向けての話が出来て良かった。
ドグ……貴方は将来きっと良き国王となるでしょう。
その手伝いを出来る私達は、とても幸運なのでしょうね。
「――さて、今日の本格的な執務に移りましょうか!」
それからの日々は、ドグとシャルを含めた子供たちを連れた視察や、ドグのシャルダン王太子としての教育が順調に進んでいました。
ドグは最初、何故自分が王太子の勉強をしなくてはならないのか理解出来なかったようです。ですがクリスタルからの「シャルダン王国が竜巻被害にあったのは、クリスタルがシャルダン王国を見捨てようとしているからだ」と教えて貰いその為には新たなる王、もしくは王太子が必要なのだと知ってから、これまで以上に王太子としての勉強に励んでおられるそうです。
実に喜ばしい事でもあり、また視察に行けばこの国の空気に触れ、そして私とリコネルがどう国民に接しているのかを見聞きし、驚きの連続だったようです。
それが当たり前の行動であると知ると「父王たちとは全く違う……」と小さく呟き「国民を不幸にしてはならぬのに」と苦しそうな表情をしておられました。
それさえ解っていれば、彼は素晴らしい国王となられるでしょう。
私達が導き、彼を本来あるべき姿、あるべき性格、あるべき立場に導くことが出来ればよいのですが……。




