第71話 後日談編 その頃シャルダン王国の王太子はと言うと――
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――シャルダン王国王太子side――
竜巻被害により、国の大半が大きな被害を受けた。
元々少なかった農地は竜巻により食べ物がダメになり、我々が生きる為のオアシスは数か所干上がった。
大きな災害の有様に、国の重鎮達からは「王太子様はクリスタルに愛されていない」等と囁かれる程だ。
全く以て腹立たしい!
俺の何処がクリスタルに愛されていないというのだ!
要らない弟妹達を毒殺するところだったのに、父王は奴隷として他国に送り込んだ。
それだけでもホッと出来たというのに、皆が口々に「クリスタルに愛されない王太子」「アルフォルト王国のチャーリーの再来」等と口にして!
「全く以て腹立たしい! 竜巻被害が防げなかったのは俺の所為ではないわ!」
「王太子、お気をお静め下さい」
「今は被害を最小限に抑える為に動かねばなりません」
「国民の大半が死のうが知った事か!」
「何と言う事を仰るのです!」
「国民あってこその我が国でもあるのですぞ!」
「ハッ! 感謝はされど、批判など知った事か!」
そう言って机にあったガラスの水ポットを投げ捨てると、いい音を立てて割れて床に水と破片が飛び散った。
「見ろ、これが国民のあるべき姿だ。このガラスの水ポットのように、どうせ奴らは放っておいてもわいて出てくる。その中の選ばれた者だけが出来るだけ多く生き残ればいいだけだろう?」
「しかし、それでは国が低迷します……」
「まだ俺に苦言を言うつもりか!」
「い、いえ……」
叫び怒鳴りつければ部下たちは静まり返り、俺は大きく息を吐いてソファーに乱暴に座った。
若い女奴隷たちがせっせとガラスを片づけ、床を拭いて出て行ったが気に入らん。
――クリスタルに愛されてない王子?
――アルフォルト王国のチャーリーの再来?
それどころか、ドナルン王国のクラビエ元国王のように死ぬのではないか……等と噂され、良い気は一切しない!
確かに我が国のクリスタルも真っ赤だが、それは俺に対してではないだろう!?
父王の時代から徐々に赤くなったのだ、俺の所為ではない!
そもそも、俺の下の弟達は毒殺で徐々に減らしていったというのに……生き残ったドグはアルフォルト王国で奴隷にならず生きているし、その下の弟妹達も同じだ。
国が落ち着いた暁には、アルフォルト王国に視察に行き、形ばかりのお礼をしてからドグ達を殺そう。
奴らが生きていては、おちおち寝てもいられない。
我がシャルダン王国の王太子は俺だけで良い。
他の王子は死んで貰わねば困るのだ。
俺の地位を盤石にするためにも……生きて居て貰っては困る!
「それで、父王は何をしていらっしゃる」
「はい、他国から届いた支援物資で何とか一年の間にこの国を持ち直させる為に、各地の視察や、今後訪れる水不足に関して頭を悩ませておられます……」
「新しいオアシスもまだ見つかっておらんのだったな……」
「竜巻の所為で水路が破壊されたのも大きいようです」
「今後懸念されるのは、水を奪い合って国民同士の戦争が起きるのではないかと……」
「ははは! それは良い、国民を淘汰できるな!」
そう笑うと重鎮たちは眉を寄せ俺を見つめてきた。
何か間違った事でも言っただろうか?
「国民が武器を持ち、城に攻め入る事も考えられるのですぞ……」
「そうなった時は、兵士たちがわからずやの国民を更に淘汰出来るだろう」
「王太子殿下」
「滅多な事を仰ってはいけません」
「ふん。なんだ? 貴様らもドグのように国民を重視するべきだというのか? あのわからずやの馬鹿で愚かな者のように!」
ドグは弟達の仲でも、何故か国民を尊ぶ愚かな弟であった。
だからこそ毒殺を何度も試みたというのに、それらはまるでナニカに守られているように殺すことは不可能だった。
だからこそ、奴隷として出て行った時はホッとしたというのに……。
「全く気分の悪い……。ドグがまだ生きているというだけでイライラするのに、此れ以上俺をイライラさせるな」
「わかりました。しかし陛下が視察に行っている間、王太子殿下が頼まれた仕事が全く進んでおりません……。国の政策等が滞っております」
「ああ、国の仕事を父王から頼まれていたな……。全く面倒だ。国民を生かすも殺すも俺の掌だと思うと気分は良いが」
「視察は一週間後には終わり帰ってこられます……」
「仕方ない。無能な貴様たちがしてくれれば楽が出来たが……無能は結局無能だからな」
そう言うと溜息を吐きながら立ち上がり、王太子専用の執務室へと向かう。
行ったのはどれくらい前だっただろうか?
少ない書類だけだったが、あの程度なら直ぐに終わるだろう。
そう思い執務室を開くと、机の上は山のような書類の束が出来上がっており、それでも足りないのは机が用意されて書類が積み上がっていた……。
「おい、なんだこれは」
「王太子殿下が仕事をしていない間溜まった書類で御座います」
「多すぎだろう……嘆願書があれば捨てろ。無意味だ」
「しかし……」
「聞こえなかったのか? 嘆願書は読まないと言っているんだ」
殺気を滲ませてそう告げると、部下たちはバタバタと山の用意来ていた嘆願書を退かし、それでも多い仕事に溜息を吐くと少しずつ仕事をしていく。
だが、書類仕事程退屈なものはない。
適当にやって父王に咎められるのも困る……。
そうだとも、俺はドグよりも優秀な筈だ。
奴よりも俺の方が優れている。
優れていないと可笑しいのだ!
この書類の山を何とか父王が帰ってくる前までに終わらせておけば、後は――。
「父王が戻られて俺の仕事が終わった暁には、アルフォルト王国にお礼を言いに行く名目で……ドグ達を殺しに行くか……」
その瞬間、クリスタルがまた赤く染まった事に、俺達が気づくことは無かった――。




