第68話 後日談編 他国には他国の問題が山積しているものですわね
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ドナルン王国の国王は、リコネルにお熱である。
非常に不愉快なのですが、かの王であるクラビエ国王はリコネルとあまり年が変わらず、妃も数人いるのにリコネルに熱を上げているのです。
一年に一度視察と言ってきては、リコネルにちょっかいを出そうとする為、我が王国では警戒人物として城中に伝えている程。
去年はリコネルの部屋に忍び込もうとして騎士団に捕まり、強制的に国に送り返しました。
今年はどうなるのか分かりませんが、リコネルの部屋を知っている以上、彼女には夫婦の部屋及び、私の部屋で過ごして貰う事になりそうです。
会いたくないというリコネルの要望で、現在体調を崩して会えないという事にしようと思います。
『なんじゃ、またあの阿呆国王がくるのか』
「ええ、頭の痛い問題です」
『ふむ、視察に等来ておる暇はない筈なんだがのう』
「と言うと?」
ドグ達の事を一手に任せているクリスタルが久々にやってきて、そのような事を言い出した為問いかけてみると――。
『クリスタルとは各国の情報を共有するのじゃが、かの国のクリスタルは現在怒りに震え、真っ赤じゃぞ』
「「え!?」」
『理由は、女癖の悪じゃな。家臣の妻であろうと美しければモノにして、要らなくなれば送り返す。それを繰り返し自殺する者が多発しておる。王に非ず……と、クリスタルは判断したらしい』
「何と酷い事を……」
「最低ですわ!」
『まぁ、視察に来ると言っておる時点でもうこの国には来れぬよ。出発する日にあの国は国王を失う』
「と言う事は、クリスタルが暴走するのですわね」
そうリコネルがクリスタルに問いかけると、強く頷き小さく溜息を吐いた。
『クラビエ王が亡き後は、まだ年若く幽閉されている王弟であるラディアスが王を引き継ぐ。幸い我がした時のように王都が燃える事はない。狙うのはクラビエ王1人らしいからの』
「王一人の命で国民が救えるのでしたら十分でしょう」
「でしたら、強いストレスを感じることなく過ごせそうですわ。あの方直ぐ色目を使ってくるから大嫌いでしたの」
『我からの情報もクリスタルを通して知っておるからのう。最早王に非ずとされたのであれば、後はクリスタルによる断罪が行われるだけじゃ。まぁ、真っ赤になっておるクリスタルは他にもあるが、各国のクリスタルにしてみれば、王に非ずと言う者達が多いのが悩み……じゃろうな。我の場合、ジュリアスとリコネルがいてくれるお陰で安定して国を守っておられるが……。ほれ、クリスタルが守らんかった国があるじゃろう? あそこは近い未来国王が変わるぞ』
その言葉を聞いて、まさかと思いました。
クリスタルは国を守る守護神のような存在。
そのクリスタルが災害を防ぐ事は当たり前のように言われていた事です。
ですが――ドグの国のクリスタルは、国を守る事は無かった。
「シャルダン王国もまた……クリスタルが赤いのですね」
『しかも、次期国王と考えていた人物をこの国に送っておるのだ。我が保護するのは当然であろう』
「そうでしたの!?」
「つまり、次の国王はドグだったのですね」
驚きクリスタルを見つめつつ口にすると、かの者は小さく頷き口を開いた。
『まだクリスタルが国を焼き殺す事はせんだと思うが、ドグの精神が安定し、この国である程度成熟したら、国王や重鎮たちは焼き殺されるじゃろうな。今はドグが国王の器になるのを待っておる際中じゃ。かの者は幼き弟妹に勉強を同等に教え、とても大切にしておる。心は安定しておるが、それもこれも我が国にて保護されているからと言う安心感の元での事じゃ。この国では奴隷制度も無ければ自分と幼い弟妹が毒で殺されるかもしれないという不安もないのも大きいのじゃろうな』
ドグ達がそんな状態の中、シャルダン王国で生き抜いて来たとは知らず、思わず小さな溜息を吐いてしまいました。
せめて我が国にいる間は心穏やかに、そして王としての素質を育てて行って貰いたいものですね。
「では、ジュリアス様と一緒に視察等に連れて行った方が宜しいのかしら?」
『そうじゃの。今はある程度安定し始めてきた頃じゃ。もう少し安定したら頃合いじゃろうな。その時は我から伝えよう』
こうして私達はシャルダン王国の次期国王となるドグの為に、コッソリと動くことになりました。
事実を伝えるには、まだ受け入れられないだろうと思ったのです。
「まずは目下の問題が何とかなりそうで安心しました。いえ、人が亡くなると言うのを喜んではいけないのでしょうが」
「あら、あの方は極刑でも構わないとわたくしは思ってますわ」
「それはそうですが……」
「女性を食い物にして、好き勝手してきた罪は重いです事よ? 死を持って償う程の罰が下るという事ですわ。それが一国の王がしているというのもまた大問題ですもの」
「それもそうですね」
リコネルの憤慨した様子に、私も言われてみればそうだと……リコネルさえも狙っているのなら死んでもらった方がいいのだと考えを改めました。
愛する妻に迫る男等、消えてしまえばいいのです。
(そう思うと、私も意外と過激派なのかもしれませんね)
そんな事を考えつつ、クラビエ王の命が風前の灯の中、私はかの国が何時お越しになるのかなどはカティラスに任せ、ドグの事に考えを巡らせました。
ドグが良き王になれるように導くことは可能だろうか?
こればかりは、ドグが安心して言う事を聞くのだというクリスタルの力は借りねばならないでしょう。
「クリスタル、ドグの事は貴方にお任せしています。ある程度この国の現状などを前もって教えて貰えますか?」
『良かろう。ドグには事前の知識は必要じゃろうからな。何故ジュリアスが王となったのかも伝えておこう』
「お願いします」
こうしてドグの方はクリスタルに託し、私達は仕事に励むのでした。
――それから数週間後、急ピッチで我が国に来るように調整したクラビエ王が、ついに我が国へ出立する日が訪れたのですが、出立しようとした瞬間、クラビエ王が乗っていた馬車が爆発炎上……王は即死だったそうです。
その燃え盛る馬車から降り立ったのは人型をしたドナルン王国の人型をしたクリスタルで『この者、王に非ず。この国の王はラディアスである』と伝えたことで、幽閉されていたラディアス様はようやく自由となりました。
それでも自分を律し、ドナルン王国を導く良き王としてラディアス新王が一歩を歩み出したという話を聞いたのは――書状が届く前日、クリスタルからの情報でした。
『葬儀の参列はいらんそうだ。それよりも新たな王としての誕生に、新たなる友好の証として書状を送れば良かろう』
「分かりました。それにドナルン王国の色である紫のプリザーブドフラワーを贈りましょう」
各国の王の式典では、我が国のリコネルの花屋にプリザーブドフラワーの王冠が注文されることが多い為、それを祝いの品として贈る事に決めたのは言う迄も無く――。
「そう言えば、妃たちはどうなるのです?」
『不遇な扱いを受けていた妃たちは家に帰されるそうだ。悲しいが、それが現実よのう……』
その言葉に、世の中儘ならないものだと言う事と、やはりいつも被害を受けるのは……女性の方なのではないかと言うやるせなさを感じたのでした。




