第62話 後日談編 国の問題点は、解決していきますわ
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今、我が国が抱える1つ目の問題。
それは、冒険者が増えたことによる――孤児の増加でした。
冒険者の女性が産んだ子供が、孤児院に連れてこられるというケースがとても増加しているのです。
冒険者とは、冒険者として活動してこそ生活が出来るという職業。
故に、女性は避妊するのが当たり前なのですが、やはり妊娠してしまう場合も。
その場合、出産しても育てられないという事が多いらしく、それで孤児院を託児所のように使う事が増えているのだと、孤児院から連絡があったのです。
孤児たちの中には、親を亡くした子供もやはりいますから、親が度々会いに来る……と言うのは虐めにも繋がります。
そこで、孤児院からは何とかして貰えないかと言う連絡があったのでした。
「確かに、孤児院を託児所のように使うのは問題ですわ」
「そうだな……」
「ええ、そこで園と似た託児所を作ろうと思うんですが」
「そうですわね……。小さい子供1人で居させるよりは、大人の目があった方が安心ですし、勉強に関しては園に通って貰ってと言うのが理想ですわ」
「私もそう思います。そこで、園の隣にまだ土地がありますから、そこに冒険者の子供たちが集まる託児所を作ろうと思うのです。生まれてきた子供に罪はありませんからね。放っておくのは気が引けます。冒険者には事態を重く見て貰い、うっかり女性が妊娠をしてしまわないように力を入れて貰う様に通達して貰う……と言う方向で行こうかと思います」
「それが宜しいかと思いますわ」
こうして孤児院を託児所に使うという案件については、急ぎ冒険者の子供達用の託児所を作ることで私達の話し合いでは決まりました。
後は、此れを大臣たちがどう返事をするかに寄りますが、大体リコネルが論破する為、通らない――と言う事は殆どありません。
また、私が国王になってからと言うもの、元王国にいた大臣たちは皆さんお亡くなりになったので、今は若い世代の大臣たちが多く皆さんやる気に満ちておられます。
金さえ入れば……と言う腐った大臣がいない事は、我が国にとって幸運と言っていいでしょうね。
若い世代が新しい風を持ってくる事で、何事もスピード感を持って政策が進んでいきます。前の王国では考えられなかったことです。
あの頃私はよく胃を壊していたものですよ……。
「次に、やっと人員不足も解消されまして、特別老人院で働く人員不足は解消されたとの連絡がありました」
「まぁ! それは素晴らしいですわね!」
「ええ、給与面は昔より待遇を良くしてかなり生活しやすい給与まで引き上げました。それもかなり大きかったことでしょう」
「でも、人数不足といいつつも、十分すぎる人数を用意していたと記憶しておりますが?」
そう声を掛けてきたのはカティラスさんですが、私とリコネルは首を横に振りました。確かに完全な人員不足と言う訳ではなかったのですが、やはり動けないお年寄りの相手と言うのは色々と苦しい事も多いと聞きます。
重労働ですし、身体を酷使する事も多いのが介助、介護職なのです。
それをリコネルが分かりやすくカティラスに伝えると、カティラスは「知らなかった事を恥じております……」と口にして一礼されました。
「仕方ありませんわ。実際現場を視ていないのですもの……。わたくしやジュリアス様は何度も足を運んで聞き取りや改善案を貰ってきてましたけれど、その中の一つが、人員をもっと増やして欲しいという要望でしたの」
「なるほど……」
「介助や介護はとても力の必要で、精神力もかなり使う仕事ですわ。そこも考えるとやはり、待遇も良くして人員も増やさねばなりませんでしたの」
「身寄りがないお年寄りが殆どです……。最期の時を見送るのも職員の仕事となるのです……。葬儀に出すのも職員たちがして下さっているんですよ」
「そうだったのですね……」
「だからこそ、人員が欲しかったのですわ。肉体的にも、精神的にもキツイお仕事ですものね……」
「分かりました。俺もまだまだこの国を分かったつもりでいたようですが、足りない事に気づかせて頂き、有難うございます」
「わたくしたちは視察に何度も行っていたから知っているだけですわ。行ってなかったら現場を知らなかったですもの」
そう言って頭を深々と下げたカティラスにリコネルは優しく声を掛けられました。
そこには兄妹という姿はなく、家臣と王妃と言う姿がありました。
(立場を弁えてのこのやり取り、やはりカティラスを宰相にしたのは正解でしたね)
他にも候補は出ていたのですが、どうにもパッとしなかったというか、自分の傍に置いて信じられるかと言われると難しかったのです。
そこで白羽の矢が立ったのがカティラスでした。
領地経営はまだ健在の両親と、そして両親から領地経営を教えて貰っている妻に任せる予定らしく、私達の為に尽くしてくださっている。有難い事です……。
「カティラスには私達が城に不在の時、国を任せているのですから、少しずつ私達から情報を拾っていくと良いですよ」
「ええ、まだまだ未熟だと痛感致しました」
「ははは」
こうしてある程度の会話が終われば、後は大臣たちとの時間です。
冒険者の託児所問題は2時間程の討論を交わしてから了承されました。
建築は直ぐに始められるそうで、早くとも半年以内には託児所は出来る算段となりました。
これで1つ、またこの国にあった問題が消せたことにホッと致します。
少しずつ平和を取り戻し、少しずつ発展していく国の未来はきっと明るいでしょう。
お陰で残業も少なくなり、夜はリコネルが自分の商売である小説活動をしている方々の拠点に向かい作家活動をしている間、息子を寝かしつけてから自室に戻るのが何時もの日常でもあります。
そして――息を切らせてリコネルが帰ってくるのもまた、日常なのです。
「ジュリアス様遅くなりましたわ!」
「いえいえ、リコネルお帰りなさい。存分に楽しめましたか?」
「ええ、色々と新鮮な情報が沢山で大変でしたの! でもそれらは一旦隅に置いて……。お待たせしましたわ。夜は一緒にお風呂……でしたものね?」
「ふふふ、忘れられたかと思っていました……と言うのは冗談ですよ」
最愛の妻とは、月の使者が来ない日は一緒に湯船にと決めているのです。
こうして2人で湯あみをするのは、夫婦円満の秘訣。
リコネルが帰宅する時間に合わせて湯を用意して貰っていた為、私達はゆっくりとその後は体を洗い合い、湯船に浸かるのでした。
そこではと言うと――?




