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断罪された悪役令嬢は押しかけ女房~第二の王都と呼ばれる辺境領地で、彼女の夢を応援してたら第二の国になりました~  作者: うどん五段
悪役令嬢な王妃は、全てを受け止めるのです!

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第51話 わたくし達を脅かす、二つの影②

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 ――チャーリーside――



 公爵家から母上の実家に戻された私は、最初こそ同情されたが、次第にその対応は冷たいものへと変わっていった。

 皆が口にするのだ。

 ――クリスタルに認められなかった王子。

 ――王都が燃えたのは王子の所為ではないのか?


 疑惑の目は、常に向けられるようになっていった。

 お婆様やお爺様ですら、私を見る目はとても冷たくなっていく。


 耐えることなど不可能で何度も屋敷の物を壊したが、王城では誰も咎めなかったのに、この屋敷に来てからと言うもの何かを壊せば咎められ、喚き叫べば地下牢に閉じ込められた。

 なんて扱いだ。

 仮にも私は王子だぞ!?

 そう何度も口にしたが、誰一人私に同情する者はいなかった。

 それどころか――お爺様に呼ばれて久々に地下牢から出たと言うのに。



「お前の母が不貞を働いてできた子だとクリスタル様が申してらっしゃる。事実か?」

「クリスタルなど偶像でしょう!? 私は父上にクリスタルのある場所に連れていかれましたが姿を見ることも出来なかったのですよ!?」

「何だと!?」

「王家の血を引くものなら必ずお姿を見ることが出来るクリスタルが見えなかったと言うの!?」



 私の言葉にお婆様ですら驚愕し、口を手で押さえて震えた。

 一体何を言っているんだ?

 クリスタルなど、都市伝説、偶像の産物であろう?

 それなのに、何故お爺様もお婆様もうろたえると言うのだ!



「ええ、私は父上に薄暗い地下へ連れていかれ、急に現れた化け物に父上は殺され、母上までもが殺されました! あの化け物は私に王家の血が流れていないなどと嘘を言ったのです! 即見つけて斬首刑にすべ」

「黙れ! やはり貴様は王家の血を引いておらなかったのだな! アリーシャめ……なんという恥さらしな真似を!」

「お爺様、母上は不貞など働いている筈がありません!」



 そう私が叫んでも、お爺様は手に持っていた束を私に投げつけ、呆然としながらも床に落ちた書類へ目を通すと――そこには、母の不貞の証拠がズラリと並んでいたのだ。

 そして、私の本当の父は……宰相であることも書かれていた。



「何です……これは」

「クリスタル様からアリーシャが今までやった証拠を集めた物だ。まったく、アリーシャには呆れて……いっそアリーシャは我が家にいなかったことにしようかと話し合っていたところだ」

「は? では母上から生まれた私はどうなるのです」

「庶民におちるに決まっているだろう。恥知らずな娘など私たちにはいなかったのだ。そもそもお前が王の血を引いていたとしても、同じ事をしただろうがな」



 思いもよらない言葉に目を見開くと、お爺様は汚らしい者を見る目で私を見つめ、お婆様は私に背を向けこちらを見ようともしない。



「どういう……ことです? 私がこの伯爵家の」

「私たちの息子が既に跡を継いでいるのはお前も知っての通りだ。しっかりとした、領民に恥じぬ領主として働いている。だが、お前はどうだ? 王が動けない間にやらかした政策とは素晴らしいものであったか? 否! あのような愚策しか出せぬ者を領主にすることは出来ぬ! 決して、何があってもだ!」



 力いっぱいに叫んだお爺様に、私は思わず呆然としてしまった。

 我ながら素晴らしい政策を立てて領民に出したと言うのに、それを愚策だと言うのだ。

 必要のない病院の建設をやめたのが悪かったのか?

 女性は家を守るものだと言う考えが間違っていたのか?

 それとも一体何が……税金を増やしたことも愚策だったと言うのか!?


 顔を真っ赤に染めてお爺様に叫ぼうとしたその時、お婆様が大きな声を出して泣き崩れた。



「何故なの!? 何故王の血を引いてこなかったの!? クリスタルの怒りを買わなければ王都は今も輝かしい王都のままで居られたのに! 少なくとも我が家が白い目で、貴族社会から追い出されることも無かったのに! 全ては貴方が王の血を引いていないからよ! クリスタルの怒りに触れたからよ! こんな者を孫だなんて思いたくもないわ!」

「お婆様……」

「お前にお婆様と呼ばれることすら虫唾が走る!」



 そう言ってお婆様の近くにあったティーカップを投げつけられ、私の美しい顔に傷がついた。

 信じられなかった。

 この王都では見目麗しい者こそ正義で、その者の顔を攻撃することなど許される行為ではなかったからだ。



「なんてことを……私の美しい顔から血が……」

「煩い黙れ!」

「誰かこいつを地下牢に投げ込んでおけ! 食事は最低限でいい!」



 その言葉に私は数人に抑えられ、元居た地下牢に放り込まれた。

 怪我の手当てもされず、染みる服の着替えすら渡されず――。



「あーあ……この屋敷も、もう終わりだな」

「違う職場を探すか?」

「いや、探すならジュリアス卿……いや、ジュリアス国王陛下のおわす王都で仕事を探した方がいいだろう?」

「確かにな、どのみちアレが王の血を引いていても王都は消える運命にあったさ」

「だな」



 そう言って去っていく男たちに言葉に歯を食いしばり、私のこの現状は全てジュリアスの所為だと理解した。

 クリスタルを奪ったのも、リコネルを奪ったのも、全てはジュリアスだ。



「復讐してやる……私から何もかもを奪った奴を許してなるものかっ!」



 血がにじむほど拳を握りしめ、私は時を待った。

 丁度その頃、私を馬鹿にしていた門番により、地下牢の扉が開いていることに気づき、屋敷から金を持ち出すと、囚われの我が将来の妻、リコネルの元へ急いだのだ。


 リコネルはああ言っているが、昔から私に対して厳しかったのは愛情の裏返しだろう。

 本気で嫌っているわけではないのだ。

 それなのに、リコネルを糾弾してしまったのは私が悪かったとしか言えないだろう。

 だが私を愛するリコネルなら、笑顔で罪を許してくれるはずだ。


 丁度良く、避難民が領民になる手続きをしている場所に潜り込むことができ、私はすんなり王都となった辺境王国の領民になることができた。

 だが、それは今だけの話だ。

 必ずこの王都は取り戻して見せる。

 私こそが王だ。

 リコネルこそが私の妻に相応しのだ。


 そう思い、リコネル商会へ何度も訪れたが追い出された。

 私がリコネルに会いたいと言っているのに、邪魔をしているのはきっとジュリアスに違いない!

 なんて男だ……私が国王になった暁には、火炙りの刑にしてやる。

 そんな事を沸々と湧き上がる怒りを殺して街を歩いていると――。



「チャーリー様!?」



 聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはアルジェナが驚いた様子で立っていた。

 この女の所為で……そうは思ったが、使えるものならば何でも使わなくてはジュリアスに対抗することはできないだろう。

 そんな風に思っている私の心など知りもせず、アルジェナは甘い言葉を囁くんだ。



「貴方こそが本当の国王だわ、チャーリー国王陛下」



 その言葉に私は直ぐに笑い出した。

 私を裏切った癖に、口だけはうまい女だ。

 その言葉でどれだけの男を誑し込んで、どれだけの男に抱かれたのやら。

 汚らしい奴だ。


 だが、リコネルを手に入れ、ジュリアスを処刑した後にお前も同じように処刑してやろう。

 ――それまでの付き合いだが、うまくこの女を使おうと思った。


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