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押しかけ悪役令嬢を娶ったら、辺境が第二の王都になった  作者: 寿明結未(ことぶき・あゆみ)
悪役令嬢は王妃なんです!

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第45話 作家とは良くも悪くも個性の集まりでしてよ?

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 次の日、私とリコネルは護衛騎士数人を引き連れ、リコネル商会の1つである本屋の隣にあるアトリエへと向かいました。

 作家人生を歩む方々のアトリエと言って過言ではありません。

 各部屋は防音魔法が施されているので、どれだけ叫んでも問題はないのが利点だとリコネルは嬉しそうに語っていました。

 そういえばリコネルも小説を書き終わった際には「終わりましたわ――!」と言う叫び声がよく屋敷に響いていたのを思い出します。

 それを考えると、別室で執筆している作家さんへの配慮が出来ている建物と言えますね。



『どんな作家達が集まっておるのか楽しみじゃのう!』

「ええ、とても楽しみですわ!」



 リコネルとクリスタルはワクワクした様子でアトリエへと入り、私はそんな二人を微笑ましく見守りながら足を踏み入れました。

 既に到着していたナナリー達に案内され、大きな部屋へと案内されると、そこには既に、今回賞を取った新人作家さんたちがカチコチに固まった状態で待っておられました。



「皆様、お待たせしてしまいましたかしら?」

「と……とんでもありません!」

「お初に御目にかかります! そしてずっと前からファンでした!」

「リコネル様万歳!」

「「「万歳!!」」」



 何やら怪しい宗教のような状態になってました……。

 リコネルに会えたという感動からか、むせ返るように涙を流す作家さん。

 両手を組んで涙を流す作家さん……。

 必死にノートにペンを走らせている作家さんと、多種多様です……。



「これは、どうなっているのかしら?」

「我々作家は、リコネル様の小説の大ファンなのです!」

「バイブルです!」

「惜しむべきは、リコネル様がセクシー小説をお書きにならない事!」

「男女恋愛だけではなく、もっと幅広い恋愛が読んでみたいです!」

「最後の二人はセクシー作家さんですわね」

『なんとも分かりやすい』



 こうも分かりやすいものか。

 もっと隠れているのかと思いましたが、どうやらオープンスケベのようですね。

 ここまでくると清々しいというか……感心してしまいます。



「改めてお祝いの言葉をお贈りいたしますわ。新人作家としてのデビューおめでとうございます。そしてようこそ、我がリコネル商会へ」

「「「「有難うございます!」」」」



 感涙むせる作家さんたちに若干引き気味の私……これが作家と言うエネルギー。

 内に秘めたる思いを文字に起こす、絵に残す方々なのだと思うと、一般市民に溶け込んで生活しているとは、とても思えませんでした。



「親睦会でもありますけれど、ご報告も兼ねてますの。新人作家さん方には、今回当選した作品を本にする特権が与えられているのはご存じですわよね?」

「「「はい!」」」

「そこで、セクシー作家さんには、もう少しエロさをオブラートに包んで欲しいと言う要望もありますの」

「オブラートに……ですか?」

『面白いには面白いんじゃよ、エロこそ至高。しかしじゃ、モロ出しでは色気に欠けると言うのもまた事実……モロ出しでかくのは挿絵くらいでいいと思うじゃ』

「なるほど、オブラートに包んだところを、挿絵で補うと言うわけですね?」

『うむ、喉を鳴らしたくなるようなエロを文字にし、唾を呑み込みたくなるようなエロな絵を絵師が描くことで、尚エロさを引き上げるのじゃ、わかるかの?』

「分かりました」

「至高のエロの為に!」



 クリスタル……本当にセクシー部門担当なんですね。



 思わず遠い目をしそうになりましたが、クリスタルはセクシー作家さんたちと意気投合し、今後の小説で直してほしい所や、こういう表現はどうだろうかと語り合っていらっしゃいます。



「そんな挿絵を描く担当は、きっと私なのでしょうね」

「そうなりますわね」

「だと思ってました……いえ、趣味で長く描いていたので楽しくてご褒美ですが」



 そう口にしたのは今回当選した絵師の一人で、何とも情熱的な絵を描かれる方でした。

 確かにこの方なら、激しいものからソフトなものまで描けそうですね。



「所で質問なんですが、リコネル様はどのようにして、起承転結を書いてらっしゃるんですか?」

「思い付きのまま書くこともありますけど、起承転結ってずっと考えながら書くと、のびのび書けませんから、時折チェックを入れるくらいですわねぇ」

「なるほど、確かに起承転結に縛られていると……」



 と、リコネルはリコネルで他の作家さんとの交流が始まっているようです。

 こうなると――。



「あの……ジュリアス国王陛下」

「はい?」



 一人寂しく過ごすのかなと思っていると、童話作家さんたちが私の許へと集まっていました。

 童話作家に相応しい見た目というべきか、小動物のような可愛さのある女性が多いですね。



「今度、ジュリアス国王陛下とリコネル様をモデルにした絵本を書きたいんです。宜しいでしょうか?」



 この言葉に、今まで話していた作家さんたちは静まり返り、皆が無言で集まり始めました。そして――。



「実に素晴らしい! リコネル様とジュリアス国王陛下をモデルに小説が書けたらどれだけ幸せだろうか!」

「ああ……尊い小説が書けそうだ」

「燃え上がるような濃厚なシーンが書けそうだ」

「最後のは止めてください。私たちを題材にといっても……」

「「「書くことは沢山ですよ!? ネタの宝庫!」」」



 す……すごい圧ですねっ!

 思わず後退りしてしまうほどの熱意のこもった声に、私はリコネルとクリスタルを見つめると、クリスタルはニヤニヤし、リコネルはクスクスと笑っていました。



「悪役令嬢からの王妃へシンデレラストーリー!」

「年の差恋愛小説!」

「夜の生活はどんな感じかなとか!」

「「「考えると夜も寝れない!」」」



 最後の熱意は何とか抑えて貰うとして、此処までの熱意を感じたことは仕事中でも中々ありません。



「……そうですね、皆さんが今回受賞した小説の手直しが終わった際には、セクシーを除いて書いてみてもよろしいですよ、ただし、実際にモデルにするだけであくまでフィクションでお願いしますね」

「「「「やった――!」」」」

「「「何故だ―――!」」」



 片方のグループは両手をあげて喜び、床に崩れ落ちたのは言うまでもなくセクシー作家さんですね、何ともわかりやすい。

 確かにミステリアスではありますが、個性的なんですね。

 リコネルもですが。



「エロはっ エロこそ至高なのに!」

「国王夫妻をエロ本の題材にしないでくださいませ」

「フィクションでも若干引きます」

「くぅ……個人で出すしかないのか!?」

「個人でも出さないでくださいませ」

「個性が強いですね」

『作家とは罪な生き物じゃ』



 親睦会は一部波乱があったものの、恙なく終わり、こうしてリコネル商会に新たな作家が誕生したのでした。

 しかし――。



「モデルになってはくれませんか!? 絶対ダメなんですか!?」

「諦めてください」

「申し訳ありませんが」



 最後まで諦めなかったセクシー作家さんの熱意は、凄いものでした。



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