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第18話 筋が通ってない事は嫌いですの②

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

「この避難施設、壊しましょう」



 思わぬ発言に、一瞬呆然としましたが――。



「え?」

「「「は?」」」

「善意に悪意で返すような避難民、我が領には必要ありませんわ」



 リコネルの本気の声でした。

 笑顔のままにこの避難所を無くすと口にしたリコネルに、レゴラス等3人は恐れおののき「お待ち下さい!」と叫びました。



「此処がなくなれば、我々は何処に行けというのですか!」

「王都にお戻りなさい。そして最初から自分達がやらなかった、纏まりきれなかった事を恥じ、王に嘆願書なり懇願書を提出して、それでもダメだったら戻ってくれば宜しいですわ」

「ですが、既に年寄りも多く避難しているのですよ!?」

「何も、全員が戻れとは言ってませんわ。移動できない妊婦、子供、お年寄りは留まればよろしいのです。けれど、あなた方大人な方々は動けるでしょう? 安心なさって、残った方々を人質に取りたいわけでも何でもありませんわ。まずはあなた方大人が国を動かした後、こちらからちゃんと避難民として扱える人々には、王都が安全になったら護衛をつけてお送りいたしますわ」



 リコネルの言葉は既に決定事項だと言わんばかりで、助けを求める目線が私に注がれました。

 ですがリコネルの判断は間違っているとは言えません。

 確かに、まずは国民が陛下を動かさねばならなかったのです。



「ジュリアス様……まさかジュリアス様も」

「ええ、リコネルが代弁して下さいましたね」

「そんなっ!」

「我々を見捨てるのですか!?」

「あなた方は避難民です。いずれ王都に帰る身なのですから見捨てる、見捨てないも無いでしょう。これ以上の話し合いは無意味のようですので、リコネルの言ったとおり避難所で生活出来る人数を後日報告の後、動ける人数で王都へ戻り働かない王に懇願書や嘆願書を提出した後、それでもダメなら領民として受け入れましょう」



 それだけを言うと私とリコネルは席を立ち、テントを後にしました。

 最後に「化け物夫婦め!」と言う叫び声が聴こえましたが、それを咎める気はありません。

 厳しい言動でしたが、リコネルの言葉は的を得ていました。


 国民が動かずにして国は動かず。

 また、国も国民の為に機能しなくてはならない。

 それが出来ていない王都は、もう長くないと言うことでしょう。

 クリスタルは今どうなってしまっているのか不安ですが、この王都を含め、領土を守る為の母なるクリスタルが気がかりです。


(まさか第二の王都となるようにこちらに来ることなどありませんよね?)


 ――クリスタルがある場所が王都。

 これは世界基準で決まっていること。

 クリスタルが無い場所が王都になる場合は、クリスタルのカケラを許可としなくてはなりません。

 ですが、過去にも王都が機能しなくなった際、母なるクリスタルが移動したという話を聞いたことがあります。



「……」

「どうかなさいましたの?」

「いえ、屋敷に戻ったら確認したいことができましたので、急ぎ戻りましょう」



 そう言うと私達は馬車に乗り込み、急ぎ屋敷まで戻りました。

 急ぎ屋敷に到着すると、部屋と言う部屋を開けて中をチェックしました。

 クリスタルが移動すれば、国民全員に伝わるとは聞いていますが不安だったのです。

 どの部屋にもクリスタルが無い事を確認すると、やっとホッと息を吐くことが出来ました。



「どうかなさいましたの?」

「いえ、少々確認したいことが出来て急いで……ね」

「そうでしたの。ナサリーにお茶の用意を頼みますわね」

「ありがとうございます」



 そう言うと部屋に戻り、私とリコネルは紅茶を飲みながらホッと一息つくことが出来ました。

 その中で思うのは、やはり避難民の事。

 私達夫婦を化け物夫婦と呼んだ事は今になっては少し腹が立ちますが、それ以上にリコネルの毅然とした態度のおかげで、彼らを甘えさせる事はしなかった。



「リコネルには感謝せねばなりませんね」

「見積もりとしては一週間の間に必要な書類を提出させることですわね。まだまだ問題は山積みですわ」

「そうですね……」

「それに厳しい事を言いましたけれど、避難民の方々を批判する訳ではありません事もお解りになって」



 少し悲しそうに微笑むリコネルに、優しく頭を撫でるとホッと息を吐けたようです。



「ザッと見た感じ、まともな教育を受けている人間は殆どいなかったと思いますの」

「そうなのですか?」

「見た目が麗しければ学業は疎かでよい……という風潮が生まれていて、文字の読み書きが出来ない大人もそれなりにいるのです」



 第二妃の起こした弊害がそんなところにまで……それを正せなかった自分にも非を感じつつも、リコネルの言葉を聞きました。


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