第14話 その後のアルジェナ様は……
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――アルジェナside――
そんな王太子が暴走を繰り広げている部屋の近くに、私、アルジェナは女騎士が扉をがっちりと固めた部屋で呆然としていた。
絶対、ばれないと思っていた。
絶対、王妃になれると思っていた。
絶対、絶対……だってチャーリー王子、見た目は見目麗しいけど、中身が子供で物足りなかったんだもの。
だから火遊びした。
チャーリー王子の友人なら口が堅いと思ったし、何かあれば責任取ってくれるって信じていたから。
――でもそれは違った。
妊娠した事を3人に告げた途端「誰の子供? 僕の子供じゃないでしょ?」と笑って逃げて行った。
皆、未来ある男性だった。
次期宰相となる男性。
次期領主となる男性。
次期騎士団団長になる筈の男性。
そんな彼らとの火遊びに夢中になった結果が妊娠だった。
遠くから聞こえるチャーリー様の言葉を聞いていると、私の事なんかどうでもいいみたい。
あんなに私の事を愛しているって言っていたくせに……。
私が他の男と遊んだのが原因なのはわかってるけど、少しは自分の魅力が無かったことにも気がついてほしいものだわ。
「あ~あ……リコネルの所為でぜ――んぶ水の泡。どう責任取ってくれるのかしら」
全部リコネルの所為。
チャーリー王子の私への想いが消えたのも、全部リコネルの所為。
そのリコネルはあんな見た目の気持ち悪いオジサンと結婚して、あんなに幸せそうにして意味わかんない。
私は悪くないのに、私は可哀そうなのに、誰も私を庇ってくれないの。
最早、堕ろす事もできなくなったお腹を恨めしく見つめつつ溜息を吐くと、扉をノックする音と共に一人の騎士が部屋に入ってきた。
「ジュリアス様のご命令により、アルジェナ様、貴女をお屋敷までお送りせよとの事です」
「そう……」
「貴女の妊娠及び今回の騒動については、国王及びジュリアス様から貴女のお父様、タリーズ男爵家に連絡が行きます。心の準備はなさって置いて下さい」
「はいはい、私がぜーんぶ悪いんでしょ? でもぜーんぶ悪いのはリコネル様の所為だから。私は被害者よ」
「何とでも仰って下さい、世間はそうはみませんので」
それだけ言うと、私は怒号響く廊下を歩き、外に出ると自分の家まで馬車で送り届けられた。
夜中に帰ってきた私にお父様もお母様も心配して駆け寄ってきてくれたけれど、内容を聞いて一変、私を叩き、突き飛ばし、お爺様は杖で私を何度も殴った。
そんな哀れな私を誰一人として助けようともせず、私が泣いて謝罪の言葉を口にしても、軽蔑した表情で睨みつけてくるだけで、お父様にいたっては顔を真っ赤にして「この阿婆擦れが!」と叫んでいた。
――なんで? どうして?
――私は悪くないのに。
――寧ろ妊娠して捨てられた私が可哀そうじゃ無いの?
そう思ったのに、父から無理やり立たされるとメイドの方に投げつけられ、謹慎処分を言い渡された。
それからの事は解らない。
お父様たちがバタバタと走り回り、謝罪だ賠償金がと騒ぎを起こしていた。
私に対しては、教会にぶち込むんだと言っていたけれど、それ以前にタリーズ男爵家の御取り潰しが正式に降りた事をまだ知らない。
―――こうした後に私、アルジェナ・タリーズは見事平民へと落とされ、私は王都にある貧しくも汚い教会へと投げ込まれるように引き取られることになるのは、もう少し後の話。




