第12話 ジュリアス様を攻撃するならお解りでして?②
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リコネルの言葉に怪訝な表情の参列者が封筒を開け、中を見るとそこには私が依頼して撮ってきて貰ったアルジェナの不貞証拠写真が沢山入っていました。
会場から木霊す悲鳴、そしてアルジェナを見る厳しい視線。
王は震え、王妃はその場で力なく椅子に落ち、チャーリー王太子は「これは……なんだ?」と事実を受け入れられない様子。
確か王太子は了承を得て不貞行為を許していた筈ですが、どうやら行き過ぎた不貞行為だったようですね。
「ちょ……なんでこれが……皆見ないで!!」
「コレはどう言う事だアルジェナ!!」
「チャーリー様違うの! これは何かの間違いなの!」
「間違いでチャーリー様のお友達であるラフェール様とキスをしたり、モンド様と抱き合ってキスをしたり、ネルファー様と舞踏会で二人きりになれる個室に篭ってドレスを汚して更にキスマークつけて出てきますの?」
「アルジェナ!」
「違うの! 違うのよおおお!」
そう叫ぶアルジェナですが、シッカリ撮られた証拠写真に最早誰もアルジェナの言葉を信用せず、更にチャーリー王太子に至っては、全員が友人だったのだから顔が真っ赤になったり真っ青になったりと忙しそうですね。
「こういう事をするのは私だけだと……嘘をついていたのか!」
「この写真は偽者です! 違うんですチャーリー様! 私、わたしっ!」
「それで、お腹の子は誰の子ですの?」
「!?」
リコネルの最後の言葉に、アルジェナは力なく床に座り込んでしまわれました。
複数の男性との濃厚なお付き合い、そして妊娠……誰の子かも分からない状況になっていたのは調べが付いていました。
「チャーリー様、貴方がわたくしを断罪してまで大事にしたいと、王妃にするといった女性です。最後まで大事に為さって下さいませ。わたくしは今幸せですので」
「待てリコネル! この結婚は無しだ! お前は私と結婚するんだ! アルジェナ! お前には呆れ果てたぞ!」
「呆れ果てたのは私達です」
神父様の言葉に全員が神父様を見つめました。
こうなる事は既に結婚式が始まる前に神父様には伝えてありました。故に――私達の味方です。
「次期国王であるチャーリー様は、教会の当たり前の掟を知らない様子……」
「何だと?」
「この神への契約書に名を書いた以上、互いの愛が冷めない限り離婚する事は出来ません。そして重婚もまた、国王は別として認められておりませんし」
「だからなんだ! 私が国王になれば良いだけの話だろう!?」
「既にご結婚されているリコネル様を妃にする事は不可能だと言っているのです。その上、教会の当たり前の知識すらない貴方を次期国王とは呼べません。そしてこの事は教会本部にもご報告させて頂きます。アルジェナ様の事、チャーリー王太子が先ほど口に為さった、結婚式を挙げた直後のジュリアス様とリコネル様への暴言をね」
「なっ!!」
「リコネル様は愛を持ってジュリアス様の妻となりました。誓約書はそれを示しているのです。これ以上結婚式を穢すというのであれば、アルジェナ様と一緒にご退場を」
その言葉に教会に配備されている騎士がアルジェナとチャーリー王太子に向かい、暴れる2人を引き連れて教会を出て行きました。
そして――。
「国王陛下、及び王妃様に申し上げます」
「……なんだ、これ以上に何かあるのか……?」
「ええ、この結婚式での一連の内容及び証拠写真は、教会本部に送らせて頂きます。王にも責任があるでしょう」
「………」
「王太子様の事、本当に残念だと思います」
そう告げると神父様は私達に向き合い、鐘が鳴ると同時に外に出て結婚式は終了となりました。
リコネルの留飲を下げるには充分だったでしょうか?
もっと証拠を集められる時間があれば、もっと集まったことでしょうが……。
隣で幸せそうに微笑むリコネルを見ると、私はそんな悩みさえも吹き飛び、取り合えずリコネルの留飲が下がったのだと言うことが解ってホッとしました。
「スッキリしましたか?」
「ええ、スッキリしましたわ」
「それは良かったです」
「ええ、後は初夜を待つのみですわ」
その言葉に、禿げた頭から湯気が立ち上がった結婚式の事。
そしてその夜――寝室では戦いが勃発しておりました……。
「ジュリアス様逃げないで下さいませ!」
「初夜とは解っていても恥ずかしいのです!」
寝室で追いかけっこをする羽目に成るとは、思いもよりませんでしたし、何より妻となったリコネルに押し倒されて、初めてを散らす事になろうとは……誰が予想できたでしょうね。
嗚呼、私が不甲斐ないばかりに……。
「素敵でしたわ……ジュリアス様♡」
「ああああああ……」
羞恥心で溶けてしまいそうな……そんな初夜でした。