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第一話「帰り道」

それは中学校入学式の帰り道だった。

そこに一人の少年と少女がいた。

どちらも中学一年生、初めて会う仲だ。

その二人は一緒に帰っていた。

それには語弊がある、がそう言っても過言ではない。

奇しくも二人は同じことを考えていた。

(どこまで帰り道一緒なんだろう……)

そう、二人は「一緒に帰ろう」とどっちかが誘った訳ではない。

単純に帰り道が一緒だっただけである。

ちょっと気まずい空気が流れる。

(初めて会う女子に話せる訳ないもんなぁ……)

と、少年、石上翔太は思った。

彼は別に女子と話せないわけではない。

が、流石に初対面の女子には話せない。

それは相手も同じだろうと彼は思った。

大半の女子はそうだろう。

だが、目の前の少女、井上まひろは一味違った。

彼女は理由さえあれば、男子にも関わりなく話せる。

そう、気まずいという理由さえあれば……!

「ねぇ。あなたってもしかて三組の子?」

だが翔太には女子に急に話されて平常を保っていられるメンタルはない。

だからこそ、彼はビクン!と飛び上がってしまった。

「ぷっ……」

笑われてしまった。

頬を赤く染めながら、出来るだけ平常心を保ちながら、先ほどの問いに答えた。

そう、全体力をこれに集中させ、心に言い聞かせながら……。

落ち着け落ち着け。

そして笑顔を張り付けながら……

「そ、そそそ、そうだよ?」

高々と言い放った!

疑問形になっている気もするが、なにか?

そんな焦っている(翔太からするとそうでもない)様子を見て、まひろは……

「ぷっあははは!」

ふき出した。

それも大声で。

翔太は、何故笑われた⁉完璧だったはずなのに!と思っていた。

「あ、あはは……あなた慌てすぎ。そんなに慌てることあった?」

そんなことを聞かれ、翔太は恥ずかしそうに目をそらした。

「慌ててないって」

負けず嫌いである。

「無理があるって」

もっともである。

「ま、クラスメイトとして、これからよろしくね」

まひろは手を差し伸べてきた。

翔太はその手を恥ずかしそうに取った。

ここに小さな恋が生まれた。


これで終わればただただの青春だったのだが、この後翔太とまひろの家が同じマンションで、更に隣の部屋ときたものだから、二人とも目を見開いて驚いた。

なかなかの奇跡である。


第一話 終

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