表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

浦川 日歌里ノウラジュウニシ【side:H】

転がらぬいし

作者: 日浦海里

両手のひらをテラスに押しあて

腕立てのように力いっぱい

身体をぐっと押し引き上げる


マントルをして

片足振り上げ

ヒールフックから

背中ふくらはぎ

太ももに臀部

力いっぱい壁に当て

テラスに向かって身体を持ち上げる


あと少し

あと少し

下からガンバと声が聞こえる


身体がテラスに乗りそうになったとき

気が緩んだのか

焦ってしまったか

手のひらに滲む汗で滑って

バランスを崩し

テラスから落ちる


両手をぐっと胸の前に入れて

岩に激突するのは避けても

リトライすることは難しい


かけていたはずの足場は見つからず

手の力だけで耐えるのも限界


無理せずクライムダウンしろ

なんて声も聞こえてくるけど

オンサイトが目の前にあって

諦めるなんて出来やしないし

そもそもフットホールドがない


壁に足先を添わせるように

かけていたはずのホールドを探す

右足左足

最後のムーブ


記憶を頼りに見つけたホールド

張り詰めていた片手を離して

もたれるように岩に張り付く


離したその手を捻るように振る

乳酸を流し岩を持つ

もう片方の手もレストする

まだいけるはずと言い聞かす


身体半分持ち上げるだけ

たったそれだけが遥かに遠い

見上げた空の蒼を掴むほど

遠い場所にはないはずなのに


落ちろと落ちろと声が聞こえる

誰かじゃなくて内からの叫び

堕ちろ堕ちろと声が聞こえる

もう十分だと囁いてくる


長掌筋が腫れ上がる

握る掌の力が無くなる

マントルするだけの力も無くて

ただ無様にぶら下がる


足を上げて「かかり」を探す

引っ掛かりに重心を移す

ただ岩にもたれるようにして

ずるりずるりと持ち上げる


テラスの奥に腕がかかる

あと少し もう一度

立ち上がれれば

空に手が届く

読んで楽しい人がいるのだろうか?


一応用語解説

テラス:岩壁において棚のようになった場所


マントル:両手で身体を岩に引き付け、その後手のひらを返して手で岩を押すようにして身体を持ち上げる


ヒールフック:かかとを岩の出っ張りなどに引っ掛ける動き


ガンバ:頑張れって声掛け。ボルダリング、クライミングでは見知らぬ人でもこういう声を掛け合う


クライムダウン:飛び降りるのではなく、登ったときと逆の要領で降りること。外の岩場だと足場が悪いこともあるので飛び降りるのは危ない。ギリギリまで頑張って落ちるのも危ない。つまり、この作品中のクライマーは危ない


オンサイト:その課題を初見で完登(登り切る)すること。誰か他の人の登っている姿を見てもいけない。他人のクライミングを見た後に登り切ることはフラッシュという


(フット)ホールド:指(先)、足(先)をかけられる場所


ムーブ:課題を登るための身体の動き、動かし方


レスト:筋肉を休めること。登りながらなので、全身が休むことはないが、筋肉に力を入れたままの状態から解放されるだけでも筋肉は休まる

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  楽しい楽しくない、はさておき。  見知らぬ世界を知るということ。  それも読むことのひとつの楽しみだと思います。  ただ、用語説明があればこそです。  解説ありがとうございます。
[一言]  スポーツとしての確立に用語まで、山を相手に自然を満喫するのは楽しいのも知ってるけど、昔流行った時の悲惨な事故から教訓を得ているとは到底思えない現状の安全管理がもどかしぃ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ