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第10話 ぴより、恋の空騒ぎ?!

 本当の仲間、バーンズとナタリーと合流できたあたし達。


「二人とも無事でよかったぜ。

 しかし、このままでは危険だな。

 強力な元傭兵がエルドーラ上層から降りて来たって話もある」


 バーンズの提案で、あたし達は追っ手をまぬがれるため、一旦エルドーラを出る事になった。

 物資の運搬の事情もあって、他の都市とエルドーラは列車で繋がっている。

 列車で脱出するのが一番速い。

 目指すのはウィンドとナタリーの故郷、パンライだ。


「ウィンドもエルドーラ脱出まで付き合ってもらうぜ」


「構わない。報酬さえもらえればな」


 ウィンドは相変わらずクールだ。


「えー、街まで付いて来てよ、ウィンド」


 ナタリーがウィンドの腕をつかんで甘えている。


「随分戻ってないでしょ?

 一緒に故郷に帰ろうよー」


「嫌だ」


 断るが、振りほどいたりはしない。

 ウィンドは幼馴染みのナタリーを、邪険にはできないのだった。


(かわいいとこあるじゃない)


 その様子を見たエリアルの心の声が聞こえるが、あたしは穏やかではいられない。


(何のんきな事言ってんのー!

 さっきも手を強く握られたんだよー。

 ナタリーからの宣戦布告だよー)


(へえ)


 あれ?

 リアクション薄い。


(このままじゃウィンドはナタリーに取られちゃうよ)


 何しろエリアルが殺害された後、実際に二人は結ばれる。

 それはゲームで体験済みだ。

 あくまで正ヒロインはナタリー。

 エリアルの方が不利なのだ。

 うかうかしてられない。


(そんな事より、死ぬ事の方が問題だし)


(同じくらい大事な問題だよー!)


 もちろん中盤の悲劇を回避する事が、殺害されない事が一番大事。

 しかし、エリアルの名前をぴよりにしてプレーしたあたしにとっては、エリアルとウィンドをくっつける事も重要だ。

 そこまで成し遂げてこそ、ハッピーエンドだ。


(エリアルもウィンドの事、好きなんでしょ?)


(ん?)


 だけど、エリアルはきょとんとしていた。


(そんな事言ったっけ?)


(ウィンドの事、好きでしょ?)


 ホープ社の追手から逃げる、エリアルとウィンドの偶然の出会い。

 ウィンドは初めて見る始まりの民の、エメラルドの瞳に釘付けになってしまう。

 エリアルもウィンドにみとれていたはず。


 ウィンドは「始まりの民の瞳を見るのは初めてなんだ」と恥じらいながら言う。

 そして、エリアルは「あなたの瞳も美しいですわ」と答える。


 接近する二人の顔がアップになる、超エモいオープニングだ。

 あの見つめ合いは只事ではないはず!


(まあ顔はオッケーね。

 別にアリだけど)


 別にアリ?! テンション低っ!


(でもウィンドは、幼なじみのナタリーとお似合いなんじゃない?)


 予想外の反応だった。

 エリアルとナタリーはバチバチの三角関係だと思ってた。

 後々、ナタリーがウィンドをにらみつけながら、「エリアルは美人だから見とれちゃうよね」とチクリと刺すシーンがあったはず。

 でもよく考えると、エリアルが明確にウィンドに対して、恋愛感情を抱いているセリフはない。

 二人のエモい感じのシーンはあったけど、愛の告白はなくって、信頼の描写とも受け取れる感じ。


(彼には守ってもらって、感謝してるけど、それぐらいかな)


 もしも、エリアルに恋愛感情がなかったとすると、ウィンド×エリアルルートにする大目標が、そもそも意味のないものになってしまう。


(わたしはこの星の危機を救うまでは、あんまり恋愛の事は考えられないかな)


 うう……。

 

 ウィンド×エリアルルートなんて、わたしの妄想に過ぎなかったのか。


(そんな事より、この後はゲームではどうなるの?)


(予定通り汽車でエルドーラを脱出するよ)


 気を取り直して、目の前の問題に取り組もう。

 このタイミングでパンライへ向かうのはゲームの物語通りだ。


(無事に出られるって事?)


 あたしは大きく首を振った。


(ううん、列車は襲撃されるよ)


(ちょっ! なんでまたあんたはそんな大事な事言わないの?

 問題の優先順位がおかしくない?)


(これは重要なイベントなんだ。

 それにエルドーラに残っても、もっとマズい状況で襲撃されてたと思う)


(それはそうかも知れないけど……)


(パンライに辿り着く事はできるはずだから、ここはあたしを信じて)


 ワンチャン、悲劇の運命を回避するには、とにかくパンライに辿り着かないと。


 汽車はエルドーラの円形の囲みの外にでた。

 緑の平原が広がっている。

 振り返るとエルドーラ上空は霞みがかっていた。


「やっぱり空気悪かったんだなあ」


 公害という概念が認知されてないエルドーラは、対策もされてなければ、ガイドラインも何もない。

 街の外に出る事で改めてそれを再確認した。


「ああいう場所で人は生きるべきじゃあない」


 バーンズは腕を組んで、眉間に皺を寄せてつぶやいた。

 彼の喘息を患った娘は、今はエルドーラから避難している。

 あたしもあの場所には、戻りたいとは思わない。


「あたしも空気のいい街を作りたい。

 エルドーラをきれいにしたい。

 あたし達のパンライのように。」


パンライ出身のナタリーも、空気の悪さには敏感だ。

 彼女は自らすすんで、バーンズへの協力を申し出た。


「あんた達の護衛はここまでだ。

パンライみたいな寂れた街ではエルドーラのようには稼げないからな」


 しかし、ウィンドの考えは違う。


(ウィンド、もう別れるって言ってるけど)


(ああ、それは大丈夫)


 しかし、これはゲームと同じ流れ。

 わたしはこの先の展開を知っている。


(ウィンドはこの後、あたし達と一緒に行動する事になるから)

 お読みいただき、ありがとうございました!

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