第1話 ゲームクリアからのゲームオーバー?!
世界を滅ぼそうとする強大な敵。
最後の力を振り絞り、立ち向かう若者達!
大逆転のその瞬間、おどろおどろしいBGMが、勇ましいメインテーマに変わる!
その勇ましい曲のまま、画面は切り替わり戦闘シーンに。
美麗CGで描かれるラストバトルは、きっとゲーム史に残る名シーンとして語られるに違いない。
大ヒットロールプレイングゲーム、その名前は「ファンタジックコスモス」。
大逆転の決め手は、ゲーム中盤でラスボスによって殺害された、少女エリアルにあった。
エリアルが、魂になってもなお、祈りを続けた事が起こした奇跡だった。
少女の祈りが、ラスボスを弱体化すると同時に、主人公たちに力を与えた。
エリアルは古の時から星を守ってきた、超常の力を持つ種族、始まりの民の神子。
ゲーム中盤、エリアルは、星の天候を正常にする祈りの儀式を行っていた。
しかし、彼女はその地に降り立った、ラスボスの剣に背後から刺され、絶命してしまう。
唐突に殺害されてしまうヒロイン。
それはあまりにもショッキングなイベントだった。
ゲームクリア後もしばらく、エリアルの死を引きずったというプレイヤーは多い。
ちなみにあたしもその一人。
いや、あたしにはあたしだけの、腑に落ちない理由があった。
「俺達はぴよりの分まで戦い続ける!」
大逆転の時の、イケメン主人公、ウィンドのセリフだが、エリアルの名前が出て来ない。
なぜなら、あたしはエリアルの名前を、自分のニックネームに変えていたのだ。
しかも、あたしはエリアルの名前だけを変更して、プレーしていた。
イケメン主人公との疑似恋愛を楽しみに、ゲームを進めていたのだ。
それなのにエリアル、いや、ぴよりは中盤で死んでしまった。
エリアルの死後、ヒロインとして別のキャラがクローズアップされていく。
エリアルを守れなかったショックで落ち込む主人公。
彼を元気付けるのは、幼なじみの格闘少女、ナタリー。
二人は幼い時の約束を思いだし、惹かれ合っていく。
そのラブストーリーに感動するプレーヤーも多い。
しかし、エリアルに自分の名前を付けたあたしの場合は、そうはいかない。
「ワンチャン、何か方法があるはず!」
エリアルが生存する、真のエンディングがあるのではないか。
ネットで情報を漁って、ファンタジックコスモスの動画を見まくって、エリアルの死亡回避の方法を探した。
しかし、生き残る方法も、生き返る方法も見つからなかった。
深夜まで情報集めに励み、結局見つけられなかった。
ソフトを改造してエリアルを生存させる、なんて方法ならあったが、それでは意味がない。
エリアルが物語に登場しないのでは意味がない。
ウィンドがナタリーといい感じになって行くストーリーの中に、無言のぴよりがいても、かえってキツイ。
「ワンチャンなんてなかった……」
結局、いくら調べても、エリアル生存の方法は見つからなかった。
次の日、寝不足とショックから来る憔悴で、あたしはうとうとしながら登校していた。
おまけに寝坊して、焦っていた。
ついうっかりと赤信号の道路に飛び出し、車にはねられてしまった。
車が視界に入り、まずい、と思った時には宙に浮いていた。
疲れていたせいか、あたしはもうろうとしたままただ浮遊感に身を任せ、そして落下した。
即死だったのだろう。
すぐに視界は暗転した。
これじゃあゲームをクリアしたはずなのに、ゲームオーバーだよ。
ゲームキャラの死がショックで、自分も死ぬなんて、全く笑えない話だよね。
いや、マジで。
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