夢
本題な展開です
2話です
「えー、別れちゃったのー?」
のんびり口調ながらも驚いて言うのは俺のゲーム仲間、岩男美喜だ。
「ああ、ナオと大げんかしちゃってなあ……」
「へー、そうなんだー」
「で、でもあいつだって悪いんだぞ!?」
「ふ~ん、どんなことでケンカしたのー?」
「それはだな…」
そして俺は彼女に今日の朝に起きたあらましを言った。すると美喜は俺に同情して怒る。
「なによそれー、そりゃあトモキもどうかな~と思うところもちょっとはあるけど、牧野さんも牧野さんねー! 機器系は繊細なんだから、あまりにも無神経過ぎるわー!」
彼女の言い振りに俺は激しく同意した。ついでに俺は美喜から『ともおき』ではなく『トモキ』と呼ばれている。
「なんだかんだ言って仲良さそうだったのになっ」
こう言いながら途中から話に入ってきたのは俺と美喜のゲーム仲間である真島だ。いたくニヤニヤしている。
「へっ、鬱陶しいのがいなくなってせいせいだよ!」
「ほお~。そんなこと言って良いのかな~?」
「な、なんだよ……?」
「彼女、結構男子から狙われてるんだぞ?」
「……!?」
「牧野さんって結構融通がきかないところはあるけど、その生真面目さが却って純潔で良いって男子が一定数いるぞ?」
「ふ、ふー……ん。そうか……。しかしそんなの別に興味ないな?」
「なら、新たな彼氏も時間の問題かな?」
「あいつは……そんなすぐに彼氏とか作らないだろよ……」
「本当にそうか?」
「…………」
そう友人に言われた俺はぶつぶつ独り言を言いながら、家に帰る。そして部屋に戻り、ひたすらゲームをしていたが、なんかいつもよりやる気が起きない。
うーん、どうしたんだ俺……? 今までそんなことなかったのに……。
だがやる気が出ないのなら仕方が無い。真っ当な生活をしてからそのまま眠りに落ちた。
その夜からだった。不吉な夢を観るようになったのは……。この日、犬に噛まれる夢を観た。そうしたらその日の内に、
「痛たたたた!!」
「こ、こらケンちゃん止めなさい!」
なんとお尻を噛まれたのだ。幸い狂犬病の接種はしていたみたいなので良かったが……。そして次の夜に観た夢は俺がとても大切なものを壊してしまうことだった。
「まさか……。いや、ないない! 自然に壊れるならまだしも、この俺が命より大切な機器を壊すなんて……」
バキッ!!
「……へ?」
嫌な音がした。恐る恐る足元を見ると、細かなプラスチックの破片が散らばっていた。
「…んだ焦ったー! てっきりゲーム機かと……ん、これ……」
この前ナオから貰ったゲーム機につけておいたストラップだった。
「…………」
なんだなんだ何がどうなっている!?
なにやら次から次へと夢で起きたことに近いことが現実でも起きるようになったんだが……! 一体どうなんってるんだ……!?
そして今回は……。
『ゲーセンにナオがいる』
俺はいつものゲーセンに行って、キョロキョロときゃつが来ているかを捜した。しかしどこにもあいつの姿はなかった。
「……なにしてるの?」
「え?」
今日はいつメン(美喜と真島)でゲーセンに来た。
「あっ、いや~。今日こそいいぬいぐるみが入ってないかな~と思って」
「そんな趣味あったっけ?」
まあ、正夢なんてのはその時の偶然の産物だ。外れることなんて山ほどある。俺は気を取り直して、彼らといつものようにゲームにいそしんだ。そしてしばらくしていると、奥の方からガヤガヤと声が聞こえる。そしたらその中から微かに聞こえる女子の凛とした声が。
「そういうこ……は相手の気持ちを汲ん……らしなさい……!」
………まさか。
俺は急いでそこへ向かった。
「あ、トモキどこ行くのー?」
ハアハアハアッ……。
「ねーちゃん、良いじゃーん。俺達と遊ぼーぜー」
「ちょっ……離して下さ……」
「ナオ!」
「………え、トモ!?」
「なんだてめえー!?」
黒の服がやたら似合うやんちゃそうなヤンキーが4人いた。……おいおい、男4人で、女1人を無理矢理誘うのはいかがなものか?
俺はナオにウインクして意思疎通を謀る。
お・れ・に・あ・わ・せ・ろ
「……」
「おい、こいつは俺の彼女だ。さあ、手を離してもらおうか」
「あー? おい、それはほんとうかぁ?」
「いいえ。彼は私の彼氏じゃないわ」
ナオーー!!??
「おい、こいつはお前の彼女じゃねーって言ってるぞっ!?」
「……」
「何か言ったらどうなんだ!? あっ!?」
「……」
「おい、聞いてる……」
「ナオっ、なんでお前はいっつもいつもそんなに融通がきかないんだ!!?」
「!?」
「何よ、これはいたって事実のことでしょ!? 嘘は泥棒の始まりよ!」
「嘘も方便だろ?! 助けに来た人間を無下にしてどうするんだ!?」
「た……頼んでないわ……」
「かーー、なんだその可愛げのない返事は……!? これだから優等生(偏見)は頭が固くて困る!」
「な、何よその言い方は!? わ、私だってトモのこと心配して来たのに……」
「はーっ、はー!? それこそこっちは頼んでないんですけどー!?」
「ちょっと何よその言い方はー!?」
俺達はいつものようにケンカをして、気づけば周りにいたヤンキー達はいなくなっていた。またしてナオとケンカ別れした後、俺はストレス発散しながら格ゲーをした。ゲーセンを終えて真島と分かれた後、美喜と途中まで帰る。
「あー、すっきりしたー」
「……」
「美喜、なにむくれてんだよ?」
「結局トモキは彼女のことを気にしてるんだよね~」
「う………それは……」
美喜はため息を吐きながら言う。
「早く謝って仲直りしたらー?」
「……けっ、誰がするか!」
「なら私と付き合う?」
「………」
「ふっ、冗談よ冗談! なーに真に受けてんのよ~?」
「……」
「とにかく早く手をうたないと、本当に誰かのものになるわよー?」
「……」
そして床に就いたその夜にいままでのものとはかなり違った夢を観た。
『トモ……助けて……。トモ……』
俺はばっと目が覚めて、全身にかなりの冷や汗をかいていた。
「な、なんだ……今の夢は…………!!?」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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