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第74話 本気にさせました

「…それは危険では?」


「そうです。ジュン君が男だとバレる危険性も増しますし、ユウさんは自衛の手段がないでしょう?」


 隣室で待機中だったクライネさんとハエッタさんを交えて、改めてゼニータ会長との会話内容を説明。


 ユーバー商会に潜入する事を伝えた。


「そこまでする理由はなんだい?確かにユーバー商会は良くない噂の多い商会だけれど、あくまで噂。噂だけを理由に潜入なんて―――」


「私が調べた限りじゃ、ユーバー商会は黒だよ」


「…なんだって?」


 ユウがユーバー商会を調べた?その結果黒だと?一体ユーバー商会の何を調べたのか。


「ユーバー商会に雇われた孤児院出身の子供の数。此処はゼロだけど、他の孤児院からは併せて五人。王都以外の孤児院からも雇っているらしいから、もっと雇っているはず。なのにユーバー商会の新設店舗はゼロ。逆に潰れた店舗は三。この事実だけでもかなり怪しいと思わない?」


「……確かに。それは怪しいね」


 そもそも新しい商売をやるなら、今雇っている従業員を教育すればいい。いくら優秀だからって、子供を…孤児院の子供に執着する必要は無い。


 更に、新たに三店舗も潰れたなら尚更。子供を雇う余裕なんて無い筈だ。


「私とジュンお兄ちゃんの事は調べれば特許の収入を一部得てる事を知れるだろうから、本気でスカウトしたいだけかもしれないけど」


「…それはつまり、孤児院の仲間の誰かが情報を漏らした、そういうのかい?」


「その可能性はゼロじゃないけど、多分商業ギルドの職員じゃないかな。大商会の会長を長年やってるゼニータ…さんなら懇意にしてる職員の一人や二人、居る筈だもの」


「……なるほど。商業ギルドの職員なら商売に関するいいネタをいち早く仕入れる事が出来るし、そういったネタは会員には公開してる。多少関係の無い事を漏らしたとしても咎められる事もない、か」


 個人情報の保護なんて概念育ってないもんな、この世界。

うちの孤児院は結束が固いし、その辺りの事も話してる。違うと信じたい。


「ユウさんのお話はわかりました。でも、それだけで黒だと断じたのですか?」


 ユウの話はどれも確証が無い。黒に近いグレーに過ぎ…あ、たから潜入捜査?


「他にも雇われた子供の姿を一切見てないって話もあるけれど、証拠は無い。何か違法な事をしてるって確信もあるけど、証拠は無い。だから潜入するの」


 やはり、そういう事らしい。少々短絡的に思えるが…それが一番手っ取り早いか?


「…何故、ユウがあんな事を言ったのかはわかったわ。でも、だからって貴女が潜入する必要は…」


「私以外に適任は居ないでしょ?」


「だとしても、よ。貴女に何かあったらジェーンに申し訳が立たないわ。ジュンにだって危険な真似はしてほしくないし…」


 未だに冒険者稼業も満足にさせてくれませんしね。そろそろ自由に冒険者したいお年頃。それに潜入調査……待てよ?


 グレーな組織に潜入調査ともなればバトルな展開もあるかもしれない。


 その場合は人間相手、それも女性だろうから不殺は貫くとして、ありきたりな展開としと凄腕の傭兵や用心棒、番犬代わりに魔獣を飼ってるとかもあるかもしれない。


 それってアレじゃない?俺Tueeeeeのチャンスなんじゃない?


『あ、ええなぁ、それ。それならアレや、再び謎のヒーロー、ブラックの出番なんとちゃう?』


 おいいい!お前、まーた俺の先越そうってか!?


 今回は許さんからな!やるなら俺!断固として俺!


『ちぇ…ファンがブラックの新たな活躍を待っとるのに』


 知るか!てか、ブラックで活躍する必要があったとしても、中身は俺だかんな!


「大丈夫よ、院長先生。お兄ちゃんが一緒なら何も危険は無いから。お兄ちゃんって、実は世界一強いんだから」


「…貴女がジュンを好きなのは知ってるけれど…世界一強いなんて根拠の無い事言われても安心出来ないわ」


 いや、嘘じゃないと思うよ、うん。


 女神エロース様に与えられた才能と特別製ボディに驕らず鍛えて来たしデウス・エクス・マキナだってある―――いや、何故ユウは俺が強いと知っている?


 二人で話した時にそんな話はしてないし、俺の力を見せた事もない。


 ユウが知ってる筈がないんだが…まだ何かユウは隠してるな?


 頭が良くて、完全記憶能力を持ってるだけじゃ説明出来ないぞ。


『せやな…可能性があるとしたら何らかのギフトやな。まさか実はマスターみたいに神様の特別製ボディをもらっとる…なんて事は無いやろし』


 そうか…本当は神様に転生させてもらったのなら、そういう事もありうるか。


 次にユウと話す機会があったら、聞かねばなるまい。


「本当なんだけどな…兎に角、私とお兄ちゃんは来月の頭からユーバー商会に潜入する。後、二週間ほど時間があるから、その間に…」


「その間にユーバー商会の尻尾を掴めば、潜入調査の必要は無くなる、か。という事なのだけど、どうなのかな白薔薇騎士団副団長殿?」


「…わかりました。やって見せましょう」


「私達の本気を見せてあげますよ!」


 クリスチーナの挑発的な視線に応えるように声をあげるクライネさんとハエッタさん。


 そんな本気出さなくていいんですよ?いや、ほんと。


「…これで解決してくれたら楽なんだけどな」


 ユウの呟きが聞こえたのは俺だけのようだが…白薔薇騎士団に本気を出させるように仕向けたんですね?


 ユウってば…ちょっと怖いよ?

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