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第59話 こっちに来ました

「ふむ…なるほど。話はわかったよ」


「ごめん…」


 魔法道具店『エリザベス』からエチゴヤ商会に向かい。


 エリザベスさんの指名依頼を深く考えずに受けてしまった結果、指名依頼を受ける事が出来なくなってしまった事をクリスチーナに説明。


 まさか片道一週間かかる必要がある山に行かなくてはならないとは…しかも馬車で一週間て話だから誤魔化しが効きにくい。


「仕方ないね。ジュンはその依頼をこなす事に集中したまえ。こちらの事は心配しなくていい。アム達もジュンに付いて行って構わない」


「あたいら抜きでどうするつもりだよ?」


「他の冒険者を雇うさ。なに、案外杞憂に終わるかもしれないし、君達が帰って来るまで何か起こるとも限らない。心配要らないさ」


「「「…」」」


 と、クリスチーナは言うが…アム達が心配するのは当然で。


 俺としてもアム達にはクリスチーナの護衛に付いていてもらいたいのだが。


「心配するな。クリスチーナはローエングリーン家で保護する。貴族屋敷に襲撃をかける程愚かではないだろう」


「折角だけれどね、カタリナ。私は君に護ってもらうつもりはないよ」


「な、何を言う!意地を張ってる場合か!」


「意地を張ってるわけじゃ…いや、否定はしないでおくよ。でも、貴族に借りを作るのはごめんだね。気持ちだけもらっておくよ、カタリナ」


「……借りだなんて、気にしなくていいのに…」


 下を向いて、少し拗ねたように小声でつぶやくカタリナ。


 俺としてもローエングリーン家に護ってもらえるなら安心出来るんだが。


 白薔薇騎士団にも頼まないだろうしなぁ。


 うーむ…やはりアム達にはクリスチーナの護衛に残ってもらおう。


「今回は俺よりクリスチーナを優先しよう。俺は一人で大丈夫だから―――」


「ダメだよ」「ダメだな」「ダメー」「ダメ」


 …ノータイムで否定してきよった。いや、それじゃ話が進まないじゃん?


「いや、聞きなさいって。目的の山までは安全に行けるって話だし、俺は一人で大丈夫だからアム達は此処に残ってクリスチーナの護衛をだな」


「だからダメだよ、ジュン。ダイアナ商会のエンビー会長は君を狙うかもれないんだよ?エンビー会長がジュンに興味を示してたの、忘れたのかい?」


 ………そういやそうだったなぁ。いや、でも…尻に火が点いてる状況で俺を狙うだろうか?


 狙って来ても返り討ちに出来るし…言っても信じないんだろうけどさ。


「まぁ、どうせ白薔薇騎士団が付いて行くんだろうけどよぉ。往復で二週間の旅路。あたいらが居なかったらどうなるか…わかったもんじゃねぇだろ」


「絶対に襲われるよ?」


「ある意味でダイアナ商会より危険」


 この場には白薔薇騎士団員もいるのだが。アム達の指摘にそっと目を逸らしていた。


 未だに恋愛脳集団だから、そんな大胆な事出来ないと…出来ない…出来そうだなぁ。


 最近の白薔薇騎士団員、段々と大胆というか積極的というか。


 なんか焦ってるのかスキンシップ多めだし…


「……白薔薇騎士団の事は信用するしかないでしょ。抜け駆け禁止っていう鉄の掟があるらしいし。万が一襲われても返り討ちに出来るからさ。アム達はクリスチーナの護衛ね。決定!」


「ジュン…でも…」


「…なら、私がジュンに付いて行って白薔薇騎士団を監視しよう。私の事は白薔薇騎士団が監視するから問題無いだろう?」


 今度はカタリナが付いて来ると言い出した。本当は誰にも付いて来て欲しくないんだがなぁ。


 手段を選ばなければ今すぐ行って帰って来る事も可能だしさぁ。でも人目があれば難しくなるわけで。


『そやなぁ。デウス・エクス・マキナを使えば可能やな。でも、そうすると色々誤魔化しが効かんようになって今後に支障が出るわけやけど』


 ですよねぇ。俺を男だと知ってる白薔薇騎士団やクリスチーナ達にバレるだけなら大丈夫かもしれないが、その他の人間にバレたら確実に面倒な事になるしなぁ。


『まぁ妥協点としてカタリナが付いて来るんは悪い選択肢やないんちゃうか。馬車も借りれるやろし』


 ああ、そっか。一人で行く場合は馬車も使えないから、もっと時間が掛かる…と見せる必要があるのか。


「………………はぁぁぁ。仕方ない。それで行こう」


「何だ、その長い間と溜息は。素直にありがとうと言ったらどうだ」


「クリスチーナも素直じゃねぇからなぁ」


「本当はカタリナと仲良くしたいくせにね」


「似た者同士」


「聞こえてるぞ、君達…私はとっても素直だと思うが?」


 ナルシストと露出狂が同居してるクリスチーナは確かにある意味で素直かもね…カタリナはカタリナでわかりやすいが。


 しかし、これで何とかなる…か? アム達が付いていれば大概の相手には勝てるだろうし。


 少なくとも俺が駆け付ける前にやられてしまうような事態にはなるまい。


『偵察機は張り付けたままにしとくんやろ?ならすぐにわいが報せたるし、クリスチーナらのサポートも可能や。心配せんでええで』


 なら大丈夫だろ。今日は二週間の旅路の準備に充てて、明日、出発するとしよう。


「それならうちの店で用意しよう。御代はいらないよ」


「屋敷に帰れば全てあると思うぞ。こちらで用意しておこう」


「「………」」


「おい、んな事で喧嘩すんなよ」


「どっちが用意してもいいじゃない…」


「やっぱり似た者同士」


 そんなこんなでその日は準備追われて終了。


 翌朝早くにクリスチーナ、アム達に見送られながら王都を出た。


 ローエングリーン家からはカタリナとゼフラさんとファリダさんがセットで来るのはいつも通り。


 白薔薇騎士団からは…


「……団長が二週間も離れて問題ないのか?レーンベルク団長」


「何も問題ないわね。昨日の内に必要な仕事は終わらせたし、前倒しでやれるだけやった。二週間不在になるくらい何も問題無いわ。副団長のクライネは残るのだし」


「すっげぇ悔しそうにしてたっスっけどね~副団長。帰ったら何かフォローした方がいいっスよ」


「う…そ、そうかもね」


 ソフィアさんとナヴィさんの二人が来ていた。


 なんでも今日から最低二週間の間護衛に付くという事で、誰が行くのかを決めるのに熾烈な争いがあったらしい。


 で、その争いに勝ったのがこの二人なわけだが…所々に傷を手当した痕が。


 一体どんな方法で決めたんだか…


「それはもう骨肉の争いってやつっスよ。だからジュン君、膝枕を要求するっス」


「ちょ、ずるいわよナヴィ!」


「カモンド男爵、馬車からたたき出されたくなければ、今すぐ私と代わるんだ」


 返事をする前にナヴィさんに膝を占拠されてしまった。


 この流れはアレだな…全員に膝枕する事になるんだろな…やれやれ。


『大丈夫ちゃうか。お邪魔虫な連中が来たし。いや、救いの手か?外、見てみ』


 へあ?お邪魔虫な連中って、あー…


「お嬢様、襲撃です」


「カモンド男爵、早く……襲撃?」


 王都を出て一時間も経たずに何者かに襲撃を受けるのだった。


 十中八九ダイアナ商会に雇われたチンピラなんだろうけど…行動、早すぎませんかねぇ。

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