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第381話 決着の時でした

「じゃ、続きをやりましょうか。残り時間は――」


『3分ほどだよ。念押しするけど予測だからね。思ったより早いかもしれないし遅いかもしれないから。後で文句言わないでね』


「――だから、うるさいって言ってんでしょーが」


 後3分くらい、か。本格的に時間が無いな。


「残り3分……出し惜しみの必要も無い、わね。全力で行くわよ!」


 ヘラがそう宣言するとヘラから光が溢れ眩しく輝いたと思ったらすぐに収束。光の膜のようなモノがヘラを包んでいる。


 また傲慢の魔王の力か、それとも別の魔王の力か――どちらにせよ、こちらも出し惜しみしてる余裕は無さそうだ。


 あまり使いたくないんだけど……メーティス!


『了解や!デウス・エクス・マキナ、戦神モード発動や!』


 左腕は会話してる間にベルナデッタ殿下が治してくれた。イージスの盾を斬られた事で一部のパーツが足りてないが……


『デウス・エクス・マキナの全パーツを使ってマスターの全身を覆った巨大な鎧……大型パワードスーツ形態!人間の限界を超えたパワーとスピードを出せるようになるデウス・エクス・マキナ最強形態や!』


 ただしデカい。そりゃもうデカい。2メートルは優に超えるデカさだ。かなり目立つし狭い場所では使えない。全パーツを使うから偵察機もドローンも引っ込める必要があるし。


 何より――


「はん!それがアンタの切札?ブサイクなロボットみたいだし重そうね。そんなんでまともに動け――え!?」


「ふん!」


 何より半自動制御なのがよろしくない。俺の思考を読んでデウス・エクス・マキナが最適な行動を選択しアシスト機能でパワードスーツを制御し行動する。


 俺は考えるだけで動くロボットに乗ってるようなモノだ。見た目的にもな。


 だが、強い。


「ぐっ!いってぇなぁ!ごらぁ!」


 ヘラがカラドボルグを振るう。光の膜の効果なのかさっきまでよりも速い。今、俺はヘラの腹部を殴ったのだが、痛いと言いつつダメージは余りなかったようにも見える。動きにも支障な無いようだ。


 だが俺は余裕をもって躱せる。


「チィ!なんだぁ、その動きはぁ!さっきまでと全然ちげぇじゃねぇかぁ!」


「だろうなぁ!」


 何せ、この形態……戦神モードはデウス・エクス・マキナにインプットされてる戦神のモーションデータを元に動く。


 昔はそのデータを使って訓練をしたが、それでも最適化されたデータとは違う動きになる。それにインプットされた戦神のデータは複数。俺の思考を読み複数人の戦神のデータの中から最適な行動を瞬時に選択し、動く。


 早い話がヘラは戦神と戦っていると言っても過言ではないわけで。


「これで勝っても自力で勝てた気がしないから……あまり好きじゃないんだけどなぁ!」


「チィィ!」


 ヘラは戦神の動きについて来る。いくらアイシスの身体を使っていて、その戦闘能力の全てを使えるのだとしても互角に戦えるのは流石は神と褒めるべきか。


 それにあの光の膜……


『ヘラ様の戦闘能力も大幅に上がっとるな。あの光の膜の効果やろ。パワー、スピード……さっき殴ったんも大して効いてなさそうなとこ見ると防御力も上がっとると見てええやろ』


 シンプルだけど、それだけに高い効果が見込める能力だな。勇者の力か魔王の力か……禍々しさを感じないから勇者の力かね。


 そう言えば……


「他の魔王の力は使わないのか!出し惜しみは止めたんだろう!」


「うるっさい!――クッ、傲慢の魔王以外の力はアイシスと相性が悪いばかりなのよ!暴食は相性がいいけど、此処に食べるモノなんてない、し!チィ!避けんなぁ!」


 相性が悪い、ね。確かに嫉妬なんかはアイシスとは無縁そうだけどヘラとは良さそうなのにな。


『多分、慣れてないのもあるんやろ。訓練する時間も無かったやろうしな』


 そりゃ無いだろうな。今、戦ってるのはあくまでアイシスの身体を使ったヘラなんだし。


「チッ!デカい図体して避けまくるんじゃねぇよ!それにテメェ!なーんで武器を使わねぇ!」


「手加減が難しいからだ、よっ!」


「ガァッ!」


 この戦神モード、全パーツを使ってはいても武器は使える。ただしグングニルやミョルニルなんかは使えない。


 手の平からビームを撃ったり腕からビームサーベルを出したりシールドを出したりな。だが、それらの武器は加減が難しすぎる。ビームサーベルで突きを放って命中すれば確実に大穴が空く。


 あの神器の鎧があっても光の膜と一緒に貫いてしまう気がする。


 故に格闘。体術と魔法での攻撃がメインになるんだが……


「テメェ!女の顔をなぐるたぁ、それでも男かっ!」


「殴らせてるのはお前だ!俺だって殴りたくねぇわ!」


 決定打に欠ける。接近戦での高速バトルの最中に魔法を当てるのも難しい。高威力の魔法じゃないと効果も薄いし。


『残り2分――いや、もっと早そうだね。全力を出した事でより負担が大きくなったみたいだよ』


 何より時間が無い!どうする!


「ジュン!こっちは終ったよ!」


「怪我人は出たけど重傷者は……あたたた!まだ筋肉痛がっ!」


「後はお主がヘラを動けなくするだけじゃ!」


「てか、アレはジュンなのかよ」


「ブラックに似てる気がするけど……」


「デカすぎ」


 アイ達がこっちに向かって走ってる。全員無事なのは良いが……ヘラの動きを封じる手立てがない。


 ……いっそ手足を斬り落とすか?ヘラを追い出した後なら魔法で治療も可能な筈――


『それも危険やな。アイシスの肉体も限界が近いんやで、肉体の完全な崩壊が早まってまう可能性が高いわ。完全に崩壊する前にヘラ様をアイシスから出せるならええけど……どれだけ時間がかかるんかわからんし賭けになるで』


 ……なら他に何か無いのか、相棒!


『そうは言われても――マスター!」


「いい加減に……止まりやがれぇ!」


 これは、草の根っこ?!地面からデカい根っ子が出て来ただと!?


「ちょっとフレイヤ様!何でジュンを捕まえてんの!」


「わ、わしじゃないわ!ヘラの仕業に決まっとるじゃろが!」


「ハッ!アンタの真似よ、フレイヤ!見本があったから再現は簡単だったわ!」


 なるほど。フレイヤ様の真似か。だがしかし!こんなもん簡単に引きちぎって――


『待った!そのまま!動かずにいるんやでマスター!』


 ――は?何を言って……あ。


「一瞬でも動きを止めりゃあなぁ!こっちのモンなんだよぉ!」


 カラドボルグを前に突き出し、高速で突っ込んで来るヘラ。


「ようやく終わったなぁ!アーハッハッハァッ!ザマァみろ、エロースゥ!」


 動きが止まった俺の身体にカラドボルグは――

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