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第308話 極まってました

誤字脱字報告ありがとうございます。

ミスが多くてすみません…

〜〜第三者視点〜〜


 ジュン達が屋敷で話合いをしている一方で。


 同じ王都内のある屋敷に、ジュン達と同じように集まり会議を開いてる者達が居た。


 ただし…


「待たせたかな」


「いいえ。時間通りです、副会長」


「じゃあ…会長」


「ええ。始めましょう…第五回『ジュン様ファンクラブ会議』を」


 ジュンからすれば即「閉会!解散!」と叫びたくなるような会議だったが。


「と言っても…ジュン様はまだお戻りになっていないのではなくて?なら新しい情報もないのでは」


「それならまた会長に彼の昔話をしてもらえばいいのよ」


「そうですわね。会長のお話は実に興味深いものばかりで。まさかマヨネーズやジェンガを開発したのがジュン様だったとは。想像もしてませんでしたわ」


「本当にね。お金を出しても買えない情報がまだある事を期待してるわ」


 そう語るこの二人。


 一人はポラセク家の嫡子マルグリット。


 一人はグリージィ家当主マーヤ。


 共に侯爵家の人間であり、この二人が仲が良いとは周りには思われていない。


 他にも同じ王国貴族であるという事以外に接点があるとは思われていない令嬢達の姿がある。


 更に他にも…


「貴女の商会でも彼の発案した商品があるのよね」


「はい。キックボードは未だ人気商品で。ノワール侯爵様が作ったと宣伝した事で更に人気に火がつきました。更にノワール侯爵様考案のレンタルサービスも衰え知らずです」


「流石ジュン様ですわ。武人としての才だけでなく、商才までお持ちなんて」


 二人と話すのはユーバー商会のベニータ。彼女は平民だが貴族達に混じって参加している。


 彼女以外にも平民の女…老舗服飾店の店員や冒険者の女など。


 年齢、種族、職業、身分。全て関係なく集まっていた。


 彼女達に共通するのは国籍と同じ男を愛しているという事。


 彼の事が知りたい。彼の為に何かしたい。その想いの下、集まった非公認のファンクラブ。


 それが彼女達だった。


 切っ掛けは彼を守る為に行われたデモ活動。それを率いていた二人が彼…ジュンの為にと動いた結果がこれ。


 混ぜるな危険…それを誰も阻止しなかった結果こうなった。


「お喋りはそこまで。会長、どうぞ」


「ええ。ジュンはさっき王都に帰って来たわ。さっきまで王城にいて、今は屋敷ね」


 誰かに報告を受けたわけでもないのに、ジュンの居場所を正確に把握するヤバい女。


 会長の正体は自称ジュンの姉、ピオラだ。


「流石会長ですわ…ジュン様の居場所を正確に把握するなんて」


「いくら使えば私にも出来るようになるのかしら」


 普通なら、その謎な能力に戦慄するか何故わかるのかと疑問を呈する所だが。


 残念な事にこの場にそのような常識人はいない。


 ツッコミ不在である。


「城に来ていたのか…残念。我が友と愛を育むチャンスを逃してしまった」

 

「またきっとチャンスは来ますわ、副会長」


 ジュンを友と呼びつつも愛を育もうとするのはこの場で唯一の男、ジーク。


 彼もデモ活動の際、ピオラのジュンに対する異常なまでの愛情に共感し意気投合した。


 尚、エロース教では禁忌とされてる同性愛だが、ジークにそれを指摘する者も居ない。


 この場に居る全員が『エロの伝道師』の作品を愛読しているからだ。


 むしろ『それはそれ、これはこれ』と、密かにジークの恋を応援してる者までいる始末。


 ジュンがこの事実を知ればアイのお尻はまた真っ赤になるに違いない。


「ジュンが帝国でどんな事をして来たのかは次回までに聞いておくわ。それじゃ今日はジュンの好みの服について」


 このファンクラブ…ジュンの危機には動く決まりがあるが現状、彼女達にはジュンが新たに抱えた問題までは知りようがなく。ほぼ毎回ただただジュンについての会長の語りを聞くだけ。


 これまでの会議でも語られたのはピオラからのジュンの情報…個人情報だけだった。


 その情報を熱心に聞きメモを取る集団。


 やってる事は本人の許可なく個人情報のばら撒き。しかし、それを咎める常識人はやはり不在である。


「今日の所は以上ね。副会長は何かあります?」


「そうだね…そういえば行方不明になった神子の情報は集まった?」


 神子の情報…院長の息子レイの情報を何故彼女達が集めるのかと言えば。ジュンが喜ぶだろうから。ただそれだけ。


「そういえばまだ見つかってないのでしたか」


「私がお金で集めた情報だとドライデンでそれらしい姿を見たと。それ以上の情報は無かったですね」


「そのドライデンですが、近頃移民希望者が急増しているとか。何やら物騒な事になってるのやも。もし、ノワール侯爵様が行かれるのなら注意が必要かと」


 一応は真面目な話もあるにはある。が、長続きはしない。


 何故なら彼女達が欲しているのはジュンの個人情報だけではないからだ。


 それが早く欲しいが為、それ以外の話など早々に切り上げたい。


 それが彼女達の本音。欲望の前に建前などあって無いような物。


 風の前の塵も同然だった。


「そ、それじゃ会議はこれくらいにして…」


「会長、例のものを…」


「はいはい。皆、欲しがりさんね」


 平民のピオラを貴族、それも侯爵であるマーヤでさえも会長と呼び従うのはピオラが提供する物が欲しいからだ。


 王子であるジークが認めているから、ジュンの姉という立場にあるからというのも理由として上げられるが、大部分はそれが欲しいから。


「今日のお土産は…これ!ジュンの寝間着姿!」


「「「「「きゃあああ!」」」」」


 そう、ピオラによる盗撮写真。それが彼女達がファンクラブに入った一番の理由。


 ジュンの力になりたい、ジュンに好かれたい、そう言った理由も勿論あるが。


 目の前にぶら下げられた餌に弱いのは人間も同じ。ものの見事に釣り上げられた。


「流石だね会長。君に魔法道具を下賜して、本当に良かった」


「ありがとうございます。御蔭で色々捗ってます。本当に、色々と」


 ジュン第一主義のピオラが何故ファンクラブを作り、ジュンを売り物にするかのような行動をしたかと言えば。


 それはやはり全てジュンの為。ジュンが死ぬ寸前、正に危機一髪の状態にまで陥った事を彼女は把握しており、ジュンを護る会だけでは足りないと感じた彼女は先ずジークに接触。


 先のデモ活動で顔見知りになっていた事から話し合いはスムーズに進み。あっと言う間にフェンクラブを作るに至った。


 そして自分が会長になりジークを副会長にする事でメンバーが暴走しないようにコントロールもする。もはやジュンを信仰対象にした新興宗教の教祖のような立場を築いていた。


 そのファンクラブのメンバーの権力、人脈から得られる情報網は宰相のそれに匹敵する勢いにまで成長しており。設立した日から今日までの期間を考えれば恐ろしいまでの構築スピード。


 かつてピオラはユウを怖いと感じていたが、今となってはユウがピオラを怖いと感じるだろう。


「じゃあ、最後にいつもの…………ジュンは!」


「「「「「最高!」」」」」


「ノワール侯爵様は!」


「「「「「素敵に無敵!」」」」」


「ジュン・レイ・ノワール侯爵様!」


「「「「「抱いて!」」」」」


「私達の全ては!」


「「「「「ジュン・レイ・ノワール侯爵様の為に!」」」」」


 彼女達の活動を知った時、ジュンはどう思うのか、どう扱うのか。


 彼女達の存在がジュンにとって未来を照らす光となるのか。はたまた深淵の如き深く昏い落とし穴のような存在になるのか。


 それは予知能力を持ったベルナデッタでさえも知らない事だった。

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[一言] 知られたら? 雲隠れするんじゃない?(゜д゜)
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