第296話 やめて欲しいと願いました
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「半年ぶりですね、ノワール侯爵。我の事は覚えてくれてますか?」
「相変わらず美しいな、ノワール侯爵。私との婚約は考えてくれただろうか」
「…アーレスマイアー辺境伯。ノワール侯爵は我と話しているのですが?遠慮してもらいたい」
「貴女こそ遠慮してもらいたいなヒッターマイアー公爵。親子程年の離れたノワール侯爵に色目なんて使って…これだから余裕のない年増は」
「だ、なっ…言ってはならん事を!お前だって大して変わらないだろうが!若作りの行き遅れが!」
「んなっ…き、気にしてる事を…お前だって行き遅れだろうが!」
「……」
Round1 Fight!
『そんなん言うてんと…とめんでええん?』
いいだろ。合理的に離れる事が出来たし。三組目だしな。今更だろ。
『まぁ、そやねんけど…なんや血の気が多いなぁ』
写真撮影が終わった後。
なんとか始まったお茶会。規模からしてお茶会ではなく大パーティーだが…お茶会に参加して挨拶周りをしている。
「普通、ウチに挨拶をするべきだと思うんだけどな。先にさ。気にはしないけど、み〜んなジュンしか目に入ってないね」
「…だな」
そして我先にと話しかけて来てはああやって喧嘩になるのだ。
今の二人で三組目…何がしたいんだか。
「姫様…皇帝陛下がギスギスしてますからな。上があんな感じだと、家臣にも悪影響が出ているのかもしれませんなぁ」
「…すみません、ノワール侯爵様」
「あ、宰相にジェノバさん」
宰相とジェノバ様…宰相はドレスではなく貴族服…でいいのかな。
執務中に着ていそうな服でのご登場だ。
ジェノバ様は騎士服でも鎧でもなくドレス…お茶会だから当たり前か。
「皇帝陛下やマルレーネ様だけでなく、皆ピリピリしてますよね」
「皆、機会を窺ってるのでしょうな。大勢でまくしたてるようにアピールしても逆効果だと気付いたのでしょうな」
Oh…ようやく学習する事が。で、タイミングが被ったらイラッとしてFightする、と。
折角学習したんだから我慢しなさいよ。
喧嘩早い人は嫌いよ、ふん!
『なんで急にオネェになるんや?』
気にするな。意味はない。
「ところで今日はローエングリーン伯爵やレーンベルク団長は?あとジェノバ様のライバルも…他にも大勢来ておられませんが」
ライバル…クリスチーナの事か。そういえばそんな事もあったなぁ。
「王国では最近色々ありまして。皆忙しいのですよ。私だって忙しくて――」
「なるほど。未知の化け物やら何やらが現れたとか。ノワール侯爵に至っては勇者に狙われているとか。大変ですな」
「…宰相、どこまで知っているのか知りませんが。あまり大声で話さないでいただきたい」
他にもある程度の情報を掴んでいる人もいるだろうし、余計な燃料を与えたくない。貴方を護るーとか、貴方の為に勇者を倒すーとか。なんだかんだと言いだして俺の傍に居ようとする輩が増えてしまう。
実際、イエローレイダー団長を始め五大騎士団の騎士達が言い出してたからな…祝勝パーティーは大変だった。まだ三回も残ってるんだよな…やれやれ。
「聞き捨てならない事が聞こえたわね。貴方、命を狙われているの?」
「あ」
今、一番めんどくさい人物に聞かれてた。
マルレーネ様に従者の二人。その後ろに教皇一行もいる。
「すみません、ジュン様…説得は失敗しました…」
「でしょうね」
教皇一行は俺を諦めるようにマルレーネ様を説得しようとしたが最初っから無理だとわかってた。
だって説得力が欠片も無いもんね。教皇一行とマルレーネ様の目的は同じなんだもの。そりゃ説得に応じるわけがない。
オマエが言うなって話だよな。
「ところで…なんです、その格好は」
「え…お、おかしい?」
「……お綺麗だとは思いますが場には相応しくないかと」
ショートパンツにショート丈のTシャツ…脚が長くてスレンダーな体形をしてるので活発な印象を受ける。良く似合ってるとは思うが、お茶会に相応しいとは言えない。
とても綺麗な脚をしてらっしゃるとは思うけどね!
『マスターって脚フェチやったん?えらい高評価やん』
いや、そういうわけじゃないよ?美脚も美尻も美乳も全て好きだけどあえて選べと言われたらおっぱい派になるけれども?
美脚も決して悪くないよねって話で。
『あ、そう……その反応が狙い通りなんやと思うけどなぁ。美脚がマルレーネのアピールポイントなんやろ』
…なるほど?美脚を最大限に活かすファッションがそれだと。
フッ…花丸をあげよう!
「ちょっとカトリーヌ!ダメじゃない!不評よ不評!」
「大丈夫よ~なんだかんだでマルちゃんの美脚に釘付けだもの~」
「……そうでもなさそう」
ぬぅ!アムに匹敵する爆乳が現れた!なんて深い谷間だ!アレがこの世界のグレートキャニオンか!
『……たま~にマスターってアレになるやんな。そんなんでよう一線を越えんでやってこれたなぁ、ほんまに』
それは俺の鋼を越えてアダマンタイトな意思でな。ハッハッ!
「ちょっと!カトリーヌの胸に視線が行ってるじゃない!なんであたしより熱視線受けてんのよ!あたしより目立っちゃダメじゃない!」
「え~…そんな事言われたって~…これが一番地味なんだもの~仕方ないじゃない~」
「……カトリーヌは規格外」
確かに。規格外の爆乳なのは認めよう!
まぁ、更にその上を行く超乳の持ち主を俺は知っているが。
『イエローレイダー団長やな。ちなみにアレはNカップや』
すげぇなイエローレイダー団長!鍛えられてるから引き締まってるのにNカップとか!
「って、いたたた!」
「ジュン?ウチが隣にいるの、忘れてない?ちょっと見過ぎだと思うなぁ」
お、おう……確かにアイが居るの忘れてた。でも、そんなに見てたかな……見てたとしても悟られないように紳士的に見てたはず……
『紳士的ってなんやろうって本気で考えさせられたわ。あんなガン見しといてよういうでホンマに』
………………なんか、すんません。
「フ、フン!カトリーヌが規格外なのは認めるけれどね!デカけりゃいいってもんじゃないのよ、おっぱいは!おっぱいとは形と体形とのバランスが重要なのよ!そうよね教……司祭!」
「そ、それは、まぁ…………そうですね?」
「というか、わたし達を自分側に引き込もうとするのはやめないか。そこの規格外には比べるまでもないが、わたし達の胸は平均よりはあるんだからな」
「ぐっ、くぅぅぅ………」
「泣く事ないじゃない~……」
「マルレーネ、その涙は敗北の証…」
ターニャ嬢、それは慰めじゃありませんね?追い打ちですよね?死人に鞭打ちですよね?
「……と、兎に角!ノワール侯爵!貴方の事はあたしが護るから!だからあたしと――」
「不要よ。ジュンはウチが護るから。貴女の出番はないわ。というか、それを認めたらこの場の何人が立候補すると思ってんのよ」
「確かに。それでノワール侯爵と結婚出来るなら先ず姫様がツヴァイドルフ帝国の総力を挙げてしまうでしょうな。結果、功を挙げた者とも結婚する事に。そうなると……いやはや、最終的に何人になるんでしょうな」
何人になるんだろうなぁ……既に千人以上の嫁候補が居るわけで。それなのに此処で更に嫁を増やすような事は――
『マスターの使命的には千人じゃ到底足らんねんけどな。王国で千人、帝国で千人、大公国で千人って感じで行くとええんちゃう?』
…………それ、何て世界征服?
「ぬぐぐ………と、ところで貴女は誰よ」
「名乗ってなかったっけ?ウチはアイシャ・アイリーン・アインハルト。親しい人はアイって呼ぶわ。アインハルト王国の第一王女、そしてジュンの婚約者よ。正式な、ね」
「なっ…なんですっとぅええええええ!?」
……あれ?知らないの?俺とアイの婚約は既に正式に内外に向けて発表されてるから、公子なら当然知ってるとばかり。
「マルちゃん、どうして驚いてるの~?ノワール侯爵とアイシャ殿下の婚約は事前に聞いてたじゃない~」
「そ!……そうだった?あれ、でも……あたしと婚約しなかった?」
「……いつの話?」
「……最近?」
「マルちゃん……妄想と現実の区別はつけなきゃダメよ~…」
まだ出会ってほんの1.2時間の関係ですやん。それで妄想で婚約して現実とごっちゃになってるとか……ヤンデレの素養たっぷりですやん。
ピオラとはまた違った方向性のヤンデレですやん。どうかそこで止まってください、お願いします。
「えっと…夢から醒めたかしら?人の夢って儚いわよね~うんうん。でもね?そもそも他国の公子様が――」
「そう、そういう事ね…あたしが倒さなければならない相手はジェノバ達ツヴァイドルフ皇家だけじゃなかったって事ね!アイシャ王女!勝負よ!」
「――はい?ウチに勝てると思ってんの?闘技大会優勝者のウチに」
俺を除けばアイはこの世界で最強の一角だろうしな。そのアイに勝とうなんて無謀もいいところ――
「ぶ、武力も重要だけどそうじゃないわ!ノワール侯爵に本当に相応しい女は誰か決めようって事!つまりどっちが良い女か決めようって言ってるのよ!」
ああ………いや、その勝負はやめてくれません?ひっじょーにマズい展開になる予感しかしないんですが。




