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第275話 ヤバくなりました

~~マイケル~~



「ひっ!お、おい!ちゃんと俺様を護れ!もう少しで当たるところだったろうが!」


「申し訳ありません。しかし、全てを防ぐ事は不可能です。こちらは百、向こうは数千です。数が違い過ぎます」


「そんな事はわかっている!それを何とかしろって言っているんだろうが!何の為にお前達を強化したと、ひぃ!」


 くそ!くそくそくそ!


 切札を切ったというのに防御で手一杯!攻撃に転じる事も逃げる事も出来ないままじゃないか!俺様が進みたい東側に行けないように攻撃が雨あられ… これではアンラ・マンユと合流する事も…あ!?


「おい!奴ら回り込んでるぞ!俺様を包囲するつもりだ!包囲されたら終わるぞ!なんとかしろ!」


「………御主人様、私達の中央へ。私達七人で御主人様を護りつつ東側へ強硬突破します。残りのサキュバスウォリアーズは敵軍に突撃。時間を稼がせます。よろしいですね」


「う、うむ……」


 くそ、王都の目前まで来たというのに……しかし、此処で死んでは元も子もない。


 十年も耐えて来たんだ。此処から逃げ……撤退してまた暫く耐えるくらい何ほどでもない。サキュバスウォリアーズを失うのは痛手だが女はいくらでも補充出来る。


 撤退は業腹だが……次はもっと大軍で来てやる。今度はベルムバッハ伯爵らを完全に支配してクーデターを起こさせるか。そうすれば自然と奴らの手下も俺様の支配下になる。


 いや、それならもっと大物を狙うべきだな。公爵や辺境伯を――


「御主人様。何かがこちらに向かって来ます。恐らくアンラ・マンユ様です」


「何!」



~~ジュン~~



「アイ!俺は奴を追う!皆と一緒に後から――ぐへあっ!」


「ちょい待ち!」


 な、何すんのん…首がもげるかと思ったぞ。早く追わないと面倒な事になるんだが?


「一人で追いかけるつもり?ウチも一緒に行く!」


「いや危険だし。早く追わなきゃいけないし」


「尚更じゃん!ほら早く!」


 なんだ、その手は…まさか抱き上げて移動しろと?そんなん普通なら遅くなるだけでしょ。


 普通なら。


「んー!」


「はぁ…はいはい。メーティス」


『…チィ。しゃあないな。奴の現在地は補足出来とるし勇者一行も出来とる。どうやら勇者らは王都近くで戦闘中みたいやで。どういうわけかソフィアら五大騎士団全軍と。カタリナにシルヴァン、レティシアもおるな。あ、ジークにアニエスもおるわ』


 …なんで?


 いや、それよりも皆が危ない!急がなくては!


 跳ぶぞ、メーティス!


『ええんか?空間転移能力がバレる事になるで。下手すればエロース様の使徒やって断定されるかも。そうなったら――』


 んな事言ってる場合か!命が最優先だ!俺Tueeeeはその次!


『いや俺Tueeeeの問題やのうて…もうええわ。五大騎士団と勇者らの中間、その上空へ転移するで。そうすれば飛行魔法で飛んで来たって誤解されるやろ。転移して来たって思われるよりはマシな筈やで。アンラ・マンユよりも先に合流出来るしな』


 それでいい!早く跳べ!


『はいはい。ほないくで!』


「あっ、ちょ!ウチも行くんだってば、もう!」


「ああ、もう!しっかり捕まってろ!でないと落ちるぞ!」


「わかって……へあっ?!」


 よし!アンラ・マンユはまだ来てないな!勇者は…アレか!


 で、最前線で戦ってるのは…ソフィアさん達か。もう勇者とその周辺にいる女達以外は方が付いて…てか、あの女達はなんだ?


 人間…じゃあなさそうだが。


『その辺りはアニエスかソフィアらに聞けばええやろ。あとはあそこにいる勇者と七人の女みたいやし。もうすぐアンラ・マンユが来るから急いだ方がええで』


 だな。となると…最前線にいるソフィアさんだな。


「こ、此処……王都の近く?ジュン、もしかして転移ま…ほぉぉぉ!?」


 …死体が沢山あるが五大騎士団の死体は無い…か。死体の女には全て角があったり羽があったり尻尾があったり。


 まるで悪魔のような姿だ。どういう事だ?勇者が連れているのは元盗賊だったり囚われた元冒険者だったはずじゃ?


「おち、おち、落ちてるぅぅぅ!ジュン、落ちてるってばぁぁぁ!ひぇぇぇぇ!」


「落ちつけ。落ちてるんじゃなくて降りてるんだ」


 自然落下に加えて飛行魔法も使った方が速いからな。遊園地のフリーフォールも真っ青な高度と速度。こんな時だが中々のスリルだろ?


「ひょえええええ!」


「よし。あとは勇者…な、なに!?」


「アレは…ジュン君とアイシャ殿下っスよ!落ちて来るっス!」


 ナヴィさんとハエッタさんも一緒か。クライネさんは後方指揮かな。怪我も無いようで何よりだ。


「というわけで。ソフィアさん、状況説明を。あの男が勇者で間違いないんですか。あの角の生えた女達はななんです」


「……え、ええ。いえ、それよりも殿下先生…アイシャ殿下は大丈夫ですか?」


「だ、だいじょばない……でも、説明をお願い…」


「は、はい……」


「あたしらもジュン君が空から落ちて来た理由聞きたいっスっけど。周りが騒がしくなる前に説明した方がよさそうっスね」


「それに関しては手遅れな気がしますね」


 ああ…騒いでますね。後方が騒がしいのはジーク殿下かな。黄薔薇騎士団の方が騒がしいのはイエローレイダー団長かな。


 こっちに来ようとして……いや、来ちゃったな。黄薔薇騎士団を放置して。


「えっと…あの女達は勇者の配下でサキュバスウォリアーズとか言うらしいわ。最初は普通の人間だったのだけど姿を変えてああなったの。そしてその戦力は――」


「ノワール侯!御無事なようで良かった!」


「…サキュバス?」


「ノワール侯!?無視しないでくださいぃぃぃ!」


 エロース教で保護されてる極少数だけが生き残ってる絶滅危惧種の亜人種……だよな、確か。それが何故こんな所に。しかも勇者に従ってる?


『…どうもこの世界のサキュバスとはまた違う種みたいやで。少なくとも人間に化けるとか出来へんからな、この世界のサキュバスは。推測でしかないけど勇者の力ってやつちゃうか』


 …勇者の力で人間を別世界のサキュバスに変えたって事か。女を支配するだけの能力じゃなかったんだな。


「…サキュバスウォリアーズの戦力はかなりのものよ。一人一人がAクラス冒険者に匹敵、もしくはそれ以上。遠距離から数で圧倒出来たから殲滅出来たけれど。それであの勇者についてだけど――」


「勇者については私が」


「ゼフラ先輩」


 ゼフラさんまで来てたのか。あ、カタリナも来てる?だけじゃなくエルリックまで?赤ん坊連れて来ちゃダメでしょ…いくら勇者だからって。


「あの勇者は―」


「ノワール侯ぅぅぅ…」


「ああ…はいはいよしよし。無事です元気です」


「ノワール侯ぅぅぅ!」


 …泣いた鴉がもう笑った。…なんですソフィアさん。その眼は。頭撫でただけですやん。


 ささ、ゼフラさん。続きを。


「…あの勇者は――」


「おい!レーンベルク団長!黄色の!何か来るぞ!」


「一度全軍を下げさせろ!相当な化け物が来る!」


「急いだ方がいい!赤薔薇騎士団は既に後退させてる!」


 全団長が揃ったか。で、悪役(ヴィラン)も…もう来るな。


「アイ、立って。第二…いや第三ラウンドが始まる」


「ふぅ、ふぅ…ふぅぅぅ~…あとで覚えてなよ、ジュン。各団長に命令するわ。全騎士は後退。此処はウチとジュンに任せなさい」


「アイシャ殿下!?」


 おお…わかってるな、アイ。俺Tueeeeのチャンスをくれるとは――


『せやのうて。純粋に犠牲者が出るのんを防ぐ為やろ。アンラ・マンユの相手はマスターとアイくらいにしか出来へんのやから。ソフィアら団長クラスでも厳しいで』


 …わ、わかってるよ、うん。いのちだいじに。


「で。そこの貴女…ゼフラだっけ。あの勇者についての情報があるの?」


「…はい。あの勇者は『色欲の――」


「来たぞ!備えろ!」


「ノワール侯!私の後ろに!」


「何だ、あの異形の化け物は?」


「人間…女の子?」


 アンラ・マンユ…再生が終わってるな。見た目は無傷だが、もう余力はほぼ無い筈。


 これ以上余計な事をされる前に……………あ?


「お、おい?」


「化け物が……頭目の男を殺したぞ。どうなってる」


 アンラ・マンユが一人のサキュバスを殺したと思ったら身体が頭から股まで割れて勇者を身体で挟んでブシュッとやった。


 おいおいおい……仲間割れか?まさか勇者を殺して命乞いをするつもりじゃないだろうな。


『……いいや、違うわ。アンラ・マンユのエネルギーが回復、元々の倍に膨れ上がったわ。殺したんやのうて、喰った、若しくは取り込んだ、やな』


 取り込んだ…勇者を喰ってパワーアップしようってか。暴食……喰った存在の生命力で満たされ強くなる能力、か。


 今は人型に変身した時と同じように粘土細工のようにグニャグニャになってる。


 ラスボスは二回変身するもの、てか?


「……もう必要なさそうだが一応伝えておこう。あの勇者は『色欲の勇者』らしい。その正体は――」


「っ!もういいわ、貴女も下がりなさい!各団長もボヤボヤしない!早く全騎士と一緒に下がりなさい!これは命令よ!」


 変身が終わったか………こりゃ本格的にヤベェ、かも?

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― 新着の感想 ―
[一言] 利用するだけの奴は利用されるだけで終わる はっきりわかんだよね
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