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第269話 対決の時でした

~~???~~



「……今の音は何だ?」


「調べて参ります」


 全く…折角眠っていたのに騒がしい奴らだ。所詮は下賤なる者共…静かに移動する事も出来んのか。


 盗賊だけでは不安だからその辺りも補えるように常識と知識のありそうな商人や冒険者も加えたというのにあまり改善されんし…やはり主体となるのが盗賊ではダメだな。


 まぁいい。もう少しの辛抱だ。王都に着けば王族を支配出来る。王族を支配出来ればアインハルト王国を支配出来る。


 そして奴を殺した後は…そうだな、ノイス支部の女共も処刑してやろう。


 アイツらも俺様を否定した罪深き者共。罰を与えてやらねばな。


 その後はエロース教本部だ。間にある国は全てたいらげてやる。


「ククク…クハーハッハッハッハッ!」


「戻りました、御主人様」


「ハッハッ…ノックくらいしろ、愚図が」


「申し訳ありません。ノックはしたのですが」


 …移動中の馬車だからな。聞こえなかったか。


「まぁいい。それで」


「はい。アンラ・マンユ様が飛び出した音だったようです。飛び出す際に馬車を破壊して何処かへ飛び去ったと」


「何?」


 チッ…あの化け物め。醜い化け物だがあの力は使えるし神に言われたから行動を共にしているが自制が効かない化け物は厄介すぎる。


 赤子の心臓を好んで食べるというのも実におぞましい。ま、高貴なる俺様の血を盗賊なんぞの子に受け継がせるわけにいかないから丁度良かったのだがな。


 だが、いずれはあの化け物も処分しないとな。世界の王となる俺様の傍に仕えているのがあのような化け物ではあってはならない。


 そうだな…ファフニールくらいでなければな。アイツなら俺様の手駒に相応しい。


「如何致しますか」


「ん?何がだ」


「アンラ・マンユ様です。迎えに行きますか」


「はっ、馬鹿が。お前、アレが迎えに行ったからと素直に従う生き物だと思っているのか」


「…いいえ。ですが御主人様が赴けば或いは」


「本当に馬鹿だな。王都が目前なのに何故俺様が行かねばならん。どうせ放っておけば戻って来るんだ。王都に着くまでには戻って――」


「それなのですが。アンラ・マンユ様は向かった方角からして恐らくは逃げた女共が連れている赤子です。赤子の心臓を喰らうまでは戻らないでしょう。追手が戻ってこない事から追手は撃退されたのでしょう。女共の逃走先によっては騒ぎになる可能性が。我々の事も話していると見るべきですし、アンラ・マンユ様が暴れれば王都にも各街にも連絡が行くでしょう。すんなり王都に入れるかどうか」


「……それを先に言え!」


 チッ…確かにあんな化け物が暴れれば騒ぎになるのは必然だ。アイツなら並の騎士団なら一つや二つ簡単に潰すだろう。


 そうなれば五大騎士団が出張って来る可能性が高い。下手をすれば五大騎士団すらも壊滅だ。


 後々の事を考えればそれは拙い。俺様の国になる王国の戦力は極力残して置かねば。それに以前遠目に見ただけだが五大騎士団には良い女が多い。


 是非とも俺様の女にしたい…だがあの化け物に言った処で殺さずにおけるとも思えん。


「…王都まで後どれくらいだ」


「これまでと同じように人目から隠れながら進めば後半日は掛かるでしょう」


「人目を気にせず最短距離を全速力で行けば?」


「2時間かからないかと」


「1時間で着くようにしろ。馬も使い潰して構わん。兎に角急げ」


「はい」


 俺様が王都に着きさえすれば即座に女共を支配して王城まで乗り込み女王を支配する。そうすれば五大騎士団の出征も止められる。


 化け物が戻って来たら王都に居る赤子をくれてやればいい。そうすれば後は予定通りだ。


 ジュンを殺しノイス支部の司祭共も殺し。エロース教本部に行き全て屈服させてやる。



「御主人様、王都が見えました」


「よし。門では検閲があるだろうが無難にやり過ごせよ。時間を掛けさせるな。王都に入った後は少数で王城に向かって――どうした、何故止まる」


「それは無理そうなのです、御主人様。アレを御覧ください」


「アレ?」


 何だと言うのだ、全く…どうしてこうも手際が悪いのだ。見ろと言っても馬車から降りねば見れないだろうが。


「チッ…くだらんものだったら覚悟して…なんだ、アレは」


「今、知識のある者から聞き取りをしています。……どうやら掲げている旗から見て五大騎士団の物で間違いないようです。それも五大騎士団全ての旗があると事です」


「それは良いが何故王都の前で五大騎士団が陣取っている!アレでは王都に入れんだろうが!」


「申し訳ありません。私には解りかねます」


 くそ!くそくそくそくそくそくそがぁぁぁ!もう少しで俺様の野望の第一歩と復讐が叶うというのに!


 何だと言うのだ、一体!




~~ジーク~~




「ジークお兄ちゃん、アレだよ。アレに悪い勇者が乗ってるの!ね、本当に来てたでしょ!」


「そうか、アレか。ありがとう、ベル」


 ベルが突然部屋に来て「悪い勇者が来てる!」と騒いだ時は驚いたが…直ぐにそういう予知を見たのだとわかった。


 そしてその「悪い勇者」とは我が友を狙う悪人。そして我が友がアイと共に不在の今、僕がなんとかしないとならない。


 直ぐに母上に「悪い勇者」が来る事を説明。そしてベルが言うには僕が…僕の持つ勇者の力が必要になるとの事。


 僕が前線に行く事に母上は最後まで反対していたけど最後にが送りだしてくれた。代わりに五大騎士団の全軍と言う最大戦力と共に。


 更に相談役としてローエングリーン伯爵まで。ベルが僕が居れば何とかなると言ってるのだから過剰戦力だと言うのに…母上も心配性にも困ったものだ。


 それに、だ。


「ローエングリーン伯爵。彼は本当に大丈夫なのかな」


「…この場に居るだけで大丈夫だそうなので」


「だだ、だいじょ、大丈夫です!何せ僕は『月夜の勇者』ですから!」


「ウフフ…そう、シルヴァンは『月夜の勇者』…シルヴァンが居れば怖いものはないわ…」


 ……僕はまともな女性には出会えない運命なんだろうか。


 この二人はローエングリーン家の親戚筋のノール子爵家の者らしいけど…当てにしていいのかな。


 それに…


「その赤ちゃんと女の子は?」


「……申し訳ありません。この二人に関しては秘匿させて頂きたく…ただ特殊な能力を持っていまして、もしかしたら役に立つかと思い。私の娘が面倒を見ますのでご容赦を」


「…え!わ、私ですか!?」


 どう見ても赤ちゃんと2歳か3歳くらいの女の子だけど…いいのかな、こんなとこに連れて来て。


「…それで先ずはどうするべきかなローエングリーン伯爵」


「先ずは相手の出方を探りましょう。可能ならその目的を。五大騎士団全軍が揃っている以上、負けは無いと思いたいですが相手の能力は未知。避けられる戦闘なら避けるべきです」


 その可能性は少なそうだけどね。ベルの予知によれば戦闘は避けられない筈。


「…問答無用の先制攻撃で仕留めてしまうのはどうだい?」


「……相手が罪を犯した大罪人だと確定しているのであれば問題ありません。ですが、もし万が一相手に罪なき者が居た場合、ジュンに…ノワール侯爵に嫌われてしまいますよ。間違いなく」


「それだけは避けないといけないね、うん。それ最優先」


 我が友は優しいからね。では先ずは話し合いと行こうじゃないか。


「僕はアインハルト王国王太子ジーク・エルム・アインハルト!そちらに勇者が居る事はわかっている!話がしたい!前に出て来てもらいたい!」


 さぁ、どう応じるのかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 洗脳能力は無効化されると大体雑魚だがさて
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