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第268話 化け物でした

 この先に居るのは他人を支配する力を持った男と異世界から来た化け物。


 更に洗脳、支配された女性達凡そ百人。


 同時に相手するとなると厄介だな…俺一人でならなんとでも出来る自信はあるがアイ達を護りながらとなると厳しいかもな。


 …取り合えず捕縛した女性達と保護した女性達を安全な場所へ――


「ところでずっと気になってたんですけど…」「そちらの貴方…男性、ですよね」「だよねだよね!」「すっごいハンサムイケメン!」「イケメンメンソレータム!」


「最後の方はちょっと何言ってるのかわかんない」


 この人達、ちょっと前まで洗脳され支配され凌辱されたんだよな。なのに何故、そんなにも明るく振る舞えるのか。


 無理してるなら健気だと思えるがどう見ても素。どこまでタフなんだ、この世界の女は。


「……元気そうでなによりね。その様子なら自力で最寄りの街までいけるわよね。悪いけどウチらは急いでるから。後は自力で頼むわね」


「え?で、でも…」


「あの化け物が追って来るかもしれないし…そうなるとこの子は…」


 化け物が追って来る…その子を?何故だ。そこまでその子に執着する理由があるのか?


「この子…というより赤ちゃんの心臓に執着してるんです」


「一番満たされるとか言ってたような…よくわかんないんですけど」


「言ってた?その化け物が自分で言ってたって事?」


「はい。変な声でしたけど確かに言ってました」


 やはり犬神と同じ類の存在なんだろうな。しかも赤ん坊の心臓を喰う事で満たされるなんてかなり邪悪な化け物。


 どこの世界から来たのか知らないがどうしてそんな化け物の存在が許されたのか。


 即滅だろ、普通なら。


「…だけど、俺がその化け物をなんとかします。だから安心して――」


『マスター!何かが高速で向かって来よるで!!』


 はぁ!?いきなりなんだよ!何かって何だ!


『わからん!監視してる盗賊団の馬車から突然何かが飛び出してこっちに向かっとる!もう見えるで!』


 唐突すぎんだろうが!もしかしなくてもそれって肉の塊っていう化けも…来る!


「皆!何か来る!構えろ!」


「へ?何かって…うわおう!?」


「みんな、私の後ろに!ドミニー!!」


「!」


「な、何よ、何なのよ!この嫌な気配!」


「わふぅぅぅ!」


 衝撃波と共に現れたのは確かに肉の塊と表現するに相応しい、おぞましい姿をした化け物。


 赤黒く、所々に青紫色に脈打つ血管のような筋が見え、瞼の無い眼球が左右非対称に二つ。そして無数の歯が見える縦に割れた口のような物。


 ホラー映画やゲームなんかに出て来るクリーチャーのような姿の化け物。それが突然眼の前に現れた。


「…オナカ スイタ」


「喋っ…なんだぁ!?」


「ひっ!…あれ、え?」


「だ、大丈夫。ジュンの結界魔法…」


 喋ったと思ったら綱引きに使う縄のような太い触手を伸ばして攻撃…いや、女性が抱く赤ん坊に向かって伸ばして来た。


 こいつの目的は赤ん坊を喰う事か。その為だけに来たのか?


「コノ カンジ オマエガ 使徒 ナノ?」


 …肉の塊にしか見えないような姿なのに、その声は何処か…そう、日本で暮らしてる人間なら一度は聞いた事のあるロボットのような合成音声のような響き。


 肉の塊のくせに肉声じゃないのか。


「答エテ オマエガ 使徒 ナノ?」


「…俺に言ってるなら、違うね。何の事だかわからない」


「ソウ デモ オマエノ 心臓 オイシソウ 食ベテイイ?」


「いいわけあるか」


 何なんだ、こいつは。この見た目で、この喋り…まるで子供と話してるような感覚。


「ケチンボ ジャ ソッチノ アカチャン チョウダイ」


「駄目だ。赤ん坊は…赤ちゃんは食べ物じゃない」


「ドウシテ? ソレハ 食ベテイイッテ 言ッテタモン オナカスイタンダモン 食ベテイイデショ?」


「駄目だと言ってるだろう。人間の赤ちゃんを食べるなんて許される筈が――」


「ドウシテ? 人間ノ アカチャンハダメナノ? 人間ダッテ 動物 タベテルヨ?」


 本当に何なんだ、こいつ。見た目からして邪悪。気配も邪悪。なのに言ってる事は…無邪気な子供のような…


「…人間が動物を食べるのは生きる為だ。不必要に動物を殺してるわけじゃない」


「ボクモ 同ジ ボクモ生キル為 強クナル為 ダカラ アカチャンノ 心臓食ベルノ」


「…何言ってるか、わかるか?」


「わたしにはわかんない…でも怖い、アレ、怖いよ…」


「あーしも感じる…アレはヤバい。まともにやりあっちゃ駄目…」


「わふ…」


 アム達が化け物に怯えてる。ハティ、リヴァでさえも。


 俺以外にまともに戦えるのは…院長先生とドミニーさん。それにアイ、か。


「お前は一体何なんだ。魔獣…いや悪魔か何かか」


「ボクハ アンラ・マンユ ラスボスダヨ」


「は?ラスボス?」


「ソウ ラスボス 仮想世界カラ 現実世界ヘ 行ク事ガ出来タノ ゲームダト 悪意ノ象徴 ダッタカナ?」


「仮想世界って…」


 アイが俺に眼を合わせて、頷く。


 つまりこいつは…何処かの世界でゲームの中から現実へ実体化した存在。そのゲーム内においてはラスボスとして存在していた、と。


 そういう事か。


「ボクモ ヨクワカラナインダケドネ デモ コノ世界ニ来タノハ 神様ニナル為 使徒ヲ 食ベレバ 神様ニ ナレルンダッテサ 神様ニ ナレレバ イツデモ ナンデモ 好キニ デキルッテ 聞イタンダヨ」


 神になる…そこは犬神と同じか。その後にやりたい事は違うようだが。


「…赤ちゃんの心臓を食べる理由はなんだ。他の物を食べれないわけじゃないんだろう」


「ウン デモ アカチャンノ心臓ガ 一番 満タサレルカラ」


「満たされる?美味いって事か」


「ウウン 生命力 アカチャンノ 心臓ガ 一番 生命力ニ 溢レテルカラ 生命力ヲ 沢山食ベルト 満タサレルノ コレヲ 貰ッテカラハ ズット」


 口の中から出て来たのは舌。人間の舌をデカく長くしたような舌をベロンと出した。


 そこにはよだれを誑した人の顔のような痣が。ジーク達の聖痕と何処となく似た雰囲気はあるが…


「コレハネ 暴食ノ紋 ッテ 言ウンダッテ 神様ガ ボクニクレタ 力ダヨ 生命力ヲ 食ベレバ 食ベルホド 強クナッテ 満タサレルンダ」


 暴食の紋…紋章か。暴食…もしかして七つの大罪の一つとか言うんじゃないだろうな。


「デモネ コレヲモラッテカラ スグ オナカガヘッチャッテ アカチャンノ 心臓ヲ食ベレバ 少シハ 我慢 デキルンダケド モウ 我慢デキナインダ」


 ドクン と。化け物の身体全体が脈打ったように見えた。


「ダカラ」 


 また ドクン と脈打った。そして1m台の大きさだったのが一回り大きくなったように見える。


「君達 食ベチャウネ」


 …突然問答無用かよ!

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[一言] いやホンマ仕事しろよネ申(゜д゜)
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