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第259話 嗤ってました

新年の挨拶が遅れました。すみません。


あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 前回のあらすじ。


 どうやらノワール侯爵家は悪鬼に囚われているらしい。


 …うん、わからん。


「(アニエスさん、悪鬼だったんですか)」


「(…あいつらにとってはそうなんだろうな。妬まれているとは思っていたが…まさか此処まで…)」


 想定外も想定外。アニエスさんの顔にはそう書いてある。それは少し離れた場所にいるソフィアさんも同じ。


 いやレッドフィールド公爵やグリージィ侯爵、イエローレイダー団長も驚きを隠せずにいる。


 他にも同じような顔した人が多数…中には「いいぞ、やってしまえ」という顔や心配そうな表情をした人もいるが。


「ノワール侯爵家の解放?お前達は何を言っている」


「王国中の貴族が集まるこの場で言うからには根拠となる証拠があるのだろうな」


「勿論です!これをご覧ください!」


 そう言って懐から…あー…ベルムバッハ伯爵だったか。


 彼女が取り出したのは写真だ。


「このように!ローエングリーン伯爵、レーンベルク伯爵を始め多くの者がノワール侯爵に日常的に性的な嫌がらせを行っております!」


 あー…写真はまだ見てないがどんな写真かはわかった。俺の尻を揉んだりお腹を弄ってるシーンですね、はい。


 そのセクハラの事を悪行として訴えてるならまぁ…事実だとしか言えませんけども。


 でも、それってあんた達が言うべき事じゃなくね?


「……これだけか?」


「これだけで悪鬼と呼ぶには無理があるぞベルムバッハ伯爵」


「勿論まだあります!」


 そう言ってまた懐から何かを取り出したベルムバッハ伯爵。


 お次は鉱山運営に関する利益の不当搾取。俺を従わせる為に孤児院を人質に脅した。脅した挙句に身体を要求した…などなど。


 それらの写真付きの調査報告書を声高に読み上げるベルムバッハ伯爵。その様子は…なんかもう狂気の一言。


 眼が血走ってやがるぜ。


「(いや大悪党ですね、アニエスさん)」


「(本当にな…)」


 なぜでっち上げであそこまで自信満々に叫ぶ事が出来るのか。アカデミー賞狙えるんじゃね。この世界にゃ無いけどさ。


 しかし騙されてアニエスさんやソフィアさんに嫌悪と憎悪の視線を向ける人もチラホラ。


 真実を知らない人には効果的なのかね。


「(お前は疑わないのか?)」


「(はい?俺がアニエスさん達を?)」


 何を言うてますのん。俺は当事者なんだからベルムバッハ伯爵が言ってる事が嘘か本当かくらい聞く迄も―


「(一部は真実が混ざってるかもしれんだろう。鉱山の利益を搾取してるのは…まぁ嘘ではないし)」


「(ああ…いや、アレは正当な報酬でしょう)」


 なんせ殆どの仕事は他人任せだからな…使用人に払う給料やら屋敷の維持費やらが賄えるだけの最低限の収入さえあれば例え鉱山の利益をほぼ奪われてたとしても何も文句は言いません、はい。


 だって俺はほぼほぼ仕事してないんだし。


「(それにアニエスさん含め、皆の事は信用してますから。疑ったりしませんよ)」


「(…こんな時だが抱きしめていいか)」


 よくないので自重してください。手をワキワキしないで…


「…ふむ。良く出来ているな」


「そうでしょう!我がベルムバッハ伯爵家を始め多くの貴族の協力の元――」


「ええ、本当に。良く出来た偽造書類ですな」


「調査した――なんですと?」


「良く出来た偽造だと言っている」


 おお…流石は王国のツートップ。ベルムバッハ伯爵らの嘘を見抜いていたとは。


『そら事前に昨年の収支報告なんかはしとるからな。そっちで誤り、虚偽なんかがないかの調査はしとるやろ。特にあの鉱山は王国の最重要施設の一つや。念入りに調査するわな。アニエスらもそれがわかっとるから下手な事はせんし出来んわ』


 ああ、うん、そうね。今日の会議での報告はいわば詳細を知らない他家の貴族に対しての報告の意味が大きいからな。


 殆どの事は事前に陛下や宰相に報告が行ってるから、事前に精査した内容を信じるならベルムバッハ伯爵らの報告…いや告発は嘘になるわな。


「――というわけで。このノワール侯爵家の利益、収入を搾取してる云々は偽造。或いは言いがかりですな」


「何か弁明はあるかベルムバッハ伯爵」


「ぐっ…」


「まだ引き下がらんか。ま、このノワール侯爵の尻を揉んでる写真なんかは事実なんだろうが…むしろよく撮れたな、こんな写真」


「全くですな。どうやって撮ったのかを追及されれば困るのはベルムバッハ伯爵なのではないか?」


「い、いえ…それは売られていた物で…」


 売られてたっておい。誰だそんな写真を売ってる奴は。探し出してとっちめて――


『フランやろ。前科あるやん』


 ああ…そう言えばフランは隠し撮りで小遣い稼ぎしてたな。それが流れてベルムバッハ伯爵らの手に渡り利用されたと。


 うん、とっちめよう。悶絶擽り地獄の刑だ。


「もう言いたい事は無いかベルムバッハ伯爵」


「うぐ…」


「無いようだな。他の者もないか」


「「「「………」」」」


「ならば退席せよ。捏造の証拠で同じ王国貴族を陥れようとした罪は重い。追手沙汰を出す。屋敷に戻り――うん?」


「う、うあ…」「ぐぅ、ぐが…」「う、うぅ…」「うあっ…」「うううあああ…」


 …?なんか様子がかしいな。メーティス。


『はいな。ん~…なんやろ。何かがベルムバッハ伯爵らに干渉しとるな。魔力…とはちゃうな』


 魔力以外の何かが彼女達に干渉している?この世界で魔力以外の力…ギフトか?それとも…


「おい、どうした」


「…陛下。御下がりを。レーンベルク団長!」


「はっ!」


 様子のおかしいベルムバッハ伯爵らを見て警戒を強める宰相。会議場を警護していた白薔薇騎士団員も突入してくる。


 が、具体的にはまだ何もしてないのでベルムバッハ伯爵らを取り囲むにとどめている。


「…おい、聞こえるかベルムバッハ――」


「うるせぇぇぇ!良いからノワール侯爵をよこせぇぇぇ!」「お前らだけずるいんだよぉぉぉ!!」「私だって、私だってぇぇぇぇ!」「私だって結婚したいんだよぉぉぉ!」「なのに遠ざけやがってぇぇぇ!お茶会くらいいいだろがよぉぉぉ!」


 お、おう?突然の魂の叫びだな。それがもう少しまともな様子であったなら心に響いたかもしれんが…そんな異常な様子じゃドン引きするだけだわ。


「…医療系の宮廷魔導士を呼べ!解毒効果のある魔法薬も用意しろ!」


 なんせ眼から鼻から耳から血が噴き出してますから。どんだけ頭お花畑な人間が見ても異常だとわかるわ。


 身体にまで影響する何か…これはもしや呪いか?


「レーンベルク団長!白薔薇騎士団はベルムバッハ伯爵らを無力化!イエローレイダー団長!黄薔薇騎士団はこの場に居る者を護れ!他の団長は団員を呼んで王城内に怪しい人間が居ないか探せ!」


「「「「「はっ!」」」」」


「どちらも可能な限り殺すな!色々聞き出す必要がある!」


 おっと、無力化ならお任せを。


「あ、おいジュン!」


「ノワール侯爵!?危険だ下がれ!」


 そうもいかんでしょうよ。彼女達が誰に何をされたのかわからんが、その目的は俺だろうし。


 なら俺が始末をつけるべきでしょ。ソフィアさん達の腕前を疑うわけじゃないが怪我をさせるか死なせたりしないか不安だし。


「う、うぅ…ノワール侯爵ぅぅぅ…」「わた、私はぁぁぁ…」「あな、あなたを…」


「…言いたい事は後で聞きますよ。今は眠ってください」


 問答無用で魔法で眠らせ…寝ないな。


『腐っても貴族やからなぁ。普段からそういう状態異常に対する耐性持ちの装備をしとるんやろ。それだけやったら問答無用で行けたけど今はこの状態やからなぁ』


 なるほど。ならばちょっち本気出す。


「ノワール侯爵――」「わたし――」「お慕い――」


「お、おお?気絶したのか?」


「眠ったようですな。流石ですなノワール侯爵」


 ふっ…耐性装備があろうが異常状態だろうがなんだろうが。


 俺が本気出せば軽いもんよ!


 これはこれで俺Tueeeeと言えなくもなし!


「よし、ついでだノワール侯爵。こいつらの身に何があったか調べてみよ」


「へ、陛下!そんな危険な事をジュン君にさせるわけには!」


「そ、そうです!ノワール侯ではなく代わりに私が!」


 いや危険は無いと思いますがね。むしろ俺がやるのが一番安全で確実だとは思う。


 しかし問題はそこじゃなくて。


「良いんですか。女性の身体を本人の許可無く」


「…?ああ、お前は女として育てられたんだったな…問題無い。好きなように調べろ。全裸にしようが文句は言わせん。何も言わんだろうがな」


 ええ…そりゃ俺が医者なら文句は言わないだろうし自然だろうけどさぁ。


『ええから早う調べようや。大義名分なら女王の許可があるしマスターにならこいつらも何も言わんて。むしろ大喜びするやろ』


 なんでだよ、そんなわけ……ある世界だったわ。


『そういう世界や。ま、実際はわいが調べるわけやけど。折角やから全裸にする?』


 …しません。で、どこをどう調べればいい?


『せやなぁ…取り合えず見える範囲で身体に異常が無いか見とき。いきなり本丸に行ってもいいんやけど、変に疑われるのも嫌やろ』


 うん?その言い方だと原因はもうわかってるのか?


『まぁな。デウス・エクス・マキナで軽くスキャンしてみたけど全員身体の何処かに変なもんがあるわ。それが原因やろ。それがどんなもんで、どんな力が働いてああなったんかはわからんけどな』


 …変なもん?何かがとり憑いてるとでも?


『形あるもんとは限らんけどな。ま、ええから早う調べ。役得や思って好きなだけ弄りいや』


 そういう外道な方へ誘導すんのやめい。


 取り合えず触れても怒られないであろう腕から調べて行くか………でもとりあえず。


「ごめんなさい。調べさせてもらいます」


「…おい、レーンベルク。もしかしてノワール侯爵はまだ童貞なのか」


「なっ!ななな、何を言うのです陛下!」


「いや、だってお前…いくら女として育てられたからってああまでなるか?童貞じゃなきゃ説明つかんだろう」


「そう言えばエロース様の使徒は奥手らしいと教皇猊下も仰っていましたな」


「そ!そそ、そんな事はありません!ジュン君は…そりゃーもう!夜はケダモノのように!」


「はいそこ!黙ってなさい!」


 全くもう…取り合えず腕に異常は無し。脚も…無し。顔、首も無し。


 後は…


『脱がせるしかないな。ほれほれ』


 …煽るな。もういいから本命は何処か言え。


『ええ~?しゃあないなぁ。その女…ベルムバッハ伯爵は胸にある筈やで。何かがな』


 …どっちにしろかい!


「本当にごめんなさい。決してスケベ心は無いんです」


「…それはそれでベルムバッハらは傷付く言葉だと思うぞ」


「これは少々問題かもしれませんな。無事に子を残せるのか不安になりますな」


 余計な御世話じゃい!…ああ、もう!ベルムバッハ伯爵も御多分に漏れず美人なんだよなぁもう!ええ乳してはりまんな!Eカップはありまんなべらぼうめい!


『なんだかんだ楽しそうで何よりやで。それよりほら、出て来たで』


 誰が楽しそうに…何だ、これ。


「なんだ、それは」


「妙なタトゥー…いや痣ですかな」


「人の顔のように見えますが…」


 ベルムバッハ伯爵の胸には青い痣…厭らしく笑った人の顔のように見える痣が浮かんでいた。

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[一言] 魔力でなきゃ神力かと思ったが シャーマンあたりの呪力も微レ存?
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