表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/385

第25話 女騎士でした

活動報告に登場人物紹介を載せました。

『ほな始めるでぇ』


 おうよ!


『ほな、これが正しい剣の振り方や!』


 神子との決闘から数ヵ月。もうすぐ八歳になるという時期の早朝…まだ完全に陽が上る前。


 俺は孤児院の庭で素振りをしていた。


 正確には俺の身体を一時的に操作させ、正しい剣の扱い方を教わっているのだ。


 なんでもデウス・エクス・マキナに武神の剣技のモーションデータが入っていたとかなんとか…もはやなんでもアリになってきたな、デウス・エクス・マキナ。


『突きはこう!払いはこう!って、ちゃんと見てるかマスター!』


 お、おう。大丈夫だ。


『ほんまぁ?ほんなら今までの一連の動作、やってみ』


 言われて身体の操作…支配権が戻ったので素振りを開始する。


 前世ではノリで買った修学旅行の御土産の木刀を振り回したくらいで、ちゃんとした素振りをするのは初めてだが…なんとか形になってるか?


『ん~~いまいちやな。まぁ初めてやねんから、しゃあないねんけど。具体的に言うとやな———』


「悪くないわ。でも最初は良かったけど今は軸がブレ始めてる。下半身が安定してない証拠よ。もっと走り込みをしなさい」


「え?」


『んあ?誰や、わいのセリフを獲ったんわ』


 声がした方を見ると、孤児院の門の外に十四、五歳の女の子が一人。


 動きやすそうな服装にタオル、汗をかいてる所を見るとランニングの途中か何からしい。どうやらそこで俺の素振りを見学してたようだ。


「でも、見た事のない剣技…我流かしら?」


「え?あ、はぁ…まぁ…そうですね?」


 武神の真似とか言っても通じないしなぁ…我流で通すしかなさそ。


「そう…此処は確か孤児院ね。孤児院の子供なら仕方ないか…でも、ちゃんとした指導をしてくれる人を見つけるのを御薦めするわ。それじゃあね」


 と言って、女の子は走って行った。


 ちゃんとした指導をしてくれる人…一応お願いはしてみたのだが。


 今までも体力トレーニング等はこっそりやっていたのだ。しかし、本格的な訓練が出来ないままではもどかしい。


 そこでアム達が将来は冒険者になるっと発言したのに便乗。俺も冒険者になると宣言したのだ。


 それに対し、俺が男だと知ってる院長先生、ジェーン先生、ピオラは反対。


 冒険者になりたいと知っていたクリスチーナと、自分達は良くて何故ジュンはダメなのかと主張するアム達は賛成。


 俺が男だと話せない院長先生達は上手い言い訳が見つからず、強引に押し通すわけにも行かず。


 結局は保留、でも訓練はやってもいいと許可を得た。


 これにより大っぴらに訓練する事が可能になったのだ。それでもこんな早朝にやってるのは今までの遅れを取り戻す為と、昼はアム達も参加するので結局は自分の時間が削られる為だ。


 まぁ、それでも以前よりはかなりの時間が使えるのだが。


 そして剣の指導をカタリナの護衛騎士ゼフラさんに御願いしてみたのだが…最近、ある噂が流れており、それに関連して忙しく噂が真実なら更に忙しくなるので時間が取れそうにないらしい。


 丁重に断られてしまったので、メーティスと相談した結果、メーティスに身体を操作させて学ぶ、という方式をとったわけだ。


 そして翌朝。昨日と同じ時間に剣を振っていると…


「うん。昨日より良くなっているわ。飲み込みが早いのね」


 昨日の女の子がまたそこにいた。どうやらまた見学していたらしい。


「でも、まだ軸がブレているわ。まだ一日だし、当然だけど…走り込みはどれくらいしているの?」


「え?ええと…大体十キロくらい、です」


「足りないわ。毎日、その倍は走りなさい。それじゃあね」


 いきなり倍走れと来た。七歳の子供に毎日二十キロ…十キロでも相当頑張ってると思ったのだが。


『まぁ、マスターの場合、筋肉のつきすぎで成長が阻害されるとか無いし。鍛えれば鍛える程早く強くなるんわ間違いないで?』


 そうなのか。じゃ、まぁ…折角のアドバイスだし言われた通りにしてみますか。


 そんな風に毎朝訓練中に一声かけて行く女の子。日中は会う事も無かったのだが…クリスチーナと買い出しに来たある日。


「あら?奇遇ね」


「あ、どうも…こんにちは」


 街中でばったりと出会った。女の子は朝に見る姿とは違い、鎧姿に帯剣…どうやら彼女は騎士だったらしい。


 眼は大きく、長いピンクブロンドの髪を編み、白い鎧に身を包んだ凛々しい立ち姿の女性。


 朝のランニング時の彼女とは違う、物語に出て来そうな雰囲気を持つ美人さんだ。


「ジュン、知り合いかい?」


「あ、うん。この人は前に話した…ええと…」


「ああ。そういえば自己紹介をしてなかったわね。私はソフィア・サリー・レーンベルク。まだなったばかりだけど、一応騎士よ。よろしくね」


「あ、はい。私はジュンです。こっちはクリスチーナ」


「…どうも」


 ミドルネームに家名…どうやら彼女は貴族だったらしい。無礼な態度をとっていたわけじゃないが、これからは改めるべきだろうか?


 そんな事を考えていると…


「買い出し?もう帰るところかしら?」


「え?あ、はい」


「重そうね。貸しなさい。持ってあげる」


「え、いや…」


「結構です。ジュン、行こう」


 なんだかクリスチーナの態度が冷たいというかそっけないというか。貴族が嫌い?でもカタリナには普通…いや、カタリナはまだ貴族だと確定したわけじゃないか?


「遠慮しないで。ほら、行きましょう」


「あ、どうも…ありがとうございます」


「……」


 強引に俺とクリスチーナから受け取ったソフィアさんは孤児院に向かって歩き始めた。その後ろ姿をクリスチーナは不満そうに見ているが、直ぐに諦めたのか歩き始めた。何故か俺の手を握って。


「あら、ジュン君は冒険者になりたいの?騎士じゃなくて?」


「孤児院の子供が騎士になんてなれませんよ」


「そんな事ないわ。貴族に気に入られて騎士見習いとして働いて騎士になった、なんて例が過去にあった筈よ。なんだったらレーンベルク家で雇われる?王国に仕える騎士じゃなく、レーンベルク家に仕える騎士になるけれど。これでも子爵家なのよ?」


「……」


 どうしてか、ソフィアさんは俺を高く評価してるらしい。出会ったばかりの孤児院の子供を雇おうなんて。


 それを聞いてか、クリスチーナは険しい顔になってるし。


「…ありがとうございます。でも、やっぱり私は冒険者になりたいので」


「そう?残念ね…気が変わったら言ってね」


「……」


 俺が断ったのを聞いてクリスチーナの表情が戻った。俺が孤児院から出て行くと思ったのだろうか。


「着いたよ、ジュン。さぁ早く入ろう。荷物、ありがとうございました!」


「あ、うん。ソフィアさん、それじゃ。ありがとうございました」


「あ、ちょっと待って。ジュン君は剣の指導をしてくれる人、いないのよね?私がしてあげましょうか?」


「はい?」


「…はぁ!?」


 何故か俺よりクリスチーナの方が反応大きいが…剣、教えてくれるの?

ブックマーク、評価、いいねして頂いた方々、ありがとうございます。


とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ