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第215話 まだありました

「ノワール侯爵様?どうかされましたか?」


 どないもこないも!それ危険物ってわかってんの?!


「ちょっとそれ貸してください!」


「あっ!いけません!」


「それはジェノバ曰く危険な物!って、消えた?」


「…収納スキルですか。スキルで隔離したという事ですか、ノワール侯爵」


 取り合えず有無を言わさず奪取&隔離!これで取り合えず爆死の心配は無くなった筈だ。


「収納スキル…そんな物まで御持ちなんて!流石ノワール侯爵様!女神様に愛されてますね!」


「自分が感じていた命の危険は無くなりました。ありがとうございます、ノワール侯爵様」


「しかもその対応から察するにノワール侯爵は黒い玉の正体を知っているようですね。説明していただけますか」


「はい。実は――カクカクシカジカ。というわけで」


 俺はユウが指揮を執って闘技場と帝都を探して黒い玉を複数個発見。今も継続して探している事と玉は爆発物と予想される事。犯人はドライデンのアルカ派残党だと思われる事。全てを正直に話した。


 全てを聞き終わった三人の顔は同じ表情。不愉快さで溢れていた。


「アルカ派の残党…私はてっきり…私とした事がその可能性は見落としていました」


「姉さんでも見抜けなかった事をメイドが…しかも子供が見抜いた?」


「何者なのですか、その子供は…」


 控え目に言って天才だとは思います、はい。頭の良さではユウに勝てる気がしない――って、それよりもだ。


「皇帝陛下、急ぎ対応を。具体的には――」


「わかっています。一般人が入れないような施設、そして帝城は騎士にやらせます。私は此処を離れられないしジェノバも同じ。だからカサンドラ。近衛騎士団団長と相談して上手くやって頂戴」


「ああ、わかったよ。ノワール侯爵様、失礼します!」


「あ、待ってください。今、メー…ブラックも調べています。少し待っていれば帝都内のどの辺りにあるかわかるかと」


「……どうやってです?」


「秘密です」


 探査魔法とデウス・エクス・マキナの合わせ技…だと言ってもわからんだろうし。正直に言う訳にもいかないしな。


「こちらは質問に答えていないのになんですが、私からも質問が。ジェノバ様が持っていた石はどこでどうやって見つけたのですか?」


「……えっと、姉さん?」


「構わないわ。既にノワール侯爵には協力をしてもらっているのだもの。それくらいの情報は開示しても問題無いわ」


「じゃあ…見つけた場所はこの闘技場の闘士控室。使われていないロッカーに隠すように置いてありました。何故、見つけられたのかは…自分のギフトです。自分は『虫の知らせ』と呼んでいます」


「虫の知らせ?」


 どういうギフトか詳しく聞くと。ジェノバ様は自身に命の危険が迫っている、命の危険がある状況、自分の命を狙っている何か。そう言ったモノが何となくわかるのだと、何かが教えてくれるのだと言う。


 その力は正確で、皇帝陛下が何処かへ移動する際には隣にいる事で命の危険を遠ざけて来たのだと言う。


「姉さんに命の危険が迫っていれば傍に居る自分の命の危険も迫っているのと同義。それをギフトが教えてくれるのです」


「具体例を挙げると魔獣の襲撃を避けれたり橋の崩落に巻き込まれずに済んだり…本当に助かってます」


 命の危険にのみ特化して知らせてくれるギフトって事か…それは中々だけど、それでよくあの玉を持ってたな。すぐにポイってしなきゃダメでしょ。


「それなんですが…あの玉は今すぐに爆発するモノではなさそうすよ。命の危険は迫っているモノの今すぐとは感じませんでした。時間的猶予はあったと筈です」


 そこまで正確にわかるのか…なかなか便利なギフトだな。


 俺は簡単に死なないらしいから、俺が持ってても宝の持ち腐れになるギフトだが。


「しかし、です。そうなると、あの玉は…」


「特定の時刻に一斉に爆発…或いは時間差で爆発して行く…帝都中にバラまかれていたという事は逃走時の事を考えているんでしょうね。そうはさせない…カサンドラ」


「ああ、わかってる。そ、それでノワール侯爵様。ブラックは今何処に…あふぅ」


「…どうかしました?」


「い、いえ…命の危険が無くなったせいでしょうか…ノワール侯爵様を見ているとドキドキが増して…素顔は見えないのに…」


「実は自分も…何故…」


「し、しっかりしなさい、貴女達…あふん」


 …またしてもメーティスが俺の中に居ない弊害が。


 でもユウ達は平気そうだったのにな。


「…兎に角、ブラックの所に行きましょう。さぁ」


「はひぃ…あ、なんかいい匂いが…」


「カサンドラ姉さん、我慢しないと…」


「我慢?…我慢する必要があるのか…もういいんじゃない?もう我慢しなくていいんじゃない?もう押し倒しちゃっていいんじゃない?」


「何にも良くないので行きますよー」


 現状でフェロモンを抑える方法が無いかメーティスと相談しよう、早急に。


 さっきの場所にメーティスは…ああ、居た。でもアイは居ないな。試合に行ったか。


「ブラック、探査は終ったか?」


「ああ、マスター。御帰り。終わってるで、ほい」


「ご苦労さん…何見てるんだ?」


「勿論試合や。今、優勢な方に注目や」


 うん…?優勢な方は大剣使いで不利な方は戦斧だな。特におかしな様子も無いが…知人でも無いし。そいやアイの試合はどうなった?


「アイの試合は終ったで。アイの圧勝でな。もうすぐ戻って来るんちゃうか」


「そうか。それであの大剣使いがどうした…ああ、すみません、カサンドラ様。この地図の印が付いてる場所を探してください」


「は、はい!任せてください!…あふん」


 地図を持って去るカサンドラ様を見送ってから改めて大剣使いを見る…やはり別に注目すべき要素は見当たらな――あ。


「ギャアアアアアア!??」


「……」


 …腕を切り落としやがった。無感情に。罪悪感も優越感も感じさせない無表情で。


『これはお子様にはショッキングなシーンとなってしまいました!エッバ選手は戦闘不能!グレーテ選手の勝利です!治療班はエッバ選手の治療を!』


 自分の勝利が確定しても無表情。グレーテという名前の大剣使い…あの無表情と無感情は気になるが、何故メーティスが気に掛ける?


「アイツ…グレーテな。アイツの予選試合、偶々見てたんや。わいの試合の一つ前やったから。予選の時に勝利する度に大喜びしてはしゃいどったのに、今はえらい違いやと思わん?」


 つまり…予選の時とは別人だと言いたいのか。いや、それだけだと別人と断定するには弱いだろう。何せ友人関係でも無いんだし。


「更に言えば予選の時とは動きが全然違う。予選の時はパワーで押すって戦いやったけど…今はテクニックで翻弄するって戦いや、まるで真逆やろ?」


 …ああ、それはもう…高確率で別人だな。要するに誰かと入れ替わってると。


 これもアルカ派残党の仕業なら…色々と仕掛けてくれるじゃないか。

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