第214話 危険物でした
「てなわけで。これが発見したもんだよ」
「何かわかるぅ?」
…急に呼び出すから何事かと思えば。
どうも、ユウを中心に闘技場や帝都内を探索し、怪しい奴や物が無いか探していたらしい。
帝都の冒険者まで雇って…まぁ、それは良いとして、だ。
アム達が集めた物は…なんだろうな、玉?
占いに使う水晶玉のような…透明じゃなく黒っぽいけど。
小玉スイカくらいの大きさの玉が複数個。
透明に近い物からほぼ真っ黒な物まで。色合いに違いはあれど同一の物に思える。
「誰にもわからないのか?クリスチーナは?」
「私にもわからない…魔石に似てるとは思ったけど」
「魔石はこんな綺麗な丸じゃない」
ファウの言う通り、魔石ではないな。しかし、球体の中心に有るのは魔石に見える…それにさっきから気になってたけど、これ、魔力を集めてないか?
「…ユウは察しが付いたんじゃないか?」
「あ、お兄ちゃんも同じ考え?」
…闘技場と帝都のあちこちにあったんだろう?隠すように。
しかし、重要人物や重要施設の近くなんかに。
で、これは今も魔力を集めていて徐々に黒っぽくなっている…イヤ~ンな想像しが出来んわ。
「…これ爆弾じゃね?」
「私もそう思う」
なら何でそんなに落ち着いてるんだよ…見た感じ今直ぐに爆発はしなさそうだけどさ。
「ばくだん…とは何だ、ジュン」
「爆弾とは…ん〜…物にもよるけど、火の上級魔法並の威力を出せる使い捨ての道具…みたいな?」
ダイナマイトとかならそれぐらいだと思うんだが…こいつはどうなんだろ。
実際に爆発させるわけには行かないしなぁ。
「それって…この部屋が吹っ飛ぶくらい?」
「これ全部が一斉に爆発したら闘技場が半分は吹き飛ぶかもね」
此処に集まってる数は…十五個か。
仮にダイナマイト並の威力だと仮定して十五個が一斉に爆発したら…闘技場が半壊くらいは…するんじゃないかなぁ。
「それじゃ皆死んじゃうじゃない!やだぁ!私はまだ死にたくなーい!」
「落ち着いてよ、ジェーン先生」
俺が居なきゃ危なかったけど。まぁジェーン先生の反応が普通だよなぁ。
「これは俺が処分するから安心して。でも問題は…」
「全部で何個あるのか、これで全てなのか。わからないって事だよね、お兄ちゃん」
だな。
これを用意したのがアルカ派の残党だとして…目的はエスカロンを爆殺する事だろう。
帝都にも置いたのは混乱に乗じて逃走しやすくするため。巻き添えで何人死のうが関係無いと考えて。
…反吐が出る。
「つまり本命は貴賓席の近くに有ると思うんだけど…それは見つけた?」
「あぁ、それだ。その一番黒いやつ」
「貴賓席の真下、通路にあるゴミ箱に入ってたよぉ」
…コレか。確かに一番魔力が溜まってるし、他に比べて少し大きいかも。
「そんな事後回しにして!それを早くなんとかしてよ!」
「ああ、はいはい。はい、おしまい」
「…え?何処にやったの?」
「…そうか、収納スキルだね」
「収納スキルで隔離すれば爆発しても外に影響は無い、か」
「流石はジュン様ですわ!」
正確にはデウス・エクス・マキナの空間収納だが。ちゃんと私物とは別の空間に隔離してあるので問題が無いのは同じだ。
で、残りは何個で何処にあるのかわからないという問題だが…
「取り敢えず、防御結界を張っておく。ちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしないから。安心して」
「そ、そう…ふぅ~」
後は貴賓席や他の使用人用の部屋にも結界を張って…いや、メーティスに言って探させるか。
「で…ユウが調べさせた場所からは全て発見して、怪しい人物は居なかったんだな?」
「うん。私が考える限りの、私達が行ける場所のは、ね。冒険者には引き続き帝都中を探してもらってる」
…一般人が立ち入り出来ないような場所なんかは調べられて無いって事か。
ジェノバ様を通して皇帝陛下に進言、騎士達に探してもらうしかないな。
「じゃ、後は任せてくれ。皇帝陛下に伝えて探してもらうから」
「うん。お願いね、お兄ちゃん」
「ああ。…皆、良くやってくれた。ありがとう」
「う、うん…えへへ」
「ま、まぁ、これくらい大した事ねぇよ!」
「御礼は身体で払ってくれればいいわよ〜」
「ジェーン先生は何もしてないよねぇ…」
「でも同意」
同意すんじゃない。
さて…俺の試合はまだまだ後だけどアイの試合は終わったか?
「あ、お帰りジュン」
「マスター、お帰り」
…君ら、すっかり仲良しか。
二人で楽しく談笑してたみたいだな。
メーティスはアイをライバル視してなかったか?
「なんや?マスター」
「なんでも。アイの試合は終わったか?ジェノバ様は?」
「ウチの試合はまだ。もうすぐだけどね」
「ジェノバ…様はどっか行ったで。なんか険しい顔してたけど」
…こっちでも何かあったのか?ジェノバ様から皇帝陛下に伝えて貰おうと思ったが…仕方ない。直接行くか。
「ところでそっちはなんの話やったん?」
「あぁ…カクカクシカジカ」
ユウから聞いた話を二人にも説明。
話を聞いた二人の反応は怒りの声だ。
「何それ!そんなの無差別テロじゃん!」
「ほんまやで!マスター、その爆弾貸して!わいが探したる!」
「お、おう」
メーティスがデウス・エクス・マキナを使って探せばすぐに見つかるだろう。
希少な薬草だってすぐに見つけられる能力だからな。現物が有ればデータは十分に揃ってるし。
皇帝陛下に伝える必要は無くなるか――
「よっしゃ!ほな、ちょっくら行って来るわ!わいの試合までには戻って来るから!」
「…いや待て。お前は俺から余り離れられないんだろ。探しに行けるのか?」
「あ」
…何だろ。マテリアルボディを使用中はなんかヌケてるな。
「…メーティスは地図に爆弾の在処を記しといてくれ。俺は皇帝陛下に伝えて来る」
「了解や…」
「ウチは…試合が近いからいけない。ごめんね」
別に謝る事は無いから気にすんな。
さて、皇帝陛下は…貴賓席だろうな。
あ、騎士さん、此処通っていいスか?あざーす。
「――と思う?」「――けれど危険な物には…」「――言うなら…」
…誰か貴賓室の前で話してるな。
アレは…
「あら?ノワール侯爵」
「ノワール侯爵様!どうかされましたか!」
「もしかして…自分を探しに?嬉しいです」
それよりも…ジェノバ様が持ってる物。例の爆弾ですやん。しかもユウ達が見つけた物よりも真っ黒。
いつ爆発してもおかしく無さそう…ヤバヤバですやん。




