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第210話 捕まえようとしました

「すぅ…すぅ…」「くぅ…くぅ…」「ムニャ…」


 ……父親になった気分。


 こうして見ると皇族の子供も平民の子供も変わらないな。


 寝顔は可愛らしいのはどちらも同じだ。


『手ぇだしたらあかんでマスター』


 出すか!俺はロリコンでもショタコンでもない!


 …あの後、何とかメーティス…いやブラックは俺だって身内なんだと納得してもらい。騎士達を手伝い、治療した事もあって見逃してもらった。


 ジェノバ様が三回戦に出てる間にアイには簡単に説明。


 途中で切り上げたので、今度ユウも交えて最後まで話す予定だ。


 取り敢えず、ブラックは勇者と関係は無く手掛かりも持っていない事はわかってもらえたと思う。


 三回戦は全員突破。明日の決勝トーナメントには身内は全員出る事に。


 で、予選突破を晩餐会で祝福された後、エジェオ殿下にドロテア様、コンチェッタ様に懐かれて今夜は一緒に寝る事になったのだ。どういうわけか。


『マスターは子供にも好かれるからなぁ、昔から。女たらしやのうて人誑しやな。いや誑し込むんは人間に限ってへんか?』


 …そんな事より。偵察機で何か見つけたか?異常は無いか?


『無いで。エスカロンはやたら厳重に警戒しとるから部屋の外から見張る事しか出来てへんけど。騎士が正気を失った件とフィーアレーンの間者の件は別口みたいやで』


 別口…フィーアレーン大公国の仕業では無いって事か。


 偵察機は今、身内の安全確保、エルケの周辺監視、エスカロンの監視に使ってる。


 正気を奪う手段…メーティスの考えでは精神操作系の何からしいが、それが身内に向けられるのは避けたい。


 犯人の目的が不明な以上、警戒は厳重にしないと。


 ソフィアさんとイエローレイダー団長とも情報共有はしたし。白薔薇騎士団と黄薔薇騎士団も警戒してくれるだろう。


 警戒は万全…とは言い難いよな。敵の精神操作を防ぐにはどうすれば…


『マスターが精神魔法でプロテクトをかければいけるで』


 …そんな魔法あったっけ。


『あるで。でも、これは昔は拷問用の魔法として使われとったからって事でマスターが敬遠したやん』


 ……ああ。拷問中、精神が壊れて発狂するのを防ぐ為に使われてたってやつな。


 使う機会が無くてポックリ忘れてたわ。


 それじゃ、善は急げだ。今から全員にかけに――


『こんな時間にかいな。大半が寝取るやろし、起きとっても部屋に引きずり込まれて押し倒されるんがオチやで』


 ……こっそりと侵入して――


『寝てたら気付かれんやろけど、起きとったら夜這いって思われるな。で、誤解を解いても結果は同じや』


 …………………………朝食時にするか。


『それがええ。ほな、明日もわいはマスターが起きる前に部屋から出とくから。おやすみん』


 …それはいいけど明日は騎士に捕まるようなドジ踏むなよ。今日みたいな事は勘弁だぞ、本当に。


『わ、わかっとるって!今日はほんま油断しただけやから!宰相にノせられてポロっと情報漏らしたりもせぇへんから!おやすみ!』


 ならいいけどな。おやすみ。



『――スター、マスター。起きてぇやマスター!』


 …んあ?もう朝…じゃないな。何かあったか?


『侵入者や。警備をかいくぐりつつ、この階に進んどる。宝物庫やアーティファクトの隠し部屋を目指してるわけやなさそうやから、狙いは人、誘拐か暗殺やな。可能性として高いんは――』


 この階に宿泊してるのはアインハルト王国からの招待客のみ。その中で狙われるとしたらアリーゼ陛下、王女のアイ。そして俺、か。


 てか、前にもあったな、似たようなパターンが。


『ゼニータ会長の屋敷の時の話やな。その時は三人やったけど今回は一人、単独犯みたいやで』


 なら迎え撃つ必要も無いな。こちらから出向いてサッサと捕まえよう。そして二度寝だ。


『せやな。わいもまだ眠いわ。寝不足はお肌の天敵やっちゅうのに、全く』


 …それ、お前に関係あんの?お前のマテリアルボディは不変なんじゃ…


『気分の問題や。ほら案内するから早う準備して』


 はいはい。寝間着は…着替える暇は無いか。剣だけでいいかな。


 …さて、何処から来る?


「…ノワール侯爵様?」


「どうかされましたか、こんな夜分に…剣?」


 廊下に出ると直ぐに警備の騎士に見つかった。勿論、帝国の騎士だ。


 しかし彼女達は侵入者に気が付いていないらしい。


 で、その侵入者は今、何処だ?


『マスターから見て左、曲がり角からこっちの様子伺っとるわ』


 …あそこか。気配は見つけた。此処まで見つからずに来ただけあって中々の手練れのようだ。


「あの…ノワール侯爵様?」


「あ、ああ、失礼。何故、起きたのかと言えばですね……そこに居るのはわかっている!出て来たらどうだ!」


「「え?」」


 漫画やアニメ見たいにこれで出て来てくれれば楽なんだけどな。現実はそうはいかない……こともないのな。


「ほ、本当に居た…」


「こ、こんな所まで侵入を許すなんて…他の奴らは何してるんだ!」


 出て来たのは全身黒づくめの、いかにも怪しい者でございと見た目で物言ってる輩。言うまでもないと思うが女だ。


 眼しか見えないので年の頃はわからないがかなり若い女に思える。


 そして無言で武器を…ナイフを構えた。どうやらやるつもりらしい。


「…御下がりください、ノワール侯爵様」


「此処は我々が」


「いえ、奴の狙いは俺のようですし。俺が相手しますよ」


 見つかったのに逃げに向かって来るという事はそうなんだろう。そして見つかった時点で誘拐も難しい。ならば目的は……俺の暗殺か。


 身体を狙われる事はあったが命を狙われた事はなかったな…こんな時だけど、ちょっと新鮮。


『何を呑気な…それよりアイツのナイフ。なんか塗ってるみたいやで。十中八九、毒物や。気ぃ付けるんやで』


 毒物か。如何にも暗殺者らしいな。


 で、掠り傷も致命傷になりかねないって事なら…俺から行……これは!?


「ノワール侯爵様!早く御下がりくだ……うっ!?」


「な、なん…身体が動かない!?」


 侵入者から俺と騎士二人に向かって何かが…これは糸か!糸が伸びている!夜で廊下の灯りは最低限だから気付くのが余計に遅れた!


「だが見えたなら斬るのは容易い!」


「うっ、く…う、動ける…」


「い、今のは一体…」


「…っ」


 毒物付きナイフではなくこの糸が本命か。


 糸で捕えて無力化しようってか。


「しかし糸か…面白いな、お前」


「……面白い?」


 糸を使う暗殺者とか、まるで必殺仕○人じゃねーか。中々に面白い。


 可能なら糸を操るその技術を学びたいくらいだ。


「というわけでお前は生け捕りにする。元々殺すつもりはなかったけど…な!」


「…うっ!?うぐっ…」


 剣の柄頭で暗殺者のみぞおちに一発。暗殺者は膝から崩れ落ちた。


 これで終わり…お?


「…タフだな。気絶してないのか…手加減しすぎたか?」


「……」


「まだ動けるのか…これ以上抵抗するつもりなら容赦は――え?」


「き、消えた!?」


「ま、まさか…伝説の転移魔法?!」


 いや…転移魔法なら消える瞬間に煙なんて出ない。今のは消えたと言うより…煙に変化した?


『それが正解やな。より正確に言うなら霧やな。霧になって逃げたみたいや。ただ短時間しか変化出来んみたいやな。今なら追いつけるけど、どないする?』


 …アイツの情報は可能な限り集めたか?


『勿論や。デウス・エクス・マキナにデータ登録済。次に会ったら素顔でもわかるで』


 ならいい。次に会う時までに逃げられないように手段を講じておこう。


 今日の所はこれで寝るとしよう…

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