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第202話 始まりました

 ついにこの時が来た。


『――です。長くなりましたが以上を持って闘技大会開催の挨拶とさせて頂きます」


 そう!闘技大会が始まったのだ!


『それでは此処からは私、宰相が代わって進行と実況を務めさせていただきます。では先ずは予選一回戦第一試合!選手はリングに登ってください!』


 早速俺の出番…では無く。俺は皇帝陛下の推薦枠からの出場なので一回戦はスルー。


 アイも同じく宰相の推薦枠での出場なので一回戦は無し。他にも推薦枠での出場選手が居て俺達を除いて八人居るそうだ。


 贅沢を言えばバトルロイヤルから参加したかったがそこまで我儘は言うまい。


 …ところで闘技大会の進行と実況を宰相がやんの?仕事を選ばない芸人みたいだな。


 因みに俺は正体を隠す必要があるので普段とは違う装いで他の選手に混じって一回戦を見学してる。


 ドミニーさんに急遽用意してもらった白い仮面にフード付きの白いマント。どうせなら武器も変えてと短剣二刀流で行くことにした。


 全身を隠してるので一見して男だとはバレないと思う。後は黙っていれば声で男だとバレる事も無い。


 で、アイが傍に居ると察しが良い連中にはバレかねないのでアイとは離れた場所に居る。


 大会が進んで勝ち残った選手が減って来れば多少話すくらいは問題無いだろうが。


 しかし、人がこんなにバレないように気を使っているというのに…何やってんだ、アイツは。


『決まったぁ!一回戦第二試合の勝者はアインハルト王国から来た謎のヒーロー!ブラック!ヒーローと自称する癖に先日は帝都を騒がせた怪しい人物!でも面白そうだから私の権限で今は見逃してあげましょう!面白そうだから!』


「ハハハ!アンタもおもろいな!わいは好きやで!そういうノリ!」


 …それで良いのか、お前達。


 先ずは宰相。帝都に現れて手配書まで配られた人物を面白そうだからと見逃していいのか。今はってとこに含みを感じるが。


 そしてメーティスよ…何故にお前が出場しとる?しかもマテリアルボディを出した上でパワードスーツを着てるだろ。


 前回とは明らかに違うボディラインしてるもの。デウス・エクス・マキナのパワードスーツと武神のモーションデータを駆使して戦うメーティスは圧倒的。拳のみで他選手を場外に落として行った。


 朝起きたらメモだけ残して俺の中から消えてるし。何をするつもりなのかと思えば闘技大会に出るとは。


 お前、ピオラに恨まれてるのわかってる?今頃お前に対して呪いの怨念を向けてるぞ。


 多分、あの禍々しい気を感じる辺りから。あと、俺に向かって決めポーズするな。


 何処で覚えたそのポーズ。某宇宙刑事みたいじゃねーか。


『さーお次は第三試合!私的に注目選手は――』


 一回戦は全て十人一組のバトルロイヤル。一回戦出場選手は約三千人。それが十分の一まで減って約三百。そこに推薦枠出場の十人が加わって予選二回戦目と三回戦目をして初日終了となる。


 二日目の決勝トーナンメントに進むのは九十人になる予定だ。


 しかし…あの宰相、多才だなぁ。


『避ける!避ける!避ける!何処まで避け切れ――あっーと!三人掛かりの攻撃を避け続けたミランダ選手が遂に落ちたー!そして始まる仲間割れ!ミランダ選手が落ちたのを切っ掛けに共闘は此処までだとばかりに三つ巴の戦いが始まったー!熱い!熱い戦いです!んん~!ファイアー!』


 どこぞの熱血実況アナウンサーみたいやん。


 武器も本物、魔法もアリの戦いだから見た目は派手で日本で言えばCGを駆使したファンタジー映画のようなバトルシーンが満載の試合だ。


 熱狂するのもわかるが…


「いけー!ブッ倒せー!」「殺せー!」「ブリター!お前に金貨十枚を賭けてんだー!損させるなよー!」「何やってんだー!そこで突っ込め!引いてんじゃねー!」


 戦ってるのも観客も女ばかりってのがなぁ…いや、チラホラと男の観客もいるにはいるが。


「…こ、怖っ…全然面白くない…恐怖しか感じない…」「ふあぁぁぁ…どうせなら全裸でやらんのか全裸で」「おい、招待客の中に居た女を連れて来れんのか。メイドくらいいただいてもかまわんだろ」


 怯えた眼で見てるか、つまらなさそうに見てるか、別の事考えてるかだな、男連中は。


 わかっていた事だが、帝国の男にも闘争本能なんてものは無いらしい。王国のクズ男連中と大差無さそうだ。


 だが、観客連中は問題無いんだ、問題は。柄が悪かろうがマナーが成って無かろうが試合に興味なかろうが。


 俺には関係無いし、そこはどうだっていい。


 問題は俺の近くに居る出場者達だ。


「ゴクリ…」「な、なんか、変だ…」「なんかアイツを見てると…」「ぬ、濡れて来ちゃう…」


 …俺のフェロモンをコントロールしてたメーティスが居ない今、俺のフェロモンは垂れ流しな訳で。


 自身のフェロモンのコントロールなんて出来る筈も無し。


 …俺が男だってバレてないから何もされてないが、このまま一ヵ所に留まり続けるのはマズいな。


 話しかけられる前に移動するか。ウロウロしてると目立つし不審がられるから嫌なんだが。


「あ、あ~…」「行っちゃった…」「残念…」「追いかける?」


 試合が始まる前は周りにガン飛ばし合って威圧してたのに急に乙女な反応すんな。


 二重人格の如き性格の違いに脳がバグらない?自分自身が。


『一回戦第三試合終了!勝者は帝国東部で活動するAランク冒険者マクダ!ギリギリではありましたが一回戦突破です!』


 おっと、三回戦目が終わったか。まぁ、まだまだ時間はある。いっそ一回戦が全て終わるまで何処かに隠れてるのもアリだな。


 そう、例えばああいう人気が無い、使われて無い部屋とか―――


「――仕込みはどうだ?」「万全さ。お前は確実に決勝トーナンメントに行ける」


 ……おやぁ?

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