第201話 見てました
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〜〜サーラ〜〜
「開けますよ…」
ジェノバが少し緊張した様子で扉を開ける…扉の先には金銀財宝…は無く。
古い書物や武具の類。
相当に古い品であるはずなのに何処か真新しい。どうやら状態保存の魔法がかけられているみたいね。
それは部屋自体にもかけられているらしい。執務室と違って埃っぽくない。
「武具に書物か…ちょっと金銀財宝を期待したんだけど」
「私もよ。以前は有ったのかもしれないけど、もう売り払ったか、通常の宝物庫に移したんでしょうね。歴代皇帝の誰かが」
「でも、この武具は全部一級品ですよ。魔法が込められた物もあります。売ればかなりの金額になりそうです」
それは重畳ね。今は財政は何とか立て直したから、売らないけど。
「姉さん姉さん。この武具、ノワール侯爵にプレゼントしたり…ダメ?」
「……」
喜びそうでは…あるわね。普通の男なら喜ばないけれどノワール侯爵は闘技大会に出たがるような変わり者。
古の武具なんか大喜びしそう。
「考えておくわ。でも、今はアーティファクトよ。それらしいのは無い?」
隠し部屋の大きさは…子供部屋くらいかしら。隠し部屋だから仕方ないけれど、あまり大きな部屋とは言えない。
これじゃ私のベッドを置くだけで精一杯―――
「姉さん、アレを」
「アレは…」
またユニコーンのレリーフね。また尻尾を押せばいいのかしらね……違うみたいね。
「じゃ、今度は何処……………口ね」
どうして妙な所ばかりに…いえ、別にいいのだけれど。
「おお……これがそうか?」
「…多分ね。ツヴァイドルフ家に伝わるアーティファクト…」
今度はレリーフ自体が動き、裏に隠されてた穴が現れた。
穴の中には台座に乗った丸いガラス玉のような物。そしてメモ書きのような物も。
ガラス玉の大きさは台座含めて小型犬くらいかしら。
「…ね、姉さん」
「ええ。先ずはメモ書きから読みわね……………これは…ヤバい代物ね」
「ヤ、ヤバい?どんな…まさか兵器なのか、これ」
兵器では無いわ。でもある意味では兵器よりもヤバい代物。
「…これはね、女神様に連絡を取る事が出来るアーティファクトよ」
「…………は?」
「ね、姉さん……今、なんて?」
「女神様に連絡を取る事出来るアーティファクトよ」
「「ええええええええ!?」」
…これはノワール侯爵には教えられないわね。私と結婚したら使う権利を与える…のは構わない。
でもアーティファクトの事を教えた後に結婚を断られたら……最悪、ノワール侯爵を殺さなければならなくなる。
「姉さん…それは今すぐに使えるのか?」
「それに女神様って…誰を指してるの?」
「ちょっと待ちなさい…」
今すぐに使う事は…可能ね。でも…
「このアーティファクトは使用回数に制限があるみたい合計で100回…そして後2回しか使えないみたい」
「うへ…たった2回…」
考え無しには使えないわね。でも、これで確定した事が一つ。
「母様と姉さんは此処に来てないわね。もし此処に来てたなら欲望のままに使い切ってるに違いないもの」
「あ〜うん。確かに」
「欲望に正直な二人でしたから…」
間違い無く後先考えずに使ってるわね。女神様に連絡して願いを叶えてもらうんだー!って、都合の良い事だけ考えて。
「それで…女神様とは?名前はわからないの?」
「女神様の名前は書いてないわ。でも、この台座に刻まれた紋章」
「…エロース教の聖印と同じ」
先ず間違いなく、女神エロース様に通じるんでしょうね。
従って…
「これはエロース教に対する強力な切り札になるわ。絶対に外部に漏らすわけにはいかないわよ」
「わ、わかった…」
「はい…」
エロース教だけじゃなく、大体の国に交渉材料として使える。
ちぃっ…あと2回しか使えないのは痛いわね。
「で、でもさ、姉さん。それ、本当にエロース様に通じるのか、わかんねーじゃん」
「確かに…正常に作動するかもわからないし、あと2回しか使えない以上、試すわけにも…」
「それはそうね。でも、それは交渉次第よ。交渉なら任せておきなさい」
ノワール侯爵と直接交渉も…無しではないけど、より効果的なのはアリーゼ陛下との交渉ね。
アリーゼ陛下からノワール侯爵に私達と結婚するように言ってもらえれば…うん、いけるはず。
…いえ、それよりもエロース様にどうすればノワール侯爵と結婚出来るか聞く方がいい…?
駄目ね、この場では答えは出せない…一度寝て頭をスッキリさせるべきね。
明日も早いし、闘技大会が始まる。今日はもう寝ましょ。
「これについてはまた後日に。今日はもう寝……ん?」
「どした、姉さん」
「何か気になる事でも?」
「あ、いえ…何でもないわ」
何かに見られてる気がしたけれど、気の所為ね。
アーティファクトは元に戻して…さ、戻ろ。
〜〜ジュン〜〜
「と、いうわけでや。マスターにはあんま意味の無いアーティファクトやったわ」
「ふーん…エロース様と連絡が取れるアーティファクトねぇ…」
メーティスに妖精型偵察機で探らせた結果。ツヴァイドルフ家に伝わるアーティファクトとはエロース様と連絡が取れる物だった。
しかし、その気になれば俺はエロース様と道具に頼らず会話出来るらしい。
今の今まで知らなかったが。
デウス・エクス・マキナにメールみたいなのを送って来る事もあるらしいし、確かに俺にはあまり意味がない。
「むしろマスターには一緒に保管されてた武具や書物の方が興味深いんちゃう?」
「だな。古代の武具とか興味が…っと、それより早く戻れ。誰かに見られたらヤバい」
今は与えられた部屋に一人だが部屋の外には警護の騎士が居るし隣部屋にはアム達やクリスチーナ、ユウ達も居る。
小声で話てはいるがカウラには聞こえるかもしれん。
「ええ〜…折角やし、エッチな事せんでええのん?」
「そのサイズでナニが出来るんだ…いいから早く」
「ふぇ〜い」
アーティファクトについては心配無用になった。
明日はお楽しみの闘技大会だし、早めに寝るとし―――
「やっほー!ジュン、起きてるー?起きてるわねー!じゃあ呑もう!」
「お母さん!やめて!」
…ジェーン先生が酒瓶片手にやって来た。しかも既に出来上がっとる。
メイド服も脱いで下着姿だし…とても三十代半ばに見えない若々しさっスね。
「呑みたいならアム達と呑めばいいじゃんか。俺じゃなくても――」
「アム達はもう倒したの!ユウは例外として、後はジュンだけなのー!」
倒したて。飲み比べでもしてたのか。しかし、ジェーン先生って酒豪だったのか。
酒好きなのは知ってたが。
「ほら!ちょっとくらいならいいでしょ!偶には先生の我儘に付き合いなさい!」
「…偶に、じゃないと思うけどなぁ。少しだけなら」
そして結局は。騒いでるのを聞きつけアニエスさんらも合流。俺を護る会の面子が集まって朝まで呑んだ。
俺はいくら呑んでも大丈夫な身体だから平気だが、他の面子は二日酔いで高価な薬を飲む羽目に。
ジェーン先生らの薬代は俺持ちだったのは言うまでも無いと思う。
起きたらユウとフラン以外はほぼ全裸で眼福だったので気分良く払いました、はい。




