第200話 発見しました
〜〜サーラ〜〜
「………モウイチドイッテクレル?」
「いや声ちっさ!隣で誰か寝てるのか?」
「精も根も尽き果ててる…何してるの?」
何って…あの馬鹿宰相を亡き者にしようと追いかけ回したのよ。
重い棍棒を振り回して、無駄に広い城内を走り回って…宰相を完全に見失ったと思って使用人に宰相を見なかったか聞いたら既にパーティー会場に戻って接客してると言われて…ガクッと来たわね。
で、今は使用人に運ばれて私室に居るわけで。もう少しで気を失うように眠るって寸前にカサンドラとジェノバが来た。
そして疲労困憊な私が目が覚めるくらいには気になる事を二人は言った。
ツヴァイドルフ家に伝わる…何?
「ツヴァイドルフニツタワル…」
「いやだから声ちっさ!おいジェノバ!なんとかしてくれ!これじゃ話が進まない!」
「なんとかって…仕方ないわね。これ、そこそこ高いのよ?」
ジェノバが胸から取り出したのは…魔法薬?
どうでもいいけど、なんてとこに仕舞ってるのよ。
「体力回復薬よ。精神的な疲労は消えないけれど、肉体が回復すれば多少は精神的にも楽になるでしょ」
それは有り難いわね。まだ寝るわけにはいかないみたいだし、これでなんとか…
「なんでそんなん持ってたの」
「…ノワール侯爵様が絶倫だった場合に備えて」
「………アタシも用意しとこ」
…私も用意しとこ。
フゥ…ようやくまともに会話出来るわね。
「ありがと。で?気になる事を言ったわね。ツヴァイドルフ家に伝わる何?」
「アーティファクト。ツヴァイドルフ家に伝わるアーティファクトについて、何か知ってる?」
「ミネルヴァは御祖母様から聞いたと言っていたわ」
おばあちゃん子だったものね、ミネルヴァは。
自分と同じ赤毛だった御祖母様によく懐いていて…御祖母様もそんなミネルヴァを可愛がってた。
御祖母様が亡くなって、ミネルヴァは引き籠もりのやる気なしに……今はそれはいいわ。
「私も知らないわね…全くの初耳よ」
「という事は…」
「手掛かりはミネルヴァの記憶だけって事…」
恐らく、母と姉も知らなかったのだろう。
知っていれば王国との戦争に使わない筈が無い。
「ミネルヴァは他になんて?保管場所については聞いているの?」
「いや、それが…」
「保管場所はユニコーンが知ってると…」
…ユニコーンが知ってる?
ユニコーン…ツヴァイドルフ家の紋章にも描かれてる、ツヴァイドルフ家と縁深い存在だけれど…
「城内にあるのは間違い無いと思うけど…」
「城内にユニコーンなんていないし…」
いえ、心当たりがあるわ。
城内でユニコーンと言えば、一箇所。あの場所しかない。
「行くわよ」
「え?今ので何かわかったの?」
「行くって、何処に?」
「…母の部屋。先代皇帝の執務室よ」
母を処刑して以来、誰も使用していない部屋。
必要な物は移したし、私も暫く入ってない。
歴代の皇帝は皆使っていた部屋だけれど…自分で処刑した母が使っていた部屋を使うのは避けたかった。
「ところでパーティーはどうなったかしら。無事に終わった?」
「ああ、うん。姉さんは居なかったけど、何とかね」
「妹達と宰相も居たので、何とか。特にガブリエラが頑張ってました」
「そう…ガブリエラが」
あの子も来年は十五歳。成人だものね。
きっと私に似て責任感のある真面目な子に―――
「あの子は将来、自分と同じ近衛騎士になりたいんだとか。よく剣は練習をしていますよ」
「そうなのか?ザビーネはアタシと同じ冒険者になりたいって言ってたな」
……騎士は良いとして冒険者はダメよ。カサンドラは例外中の例外なんだから。
決して嫉妬してるわけじゃないわ。
「着いたわ…」
「久しぶりに入るな、此処…」
「用がなければ入りたくない部屋でしたし…」
それは今も変わってないわね。出来る事ならずっと入りたくなかった。
「…灯りは…まだ使えるわね」
「ちょっとだけ埃っぽいな」
「掃除も偶にしかさせてないからね…あったわ、これよ」
「あ、ユニコーン…」
そう、ユニコーンのレリーフ。私がユニコーンと聞いて思い付くのはこれだけ。
これがハズれだったらあてが無くなるけれど…
「で。このユニコーンが何?」
「御祖母様はユニコーンが知ってると言った…これを信じるなら、このレリーフが教えてくれると?」
…知らないわよ。兎に角、調べてみるしかないでしょ。
「ユニコーンと言えば角。なら、この角が押せたり…しないわね」
「ならレリーフ全体を動かすとか」
「…ダメ、完全に固定されてる。押せないし、回せない。外せもしないわ」
…これはハズれかしらね。困ったわね…
「姉さん、角以外も押してみて」
「角以外…」
脚は…違う。鬣も…違う。胴はどう…いえダジャレが言いたいわけじゃなく…違う。
なら眼は…違う。
「後残ってるのは尻尾…あ、動いた」
「お、おぉ…」
「壁が動いて…地下に続く階段が…」
…正解したのは良いけれど。何故尻尾なの?そりゃ角よりはバレにくいかもしれないけれど。
「姉さん…行こう」
「自分が先頭を。無いと思うけど、一応は罠を警戒しないと」
階段は下へ下へと続いている。執務室は五階にあった。この階段は何処まで続くのかしら。
「アタシ、こんな仕掛けがあるなんて全然知らなかったよ」
「古い城だもの。他にもまだ隠し部屋や隠し通路があるかもしれないわね」
母と姉は知っていたのかしら。この隠し階段については知らなかったと思うけれど、他にもあるのなら、それは?
処刑前に話した内容にはあったかしら…あの時の私は…冷静ではなかったから。
正直、覚えてないわね…
「姉さん、着いたみたい」
「扉…だな」
鍵は…無いみたいね。
ツヴァイドルフ家に伝わるアーティファクト…一体どんなものかしら。




