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第174話 デジャヴでした

「――というわけで、この依頼を受けたわけで」


「…なるほどなぁ。ま、あたいらは構いやしないけどよ」


「うんうん。ジュンと一緒なら~」


「いつでもどこでも一緒」


 今日はアム達と一緒に依頼を受けてブルーリンク辺境伯領に向っている。


 未だに出ていたドライデンとの国境警備の臨時要員として参加する為だ。


 …本当なら遠慮したい依頼だったが長期間の依頼はコレだけだったので仕方なし、だ。


「でもよ、警備だと折角の新装備の出番が無いかもなぁ」


「だね~。ドミニーさん作の新装備!」


「道中の狩で試す」


 俺とアム達の装備は鉱山から仕入れたミスリル、アダマンタイト、オリハルコンで新調されている。


 俺の防具は以前と同じ、サーコートと軽鎧。そして新しい長剣が一本。サーコートの裏地にはタイラントバジリスクの皮が使われ毒と石化耐性のある物。鎧と剣にはミスリルとアダマンタイトの合金にオリハルコンが微量ながら混ぜられた物。


 この世界のオリハルコンはどんな金属にも混ぜる事が出来、ほんの少量でも混ぜるとオリハルコンの特性の一つ、自己修復能力が付与される。


 勿論、混ぜる量が多いほど能力は高まるのだが少量でも混ぜれば非常に、多少の刃こぼれ程度なら放って置けば治ってしまう。メンテナンス要らずの代物になるのだ。


 アム達の装備も同様で、装備だけなら俺達はSランク冒険者と遜色ない物となった。


 因みにアム達は昇格試験に無事合格。Bランク冒険者になった。


「てかよぉ。今から変装しなくていんじゃね?」


「違和感が凄いよね…」


「ジュンは黒髪に限る」


「ま、念の為ね、念の為」


 今は馬車で移動中だが金髪のカツラをかぶって変装中だ。


 何故、変装してるのかって言うと、お茶会やパーティーに参加せずに済むように長期依頼を受けたのに立ち寄った街なんかで晩餐会等に誘われたら同じだからだ。


 ブルーリンク辺境伯家には誘われるんじゃないかって?心配ご無用!先んじて送った手紙でパーティーやら何やらは開かないで欲しい、お忍びで行くので騒がないで欲しいと念押ししてある。


 だから大丈夫!きっと!


「だといいけどよ。どーせジュンの事だから何かやらかす気がすんだよなぁ」


「アム、フラグを建てるのはやめるんだ」


「フラグって何だよ…」


 大体、俺が何かやって騒ぎになった事なんて……そんなに無い筈だぞ。殆どは周りが勝手に騒いで巻き込まれたとかバカのやらかしに巻き込まれたとかの筈。


『トランス・パレードの時とか岩山消し飛ばした事でオーガ一族が住処を追われた事とかは?』


 ………………ごめんなさい。


『えらい間があったけど、素直に謝れるんがマスターの美点やな』


 くっ…上から目線…いや、アレは流石に悪い事したと思っとる。特にオーガの一族には。バレたら確実に子作りを要求されるから生涯秘密にするつもりだが。


「お?停まったぞ?」


「休憩ですか~?ドミニーさん」


「休憩っぽい。川がある」


 居たのかドミニーって?実は居たんだよ。ずっと御者をしてたんだ。俺が怖いからか遠慮してるのか。俺達と行動する時は必ずと言っていいくらいに御者をやってくれる。


 隣に座って食事が出来る程度には慣れてくれたのだが。


 因みにハティも来ては居るがリヴァは来ていない。長期間、国境警備…巡回してるか同じ場所で立ってるだけの依頼と聞いてリヴァは付いて来るのを止めた。自分に正直なやつである。ツンデレなのに。


「さてと昼食にすっか。ジュン、出してくれよ」


「あいよ」


 事前に用意しておいた料理を空間収納から出して食事に…うん?


「何してるんですかぁ~」


「釣り?」


「……」


「何だよ…もしかしてあたいらにもやれってか?」


 どうやらそうらしい。人数分の釣り竿が用意されて、無言で差し出して来る。この川、何か美味い魚でもいるのかね。


『ん~…魚もおるけど魔獣も居るで。魚型の魔獣が。もしかしたらそれが狙いとちゃうか』


 魚型の魔獣?いつぞやのポイズングローブみたいな魚か?


『さぁ。偵察機を飛ばせばわかるけども。魔法での探知やと魔獣とわかるだけやな』


 ふむ…ま、何にせよ釣ってみればわかるか。こうして勧めるという事は危険な魔獣ではないんだろうし。


「というわけで昼食は片手間で食べられるサンドウィッチだな」


「えぇ…しゃあねぇ、釣った魚を串焼きにすっか」


「わたし、フルーツサンドちょーだい」


「肉サンド」


「わふ」


 もうすぐ秋も終わりという時期だが川の傍のせいか少し肌寒い。快晴ではあるが風もあるし。


 風邪なんてひかない身体だが、焚火も用意しておくか。


「…長閑だなぁ」


「そだねぇ…」


「魚、釣れない」


「言うなよ…」


「……」


 かれこれ三十分。昼食は既に終えたがまだ誰も釣ってない。たった三十分なのでなんとも言えないが、エサをつついて来る様子も無いし釣れる気配が無い。


 釣れる気配は無いが…別の気配はあった。


「うぅ…」


「ん?どした、ハティ」


「怪しい音は聞こえないけど、何か来てる?」


 ハティも気が付いたらしい、対岸の岩の影からこちらの様子を伺う存在に。どうやら魔獣ではなく人間のようだ。ジっとしている為か川の流れのせいか、カウラの耳には捉えられないようだ。


「…対岸から視線を感じるな」


「対岸?って、おおう!来た来た!」


「やったあ!アム、慎重に!」


「逃がすべからず」


 あ、視線の主が何処か行ったな。ううん…デジャヴ。


『あったなぁ、似たような事が。今回は亜人やなさそうやけど。盗賊とかやったら面倒やし、偵察機飛ばしとく?』


 …そだな。一応は警戒しとくか。


「よっしゃ!釣れたって、魔獣かよ!」


「これ…食べれるの?」


「堅そう」


 アムが釣った魚は…黒い鱗に覆われた魚で額に白い石がある。これがドミニーさんの狙い?


「なぁ、ドミニーさん。これって食える――って、捌くのはええな!」


「あ、その額の石が狙いなんだ?」


 どうやらそうらしい。額の石だけドミニーさんが貰うようだ。対価にアムに金貨を渡していた。


 で、内臓と鱗を取った後、串焼きに。一口貰ったが意外に美味だった。

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