第162話 付いて来ました
「ねぇねぇ~目的地はまだ~?」
「うっせぇなぁ…もうすぐだよ」
「この森を越えた先だよぉ~」
「三度目の説明」
王都を出て一日。
馬車での移動にブーブー文句を垂れ流す妹ドラゴンことリヴァ。
彼女を適当にあしらいつつ、目的地である荒地の傍にある森にまで到着した。
「も~…こんな距離飛んで行けばあっという間なのに…ブツブツ」
「ま~だ言ってやがる。一部の種族と、一部の人間を除いて、人間は空を飛んだり出来ねぇの」
「…飛べないなんて、人間てほんと、不便な生き物ね」
そこで俺をチラチラ見るんじゃない。勘ぐられるだろ。
…俺が飛行魔法を使える事を知る人物は少ない。
ソフィアさんがあの時に居た人物には口止めをしたからだ。
勿論、リヴァにも口止めしている。ハティは喋れないからいいとして。
リヴァはポロッと言っちゃいそうで怖いんだよなぁ…今度念押ししておくか。
「で?この森を突っ切って行くの?馬車が通れそうにないけど」
「いや、どっかに整備された道があって、そこが森の入口だ」
「ドミニーさん 知ってるのかな」
「知ってるっぽい」
今、御者はドミニーさんがやってくれている。
現役冒険者の彼女は、恐らくはこの森に来た事があるのだろう。此処に来るまでも道に迷う事はなかった。
「おう、見えた見えた。あそこが森の入口…って、なんか出て来たな」
「馬車だね?」
森から出て来た馬車は…どうやら向こうも冒険者の一団みたいだな。
てか、御者をしてる女性には見覚えがある。
「ゲッ…アレは…うへぇ、めんどくせ」
「隠れてやりすごそ~」
「無駄。もうバレてる」
「わふぅ…」
どうやら俺が一番に見つかったらしい。
向こうの御者をしてる…コズミさんだっけ?彼女が笑顔でブンブンと手を振って何か叫んでる。
その叫び声で彼女達の仲間も俺に気付いたようだ。
「侯爵様ぁ!奇遇ですねぇって、ちょちょちょっ!止まっ、止まれっての!」
「………」
ドミニーさんは馬車を停めて近付いて来た…Aランク冒険者『ファミリー』だっけか。彼女達を無視して通り過ぎようとしたのだが…馬車の前に立ち塞がって停められてしまった。
これ、俺だから問題にしないけど、他の貴族だったらアウトだからね?そこら辺わかってます?
「い、いやぁ~奇遇ですねぇ、侯爵様!」「こんな所で会うなんて正に運命!」「きっと赤い糸で結ばれてるんですよ、私達!」「運命で結ばれた二人って素敵だと思いませんか!」「私達って素敵な夫婦になれると思いませんか!」
「……取り合えず、そんな捲し立てられても困ります。落ち着いて会話しましょう」
「てか、乗り込もうとすんじゃねえよ」
早口でギャアギャアと…言ってる事は大体わかったけど、会話する気ある?
「ああ!?うっせぇぞ、アム!」
「あたし達は侯爵様に話しかけて――」
「俺の仲間に喧嘩腰で話すような人を相手にするつもりはありません。退いてくださ――」
「「「「「すんませんでしたー!」」」」」
「……」
なんだろ、この人達…一瞬でVの字形に並んでジャンピング土下座してきましたけど。
息が合ってる…と言えば聞こえはいいけど、土下座に慣れ過ぎじゃありません?フォーメーション土下座なんて初めて見たぞ。
コンバインオッケーなの?それともVトゥギャザー?
「えへへ…と、所で侯爵様は何処へ行かれるんで?」
「…この森を越えた先にある荒地ですよ」
「え!?それは危険ですよ!」
「今、荒地には謎の魔獣が居るって噂なんですよ!」
「正体がわからない内は行かない方が良い!」
純粋に心配して言ってくれてるようだが…そう言う訳にも行かない。何せその謎の魔獣を調査・討伐しに来たのだから。
「あたいらはその魔獣の調査依頼を受けたんだよ。調査して、可能なら討伐ってな」
「はぁ?…その依頼のランクは?」
「A」
「はぁ!?お前らはCランクパーティーだろ!何でAランクの依頼を受けれるんだよ!」
「うっせぇなぁ…あんたらにゃ関係ねぇだろ」
「関係無いで引き下がれるかい!あんたらの無謀な挑戦に侯爵様を巻き込むんじゃないよ!」
「バーカ。そんなんでAランクの依頼なんて受けるかよ。今回はSランク冒険者と臨時パーティーを組んだからな。特別だよ」
「はぁ?Sランク冒険者ぁ~?…もしかして、そこのお嬢ちゃんが?」
「それってあーしの事?あーしは違うわよ。強いけど、冒険者じゃないわよ。人化したばっかだし」
「はぁ?なんだよ、人化って…それじゃもしかして侯爵様が?」
「……そんなわけないでしょう。俺はCランクになったばかりですよ」
どうでもいいけど、このコズミさん…「はぁ?」が口癖なのかな。見た感じ、この人がリーダーっぽいけど、あんまり交渉とか上手くなさそ。
「じゃあ一体誰がSランク…って、おいおいまさか…この御者がそうだってんじゃないだろうな」
「え?このドワーフが?」
「鎧着てるけど、臨時雇いの馬丁か何かかと…って、Sランク冒険者のドワーフってまさか…」
「まさか…『無口な鉄』?」
「………」
「正解だよ、小娘ども。誰が馬丁だって?あ?…って言ってるわよ」
「「「「「すんませんでしたー!」」」」」
おう…またしてもVの字型土下座フォーメーション。王国で一番の冒険者パーティーとか豪語してたくせに。漂う小者臭。やっぱり土下座に慣れてますよね。
「え、ええと…侯爵様達がAランクの依頼のを受けれたのはわかったし、目的もわかりました。でも、謎の魔獣が居るってとこに侯爵様が行くのは心配なんですよ」
「…だから、なんです?」
「あたしらも付いて行きます!」「邪魔にならないように後ろから付いて行きます!」「でもいざって時はお任せを!」「体張ります!命賭けます!」「捨て駒にしてもらってもいい!だから!」
「「「「「だから!貴方に届け!この想い!」」」」」
「「「「「………」」」」」
この人達、息はぴったりだなぁ…何、その両手でハート作って差し出すかのようなポーズ。事前に打ち合わせでもしてたの?
「…どうする?」
「…ジュンが決めたらいいんじゃね?あたいは許可したらいいと思うけどよ」
「断っても付いて来そうだもんねぇ」
「絶対付いて来る」
「あーしはどっちでも~」
「わふっ」
「………」
全員俺に一任ね。カウラやファウの言う通り、断っても付いて来るだろうなぁ…仕方ない。
「わかりました。ただし今回限り、アム達と喧嘩しない事を約束出来るなら離れて付いて来る分には何も言いませんよ」
「「「「「やったぁ!!わっかりましたぁ!ありがとうございます!」」」」」
「…御礼まで土下座で言わなくていいんですよ」
もはや癖になってません?そのフォーメーション土下座…




