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第150話 遂にやりました

「ひぃぃぃ!高い、高いですわ!死ぬ!死んじゃいますわぁ!」


「暴れたら危ないわよ、イーナ!あと、ここで漏らさないでよね!」


『落ちても助けないからね!………って、ちょっとあんた!漏らしそうなの!?あーしの背中で漏らしたらあーしがあんたを殺すからね!』


 …なるほど。ベルナデッタ殿下の予言の通りだな。


 赤い森の上をドラゴンの背に乗って飛んでいる。予言に出て来たドラゴンは妹ドラゴンだったのな。


 こちらに対して喧嘩腰だったが緊急時に救けてくれるあたり、根はいい子らしい。


 悪態はついていても振り落とす事はしないし。


「っと、そんな事よりもだ。何で突然アンデット化した?あまりにタイミング良すぎないか?」


『それは多分、そちらの泣きじゃくってる子が原因だね』


『ほら、しっかりしな!』


『うぅ~いてて…頭打った…』


 父ドラゴン、母ドラゴン、兄ドラゴンも無事なようだ。


 で、泣きじゃくってる子って…イーナが?イーナが何かしたのか?


「わ、わたくしが、何をしたって言うんのですのっ。ひぃぃ!兎に角地上に降ろしてくださいまし!」


『君、ひいじい様の頭に顔からぶつかっただろう?その時、キスしなかったかい?』


 ……おいおい。まさかキスしたからアンデット化したって?


 キスでどうにかなるのは眠り姫に王子様がキスする時くらいじゃないのかい。


「キ、キス?骨にキスなんてしませんわ!ぶつかった時に唇が何処かに触れてしまった可能性はありますけど!それよりも降ろしてくださいましぃ!ひぃん!」


『それと君の血だね。ひいじい様は人間の女の子が大好きだったからねぇ…君のキスと血で漲っちゃったんじゃないかな』


 ……仮にそれが正解だとして。


 それでアンデット化するとかどんだけだよ!変態で確定じゃねぇか!


『いやまぁ、流石にそれだけでアンデット化したりしないよ。多分、切っ掛けさえあればアンデット化する寸前だったんだろうね。その切っ掛けが人間の女の子のキスと血というのがなんとも…アッハッハっ!面白いひいじい様だよね!』


『おじいちゃんって…そんな感じだったんだ…』


『ドラゴンの女も大好きだったよ。あたしも何度セクハラされたか、わかんないねぇ』


 …この世界に紳士が少ない件について。ドラゴンでもそんなんとか……マジで神子セブンが素晴らしすぎる。


「そんな事よりさ。あんた達、こういう事態の為に残ってたんでしょ。なら、どうするの?」


『勿論、倒すよ。それがひいじい様の望みだし』


『あんた!こっちに気付いたよ!』


『飛ぶよ!』


 アンデット化が完了したドラゴンゾンビ…いや、骨だけだしドラゴンスケルトン?それともスケルトンドラゴンか?


『って、あーし?!なんであーしを狙うの?!』


『いや、背中の子を狙ってるんだよ!人間の女の子が二人いるしね』


『冷静に言ってないで助けてよパパー!』


『はいはい!行くよ、母さん!』


『はいよ!』


 父ドラゴンと母ドラゴンのドラゴンブレス攻撃。


 が、スケルトンドラゴンは…もう俺もひいじい様と呼ぶか。ひいじい様はひらりと回避。皮膜も無い骨だけの翼で器用に身体をひねってみせた。


『え!アンデットのくせに動きがいい!』


『こっちに来っ、がふっ!』


『母さん!ぐ、ごはっ!』


 邪魔をされて気に障ったのか親ドラゴンを脅威と見たのか、ひいじい様は先に排除に動いた。

 

 高速で振った尻尾の攻撃で親ドラゴンは二匹とも森に落下した。生きてはいるようだが、二匹とも気絶したようだ。


 …つうか、弱くねぇ?アダマンタイトドラゴンって高位のドラゴンだよな。それが…あっさりやられすぎじゃね?それともひいじい様が強すぎるのか?


『理由としては両方やろ。この森でずっと暮らしてたって事は自分と同等以上の敵と闘う機会なんてなかったやろしなぁ。対してひいじい様はアンデット化して本能だけの存在になっとるけど、魂に刻まれた経験は残っとるんやろうな。ええ動きしとるわ』


 魂に刻まれた経験…字面だけ見るとカッコいいな。そして、その経験があるから――


『パパ、ママ…ひぃ!こっちに来る!た、助けておにいちゃああん!』


『た、助けてって言われても!と、兎に角こっちに来い!』


 アンデットになっても女が優先対象なのな……ふっふっふっ…アーハッハッハッ!


 遂に来たんじゃね?!この時が!


「どうする?ジュン。ウチは空飛べないし…ハティも飛べないよね?」


「くぅん…」


 ふっふっふっ…アイとハティも空中の敵に対する有効な手段がないようだ。


 やはり此処は俺の出番のようだ!イーナは論外だしな!


「ひぃぃ…高いし速いし…早く、早く降ろしてくださいまし!」


 …年頃の娘さんがしていい顔じゃないな。ちょっと冷静になっちゃったよ。


 ま、そんなに怖いなら助けてあげようじゃないか!


「というわけでアイ!あれは俺が何とかするから!隙を見て地上に降ろしてもらえ!」


「へ?あ、ちょっと!ジュン!って、飛べるの!?」


「わふふっ!?」


 ふっふっふっ…さぁて、どうしてやろうか。


 ド派手な魔法でドカンと一発…は、下に居る親ドラゴンも巻き添え食いそうだし、森の動物達も危ないな。


 かと言ってミスリルの宝剣じゃ厳しい…となると、だ。


「やるぞメーティス!デウス・エクス・マキナ起動!ミョルニルを出せ!」


『はいな!』


 取り出したるは黒い大型ハンマー。デウス・エクス・マキナで構成された打撃系武器だ。


 スケルトンタイプのアンデット相手ならやはり打撃系が有効だろう!


「さぁ!俺Tueeeeeの為に!アッサリと決めさせてもらう!いつもここらで邪魔が入るしな!」


『学習したやんマスター!お察しの通り、ソフィアらが近付いて来とるで!』


「なにぃ!?」


 チラッとメーティスが言う方角を見ると、何かが森を切り開きながら進んで来る。


 …森で迷わないようにするために、樹々を伐採しながら強引に突破するつもりか。脳筋にもほどがあるだろ!


 急がねば!自然破壊ダメ絶対!


『グゥオオオオン!』


「おっとぉ!当たるか!」


 妹ドラゴンとの間に立ち塞がった俺を敵と認識したらしいな。向かって来るなら好都合!


「一気に決める!ミョルニル!最大展開!」


 俺の声、コマンドワードに反応してミョルニルがバカッと細かいパーツに別れ、パーツとパーツの間に雷で構成された新たなハンマーが姿を現す。


「吹き飛べ!トールハンマー!」


『グッ!オォォォォ…』


 最大展開されたミョルニルはひいじい様の頭蓋骨並の大きさ。


 そしてヒットした瞬間に全身に何倍にも増幅した衝撃と雷を叩き込むミョルニルを使った必殺技がトールハンマー。


 それをまともにくらえばいかに高位ドラゴンのアンデットとはいえ…


『す、すごい…一撃で粉々にしちゃった…』


『人間ってあんなに強いんだ…』


「…人間なら誰でも出来るわけじゃないわよ。ウチも地上戦なら出来るけどさ」


「ジュン様…しゅごいですわぁ…」


「わほぉぉぉぉんんん!」


 ふふ…良く聞こえないがアイ達も俺を褒めてるな?ソフィアさん達も喝采してるみたいだし…お?三つ子もいるじゃん。褒めたまへ称えたまへ。


「ふふ…ふふふ…うへへへへ…うひひひひ…うひふひゃほ!」


『マ、マスター?』


 遂に!遂にやったぞ!念願の俺Tueeeee!異世界転生してもうすぐ16年!


 まさかこんなに焦らされるとは思わなんだが!


「気ッ持ちいい!!最ッ高の気分だ!癖になりそう!ヒャハハハハ!」


『あ~…よかったな、うん。皆無事やし…なんや落とし穴ありそうな気ぃするけども』


 ハーハッハッハッ!多少の事なら構わん構わん!どんとこいや!アーハッハッハッ!

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