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第148話 御家族でした

「ほんと何アレ…骨だけにしてはデカすぎない?」


「ですわね…生きてた頃は一体どれほどの…」


「わふっ…」


 地下空洞の終点にあった巨大ドラゴンの白骨死体。博物館の恐竜の化石の標本よりもデカく完璧な形で残ってる骨。


 此処で死んで、肉が腐り削げ落ち、骨だけになって、それからは今日まで全く崩れる事無く此処に存在し続けたかのよう。


 死して尚、圧倒的な存在感を放つドラゴンの白骨死体。


 一体いつから此処でこうしているのだろうか。


『ほう…人間の客とは珍しい』


『というより、初めてだわね』


『ボクは初めて人間を見たよ~』


『zzz…』


 おおう?!骨ドラゴンの影から三匹のドラゴンが。しかもワインレッド色の鱗を持つドラゴンが三匹。いや、もう一匹奥にいるな。合計四匹のドラゴン…この中に予言に出て来たドラゴンが居るのか、いないのか。


「わお。綺麗なドラゴンが出て来たね」


『あら嬉し。綺麗だってさ、あんた』


『ふふふ、ありがとう、小さなお嬢さん』


 …このドラゴン達は家族なのだろうか。だとすると大きな二匹は夫婦で少しばかり小さい二匹が子供か。


 子供と言ってもミスリルドラゴンと同じくらいの大きさに見えるが。


 しかし可能性は高いと思っていたが人類に友好そうなドラゴンでよかった。取り合えず交渉は出来そうだ。


『ところで君達は何故此処に?』


『それにどうやって?この森は外部から来た者は奥まで進めないようになってるのに』


「奥まで進めないように…それってもしかしていつの間にか進んでる方向を変えちゃう事言ってる?」


『そうそう。あたし達みたいな高位のドラゴンには効かないし、この森に棲んでる生き物には無効なんだけどね』


『此処に来るまでに壁に赤い石があるの見なかったかな』


 どういう事かと詳しく聞くと。


 あの赤い石はこの辺り一帯に埋まっていて『幻魔石』というらしい。


 幻魔石は石としては脆く、細かく砕いて粉末状にして調合すると幻惑・催淫効果のある薬を作れるのだとか。


 そして幻魔石は小さくなれば水に溶けやすくなる性質を持ち地底湖の水にも含まれているそう。


 メーティスの予想とは少し違うが、近くの山から流れてる地下水脈がこの森の地下を通る際に少しずつ幻魔石を取り込みながら溜まったのが地底湖で、地下水脈は地表から浅い所を蜘蛛の巣状に通ってる為に森の生物達の糧になっている。


 つまり幻魔石を含む水を吸っているので魔力を僅かに帯び、微弱な幻惑効果のある波動を森全体から発している為に、森に入った人間はいつの間にか方向を変えた事に気付かず森の外へ出てしまうのだという。


 これでこの森の謎はほぼ解けたわけだ。


『と、ひいじい様が言ってたんだけどね』


「ひいじい様?他にも家族がいるの?」


『いやいや。君達の眼の前にある骨。これがひいじい様だよ』


『ほんの数百年前までは生きてたんだけどねえ。今はすっかり痩せちゃって。今じゃ見る影もないさね。アッハッハッハッ』


 …ドラゴンジョーク?笑っているけど、ドラゴンの表情はイマイチ読めないな…乗っかるべきなのか?


『ボクが生まれた頃にはおじいちゃんはもうこの姿だったから、生きてた頃は知らないんだけどね~』


『そうだったねぇ。それで、あんた達は何しに来たんだい?』


 此処でようやく俺達の目的を説明。ミスリルドラゴンの番となる夫を探しに来たと聞くと一人称がボクのドラゴンが眼を輝かせ、親ドラゴンは少し困ったように唸った。


『むむぅ…私は息子が望むのなら構わないのだけど…』


『あたしもだよ。此処にはあたし達以外のドラゴンはいなくなっちゃったから嫁さんを探そうと思えばいずれは此処から出て行かないとだし。でもねぇ…』


『はいはい!ボクは会ってみたい!』


「息子さんは乗り気みたいだけど、何か問題があるの?」


 アイの質問に親ドラゴンが視線を向けたのは未だに寝てる一番小柄なドラゴン。あの子に何か問題があるのか?


「あの子は?」


『あの子は末子でこの子の妹なんだけどねぇ…すっごくお兄ちゃん子でねぇ』


『お兄ちゃんが出て行くとなるとこの子も付いて行くんじゃないかと、ね』


『ああ~…そうかも』


 おおう…ブラコンですか。ミスリルドラゴンにとっては小姑が付いて来る事になるのか……それってどうなんだ?


 人間の家庭でも結婚相手の弟妹が付いて来るパターンはあるっちゃあるだろうが…基本的には受け入れ難い話だよな。


「じゃあさ、いっそ家族全員で引っ越すとかどう?同じ鉱山で棲むのは難しくても近くの山に棲むとかさ」


「それはいいアイディアですわね!一緒に暮らす事は難しくとも近くで暮らして居れば簡単に会えますもの!」


『それは出来ないなぁ。私達は此処に残ったのは役目があるからなんだ』


「役目?」


『そう、役目さ。ひいじい様の頼みでね』


 ひいじい様の頼みとは。


 この白骨死体となったドラゴンは死して尚、この森を護っているのだそうだ。


 あの死体が外から余計な存在を呼び込まないように、と。


『幻魔石が溶け込んだ水の影響で森の奥に進めないようにしたと説明したけれどね。そうなるように波動を調節したのはひいじい様なんだよ』


『ひいおじいさんの骨がある限り、その効果は変わらず続く。でも、放っておけば死体はいつかアンデットになる。そうなった時はあたし達に止めて欲しいってお願いされたわけさね』


 ……ドラゴンゾンビになるのか、この巨体が。それって相当やべぇ存在なのでは?


『まぁ、そうやな。小さな国一つ簡単に滅ぼせるような存在になるやろな』


 なるほど、それはヤベぇ。だがしかし!俺が来たからには―――


『とはいえ高位のドラゴンはそう簡単にアンデット化せぇへん。このドラゴンは死んでから数百年経ってるそうやけど…それでも今すぐにアンデット化するとは限らんで?今日明日アンデットになるかもしらんけど十年、百年後かもしらんちゅうこっちゃ』


 ……そうですか。そんな都合のいい話は無いっつう事ですね。 

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