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第146話 またしてもダメでした

「なんかワクワクするね。誰も踏み込んだ事のないと思われる地下空間…いや地下空洞?何があるのかなぁ」


「ですわね…もしかしてこの先にドラゴンがいるのかもしれませんわね」


「わふっ」


 地下空洞に降りた俺達は左方向…森の中心部に向かうよう歩を進めた。


 この地下空洞、空気が澱んではいない事と水に濡れてはいても水溜まりがそれほどない所を見ると、俺達が入って来た入口以外にも外と通じる穴があるらしい。


「松明消して魔法の灯りにするか」


「あら、何故ですの?」


「松明は消えたら空気がない場所だってすぐに判別する為の物でもあったからな。空気は流れてるようだし、問題ないだろ」


「なるほど…流石はジュン様。きっと冒険者としての知識ですのね」


 そういうわけじゃないんだが…それは置いとくとして。


 地下空洞の壁は相当に堅い。ただ壁にチラホラと赤い石が埋まってるのが気になる。


「がうぅぅぅ」


「ん?どったのハティ…って、ああ」


「あれは…ポイズンニュートですわね、きっと」


 進行方向から五匹の巨大イモリが。赤黒い体色と長く伸びる舌…唾液には毒があり体表はヌルヌルとした体液で覆われており打撃は通りにくい…のが通常のポイズンニュート。


 俺達の前に居るのは赤みが強く、大きさも一回りは大きそうだ。尻尾の一振りで岩を砕いてみせた事からパワーも相当か?


「よし、此処は俺が――」


「此処はわたくしにお任せを!」


「ウチもやるよ!ジュンとハティは待機!」


 あああ!そんな、ちょっ!


 イーナ!お前、普段ドジっ子なくせに何故、今回は手際よく仕留める!?打撃が効きにくいとみるや即座に投石に切り替えるとか!一石で巨大イモリの胴体に大穴空けとるがな!


 そしてアイ!なにそれ!光って唸るの!?輝き叫ぶの!?何、その光る拳!?殴られた箇所から破裂して巨大イモリが絶命してますけど!?


「ハァァァァ!」


「ちょ!その構えは!」


 かめ○め波!?お前、見た目某人気シリーズゲームのヒロインの見た目してるくせに!戦闘スタイルは格闘って縛り以外はごちゃまぜかよ!


「フッ!見てくれましたかジュン様!わたくしがお役に立つ所を!これで昨日の失態はお忘れくださいましね!」


「昨日の事はカタリナに土産話として熱く語ってやる」


「なぜぇ!?」


「ウチはどうだった?美しい技だったでしょ?惚れ直したでしょ?」


「著作権とか大丈夫か?」


「…そういうのメタ発言って言うんじゃないかなぁ」


 やかましいわ!くうっ…ポイズンニュートは通常ならDランク相当だから群れでも大した強さじゃない。


 俺Tueeeeeの相手としては物足りない獲物だが…それでも俺がやりたかったのにぃ。


『あー…まだチャンスはあるんちゃう?この先に多数の魔獣の反応があるわ。強くは無いけど数だけはおるで』


 おお!それは朗報!誘導頼むぜ、相棒!


『りょーかい。ちょい左にズレて進んでみ』


 言われた通りに進むと少しばかり天井の高い場所に出た。


 見た感じ何もいない…いや、上か?


「アレは…コウモリですわね」


「スケイルバットね。こいつも赤いけど」


 スケイルバット…通常のスケイルバットは魚鱗のような鱗に覆われたハトくらいの大きさのコウモリ。黒い鱗と茶色の体毛に覆われたコウモリだ。


 天井にビッシリと敷き詰めるようにぶら下がったコウモリ。赤い鱗に赤茶色のスケイルバットが数百匹は居る。


 スケイルバットはジャイアントホーンラビットと大差ない強さだが数は暴力。これを瞬殺する俺…うむ!いいね!俺Tueeeeeのと言えなくもない!


「よっしゃあ!今度こそ俺が!って、うぉいハティ?!」


「ウウッ…ウワォォォォォォォォン!!!」


「わっ、何!?」


「み、耳が痛いですわっ」


 スケイルバットが俺達に向かってこようと飛んだ瞬間、ハティが前に出て咆哮を上げた。


 その瞬間、スケイルバット達は全てフラフラと枝から落ちる枯れ葉のように落ちていった。


「…お、お~…やるじゃん、ハティ」


「…ですわね。突然やられたのでわたくしもビックリしましたが、これだけの数を一掃出来るなんて。お見事ですわ、ハティ」


「わふふふっ」


 …咆哮、いやハウリングか。スケイルバットも普通のコウモリと同じく超音波を出している。つまりは音波を感知する能力が高い。そこでハウリング…大きな音でスケイルバット達を気絶させたわけだ。


「ハッハッハッハッ」


 …ハティが褒めて欲しそうに俺を見つめている。尻尾もブンブン…お前、ついこないだまで野生の狼だったべ?魔狼の群れのボスだったべ?野性とプライドを何処に捨てて来た。


 拾って来い、フリスピー投げてやるから。


「…くぅん?」


「くっ…」


 そんな無垢な瞳で……し、仕方ない。


「よ、よ~しよし、よくやったなぁハティ」


「わふわふ!」


 流石にこんな無邪気な瞳してるハティにあたるような事は言えない…


『因みに今のハティの咆哮な。地下空洞に居る魔獣の大半をビビらせるのに十分やったみたいでな。近くに魔獣の反応は無しや。ナッシングや』


 な、なああああにいぃぃぃぃぃ!?大半の魔獣が逃げ出したって事か!


「ぐっ、ぐぬぬぅぅぅおぉぉぉ!!!」


「ど、どうしましたのジュン様?」


「凄い捻じれてんね。何悶えてんの?」


「くぅん?」


 やり場の、やり場のない怒りが!拳を振り上げそうになる衝動が!


 しかしハティは赦したし、そもそも悪い事したわけじゃないし…あー!もうっ!


 そろそろ俺に俺Tueeeeeをやらせてくれぇぇぇぇ!

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