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第136話 悲劇でした

 メーティスの日常生活用マテリアルボディは黒髪ポニーテールの巫女さん…悔しいほどにドンピシャでした。


「んふふ…そんな見つめちゃってぇ。さては恋に落ちた?そうやろ?そうなんやろ?」


 いつまでドヤ顔のままでいるつもりなんだか。


 …でもドヤ顔も可愛いと思ってしまうのがまた悔しい。


「んんっ…そのボディはあくまで日常生活用なのか?偵察とか出来るのか?魔法を使ったりは?」


「誤魔化したな?…このボディやとマスターが出来る事は大体出来るで。デウス・エクス・マキナを使用する事も魔法を使う事も。肉弾戦かて出来るし。ただあまり離れられんのは妖精型と同じやな」


 で、後は歳を取らないし、死なない以外は普通の人間と同じ身体。


 食事も出来るし、睡眠もとれる…らしい。


「あと…エ、エッチな事も出来るで?子供は流石に出来へんけど」


「……そっスか」


 だろうなとは思ったよ。性処理が出来るんだもんな。


 …とはいえ、メーティスに頼むなら婚約者達と子作りしろよって言われそうだから頼まないが。


 取り敢えずメーティスには今まで通りにしてもらうとして。


「で、どうする?折角だからそのまま暫くは歩くか?」


「ん〜…そやね。この身体に少しは慣れへんとな。まだ歩いた事さえ無いからなぁ」


 初運転ってか?妖精型を除けば初めての生身になるんだし、慣れは必要か。


 あまりその身体の出番は無いだろうしな。身体を慣らす機会は貴重か。


「じゃ、誰かに見つかりそうになるまではそのままって事で」


「せやね。なら…んっ」


 …なんだ、その手は。まさか手を繋いで歩けってか?


「ん〜!」


 仕方ないなぁ…


「…はいはい」


「デヘヘ…」


 これくらいいいけどさ……って、何か聞こえるな。


 これは…木が倒れる音?


「メーティス、今のは?」


「あー…話しとる間にジャイアントツインベッドスネークが近くまで来とるわ。何か襲っとるで」


 何かってなんだ?人間じゃなさそうだが…魔獣か?


「兎に角、標的が近くまで来たんだ。行くか」


「オッケェや。こっちやで」


 メーティスの案内で進んだ先には確かに巨大な双頭の蛇。


 そして、その蛇が見ているのは…


「さっきの親子熊やな。親熊はボロボロ…子熊は怯えきっとる」


「喰われる寸前じゃねぇか!」


 折角見逃したのに蛇に喰われるんじゃ意味ねぇだろが!


「そんな訳で!その横っ面に真空飛び膝蹴りだぁぁぁ!」


『ギィシィィィ!』『シャァァァア!』


 おう、双頭だけあって片方の頭を蹴っただけじゃダメか!


 即座に残った頭で反撃して来やがった!


 だがしかし!その程度のスピード!躱すのは容易い!


「さて、と。メーティス!熊は!」


「とっくに逃げたで。もう好きにやっちゃって……あ〜…残念。マスター、自由時間は終わりや。わいも戻るわ」


「は?」


 自由時間が終わり?前にもあったな、そのパターン…って矢?


『ギシャァァァ!』『ギイィィィッ』


 四本の矢が正確に蛇の眼を貫いた。この正確な弓の射撃…あの人だな・


「おおらぁぁぁぁ!無事かぁ!ノワール侯爵様よぉ!」


「やっと見つけたっスよ、ジュン君!白薔薇騎士団!目標を討伐するっスよ!」


「「「「「了解!」」」」」


 あぁ…やっぱり。ナヴィさん率いる白薔薇騎士団五人にシーダン男爵まで…これは…終わったな。


 実際、ナヴィさんの弓でほぼ決着がついていた。


 後のシーダン男爵や白薔薇騎士団員の攻撃はオマケみたいなもんだ。


「ふぅ…ジュン君!こんな危険な場所に一人で来るなんて!何考えてるっスか!」


「全くだぜ!アタシらが来なきゃどうなってたかわかってんのかい!」


 …問題無く倒してましたよ、と言いたい。


 声に出して言いたい。


 しかし、俺は知っている。こういう時、下手に反論すれば火に油だと。


 今は大人しくするのが正解だ。


「お前!その顔は反省してねぇな!」


「前にも団長が説教したと思うっスけどね。どれだけ強かろうと、死ぬ時は死ぬんス。一人で魔獣が生息する山に入るなんて絶対ダメっス」


「この山に慣れてるアタシだって単独行動はしねぇぞ!暗くなったら簡単に遭難するしよ!山を舐めんなよ!」


 その後もギャンギャンと説教は続き…十分後に帰るかとなった。


「全く…男のクセに無茶するよ。おおっと、ちょいと寄り道するよ」


「寄り道?」


 山を下り、少し道からそれた先には…カメレオンベアーの死体が。


 …ボロボロな、この熊…ま、まさか、ひょっとして?


「お前さんを探してたら突然目の前に飛び出して来るからさ。反射的にブスッとね!いやぁ、ラッキーだな!こいつ美味いんだよ!こないだアンタがうちで食った熊もカメレオンベアーだよ!」


「……もしかして、子熊も居ませんでした?」


「んあ?居たけど逃げちまったよ。アンタの捜索を優先したしな!」


『あ〜…マスター?気の毒やとは思うけど、これは…』


 う、うおおぅ……せ、折角見逃したのに…助けたのに!


 まさか、こんな結末…あるボクシング漫画に出て来るお爺さんみたいな真似しやがって!


「こ、この…」


「それにこいつ!どっかで見た事あると思ったらアタシが前に仕留めた奴の番だな!この耳が少し欠けてるのが印象的でよく覚えてたんだよ!」


 な、ん…だと…つまり、あの子熊の母熊と父熊、両方を仕留めたと?そういう事か!


「いやぁ~あん時は逃しちまったけど仕留める事が出来っ、うわおう!?なんだなんだ!?」


「アンタって、アンタって人はぁぁぁ!!」


「ジュ、ジュン君?落ち着くっスよ!」


『そやでマスター、落ち着き。いくら子連れだろうと魔獣は魔獣や。魔獣は基本的に危険な存在やねんし、出会い頭に反射的にやってもうたんを責めるんは酷やで』


 うっく……な、なら、この怒りは何処へ…何処へぶつければ!?


「うっ、うぅ…」


「えっ。ジュン君、泣いてるっスか?」


「な、何でだよ…もしかして熊が好きとか?」


 そうじゃない、そうじゃないが…うっく…


「そんなに熊が好きなのか…わかったよ!こいつの一番美味いとこはアンタにやるからさ!元気出しなよ!」


「そうじゃない!アンタ、本当にズレてんな!」


 ああもう!結局は俺Tueeeeeも出来てないし!


 ほんと、どうしてこうなるかな?!

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