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第135話 完敗しました

 冒険者ギルドトラン支部で薬草採取の依頼を受けた俺は、ミスリル鉱山とは別の山に来ていた。


 この山は緑豊かで、それほど大きくは無いが川も流れてる。動物も沢山いるようだし、魔獣も棲み付いていそうだ。


 これは期待が高まるぅ!


「フンフンフフフフンフン~♪」


『ご機嫌やな、マスター。そないに楽しい?』


 そりゃあな!久々に訪れたビッグチャンス!気分も高まるというものよ。


 それに久しぶりの単独行動だしな。いつ以来だ…宿舎暮らしをしてる時に抜け出して森に行った時以来?


 何ヶ月ぶりかの自由!次にいつ来るかわからないし、楽しむんじゃあ!


 …って、冷静に考えればおかしな現状だよなぁ、これ。


 だって去年、孤児院を出て冒険者になる為の一歩を踏み出したら拉致られてあれよあれよと侯爵にまでなっちゃって。


 そりゃ自分の意思も介在してたし、全てが他責なんて言うつもりはないけどさぁ。


 どうしてこうなった……ってつい最近も思ったな。


『今度は急激にテンション落ちたな。何なん、情緒不安定なん?』


 情緒不安定…そうかもな。一人で…厳密に言えばメーティスが居るんだから一人では無いかもしれんが、一人で落ち着いて考える時間があるとな。


 不安材料について考えちゃうよな。


『不安材料ちゅうと?どっかの神様が嫌がらせに送ったっちゅう存在か?』


 一番はそれだなぁ。何か勇者がその存在みたいだし。


 ベルナデッタ殿下の予言が正しければ戦うのは確定っぽいし。


 勇者がどんな奴かもわからないし、神様に何を言われてるのかもわからない。


 最悪、命の奪い合いになるかもしれない。


 しかし、今のところ勇者に恨みは無いしな。バッタリと出会って、さぁ殺し合いだ!とか言われても戦えるかわからん。


『ん〜…勇者については心配せんでええと思うで?女神エロース様から何の連絡も無いしな』


 ほう?というと?


『別の神様が送った嫌がらせ目的の勇者の存在はエロース様も感知しとるやろ。何せ、この世界の管理担当やねんし。それが何の連絡もせんって事はマスターにとって勇者は脅威やないってこっちゃ』


 …そうなのかなぁ。でも、それなら女神フレイヤ様がアイを送ったのは?


『それに関してはわても何とも言えんわ。でもアイがおったら尚の事、勇者はなんとでもなるやろ。後は実際に会ってからやな。いくら聖女の予言があるっちゅうても未来は変わるもんやからな。あ、そこ薬草あるで』


 はいよ……勇者については考えても仕方ないって事な。


 って、今サラっと言ったけど未来って変わるのか?


『変わるで。ベルナデッタがマスターに教えてもらったからマスターの名前を知ってた、みたいな話してたやろ?』


 …未来視の能力で俺が名乗る未来を見たけど、それを話してしまったから、俺が名乗る未来は失われた、と。


 タイムパラドックスってやつになるのか?


『そうなるんかな。ま、未来を変える事が出来へんのなら、未来視の能力なんて何の意味も無いわ。それに人間が持つ事が許された能力っちゅう事は神様にとって許容出来る能力っちゅうこっちゃ』


 未来視が許容出来る能力?じゃあ許容出来ない能力って何だ?


『タイムトラベルやな。アレはあらゆる因果律を無視してまう。下手すれば世界そのものを壊しかねん。って、マスター、熊や熊。左前方、30メートル』


 お、熊か…ある日♪山の中♪クマサンに♪出会った♪


『…まぁたご機嫌に歌い出したな…って、あ〜…ちっと近づかん方がええかもやで』


 なんでだよ…って、ああ…うん、遅かったわ。


『遅かったかぁ。家族で御食事中やな』


 熊は動物の熊ではなく、魔獣の熊。


 あの緑色の毛色からしてカメレオンベアーという魔獣。


 普通のカメレオンのように周囲に溶け込むように毛色を変える事が可能な熊。


 それ以外は普通の熊と変わらず強さも同じ。


 人間を襲う事もあるので討伐すれば冒険者ギルドから報酬が出る…出るのだが。


 今食べてるのは魚だし、子熊と一緒なんだよなぁ。


 察するに大きいのは母熊…子熊の前で母熊を頃しちゃうのは躊躇われる…冒険者としては失格かもしれんが、積極的に狩る気にはなれん。


 と、いう訳で。あの熊は見逃してやるとしよう。


『はいな。…マスターが俺Tueeeee出来へんのは、マスターのそういう性格にも原因があると思うで。ま、まぁ?わいはマスターのそういう所、好きやで?』


 お、おう…ありがとよ。


 んんっ…さて、もう少し奥に行くと……ところでこの山にはどんな魔獣が居るんだ?


『そうやなぁ…それほど強い魔獣は…お?ジャイアントツインベッドスネークがおるみたいやで。ちょい距離が離れとるけど』


 長い名前だなぁ…確か太さ3メートル、長さ10メートルはある双頭の蛇か。Cランクの魔獣の中では上位に入る、ソコソコの魔獣。


 非常に獰猛で食欲旺盛の危険な魔獣だ。人間を見たらまず襲う。


 単体なら相手としては少々物足りなさそうな相手だが…妥協するか。


 で、距離は?


『3kmは先やな』


 ……それって山から出てねぇ?少なくともこの山じゃないよな?


『そやね。山を反対側に下りた先にある森の中やな。でもそいつが一番の大物っぽいねんもん』


 …そうか。なら、もう少し、この山を歩いて薬草を集めたら行ってみるか。


 …なんか、水の音がするな。これは…滝か?


『ん?うん、この先に滝があるわ』


 どれどれ…おお、立派な滝じゃんか。


 落差7メートルはあるか?残念ながら滝の裏に洞窟は無さそうだが。


 しかも、これ…滝の傍に温泉が湧いてねぇ?


 あの湯気…温泉だよな?


『確かに温泉やな。高温やから人が入るんには適してへんけど、泉質は悪くないで』


 温度さえどうにか出来れば入れるってか。


 …これ、トランまで引っ張って行ければ新しい名物になるんじゃね。


 トランがノワール侯爵領になるんなら、温泉を引いておけば俺も入れるし。


『滝か…うん、悪くないなあ』


 だしょ?この温泉、トランまで引く事は可能か?


『よっしゃ!此処でわいのマテリアルボディのお披露目するで!』


 話し聞けよ!って、お披露目?此処で?


 えらい突然やね。情緒があるが良いとか言ってたのに。


『情緒あるやん滝!ほんとやったら夜で、ホタルなんか飛んでたら尚良しやけど!そこまで贅沢言わんわ!』


 …お前が良いなら良いよ。周りに人間はいないんだよな?


『おらんで!ほな、お披露目や!いっくでぇ!』


 空間から現れたのは黒髪をポニーテールにした美女。


 背は170cmくらいか。スタイルは言わずもがなで抜群。


 バストサイズはカタリナより大きいがアムよりは小さいといったとこ。


 顔は少しハーフっぽい日本人顔の美人…アイの顔に少しクリスチーナを混ぜた感じと言えば良いのか。


 そして何故か巫女服を着てる…それが凄まじく俺に刺さる!


 悔しいくらいに刺さる!


 こいつ…今までの俺の言動から俺の好みをドンピシャで当てて来やがった!


 エロいスタイルの黒髪ポニーテールの巫女さんとか!


 大好物なんですけど!


「ふっふっふ…何も言わんでもマスターの心中は察する事が出来るでぇ。ズバリ!黒髪ポニーテールの巫女とか大好物や!とか思ってるやろ!」


「くぅっ!」


 さ、流石は相棒…俺の好みや考える事はお見通しか。


 ならば、もしかして…


「マスターは『チャイナドレスとか婦警さんの衣装とかあるのか』と言う!」


「チャイナドレスとか婦警さんの衣装あるのか…って、なにぃ!?」


「フハハハ!マスターの考えはお見通しや!シスター服やアオザイ、ナース服かて用意してあるでぇ!」


 こ、こいつ…ジ○ジ○ネタまで用意して来るとは…認めよう!


 俺の完敗だ!


「フハハハ!これからはこの身体でマスターのせ、性処理するから!わいに任せとき!」


「…お前、凄い事言うな……ちょい待ち。これからは?これまではどうしてたと?」


「え?あ〜…それはやな…マスターの身体をある程度わいが制御出来るんは知ってるやろ?それと同じでや…せ、精液が暴発せんようにやな…」


「OK、わかった。もういい」


 夢精を未然に防いでくれてたって事ね…言われるまで気付かなかった…というか知らないままでいたかった…


「……」


「……」


 どーすんだ、この空気…

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