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第129話 ダメそうでした

「つまりだね、鉱山の運営に関しては我々に一日の長がある。そのノウハウを教えて欲しいとローエングリーン伯爵様とレーンベルク伯爵様に請われ、応じたという訳だよ」


「幾つかの条件と引き換えに、ね」


 今日は予定通りにミスリル鉱山近くの街、トランに向けて出発する日。


 現在は馬車の中でゼニータ会長と、その孫ベニータから同行する事になった経緯を説明されている最中だ。


 今日の同行者はソフィアさん達白薔薇騎士団とユーバー商会のみ。


 珍しくアム達は同行しない。クリスチーナが王都から出ての商談があるらしく、そっちに同行する事になったからだ。


 ハティもアム達と一緒に行かせたし、カタリナとイーナも今回は不参加。


 アニエスさんは先にトランで待っているそうだ。


「元々、ユーバー商会はノワール侯爵家の御用商人だったんだよ。鉱山の運営も殆ど任せてもらっていた。だからノワール侯爵家が断絶の際には破格の値で買い取る事が出来たんだがね」


 なるほど。運営に関してのノウハウも持ってない家臣団は下手に所有権を主張するよりもユーバー商会に丸投げして税やら何やらで御金を落としてくれる方が良いと判断したのか。


「まぁ、もう少し複雑な事情があったんだがね。で、今回は現地で鉱山運営の責任者に指導を………おっとノワール侯爵様を相手に、言葉使いがなっていませんでした。お許しください」


「構いませんよ。元々は孤児院出身の冒険者なんですから。公の場でない時は以前と同じで。ベニータもね」


「え、ええ。友達、だものね?」


 そう友達。俺、男女間でも友情は存在すると考える派だから。


 決してそれ以上の関係ではないので。


 だからジトーとした視線を送って来るのは止めてください、ソフィアさん、ナヴィさん。


「御言葉に甘えさせていただくよ。商人として、それではいけないんだろうがね。しかし、君が男だったとはね。しかもノワール侯爵になるなんて」


「自分でも驚いてますよ」


 いや、ほんと。成人したら冒険者になるんだー、としか考えてなかったし。


 何がどうしてこうなったんだか。


「だが言われてみれば…君は確かにノワール侯爵家らしさのある顔立ちだ。君に似た人が居たような…誰だったかな」


 御用商人だったならノワール侯爵家の人間の顔を覚えているんだろうな。しかぁし、残念ながらそれは間違い、思い違いです。


 必死に思い出そうとされてますが、誰を思い出しても外れです。


 間違いなく。


「ああ!思い出した!君はエリザ様に似ている。最後にお会いしたのはエリザ様が五歳だったから…もし生きていらっしゃるなら今は三十五歳。君の母親としては丁度良い年齢だな」


 ふぅん?そんな人が居たのはわかった。だが、その人は俺の母親じゃあないんだな。


『マスターは誰かの股から産まれたわけやないからな。どっちかっちゅうと木の股から産まれたって表現の方が近い?』


 いや近くねぇわ!その二択なら誰かの股から産まれたの方が近いわ!


 ……近いよね?


「そうそう。君とユウ君が提案してくれたキックボード。アレはもうすぐ商品化出来る。完成したら何台か贈らせてもらうよ」


「ああ、ありがとうございます。なら、俺の分は孤児院に贈ってもらえますか」


「…わかった。無欲だな、相変わらず…」


 そうだろうか?


 キックボードなんて貰っても喜ぶ歳じゃないしなぁ。精神的にも。


 その点、孤児院の子供達なら大喜びで……駄目だ、真っ先にジェーン先生が遊ぶ気がする。大はしゃぎで。


 あの人、未だ子供っぽさが抜けてないもんな。


『…マスター、ブーメラン飛ばすの好きなん?』


 お黙り!


「武具のレンタルサービスの方は大好評よ。装備の持ち逃げも今のところ無いし」


「ユウ君が提案してくれたスタンプカードというサービスの御蔭だな」


 俺が提案した倉庫の肥やしになってた量産品の武具を低価格で貸し出すレンタルサービス。


 盗難防止策がネックだったがユウが幾つかの対策を提案。


 その一つが一日レンタルする毎にスタンプ一つ。三十個のスタンプが貯まれば定価の三割引で武具を買い取れるようになるサービスだ。


 これの御蔭でリスクを犯して盗むよりもちゃんと返却してサービスを利用したほうが良いと思わせる、という狙いだ。


「いやぁ~あのサービスは本当に素晴らしい!御蔭でユーバー商会は生き返ったよ。ハハハ」


 利用されただけとはいえ、廃鉱山の事件ではユーバー商会も罰金刑に処されてるからな。


 レンタルサービスがヒットしなければ大幅に商会を縮小しなければならなかったそうだ。


 お金が大事なのは日本でも異世界でも変わらないな。


 …っと、お金で思い出した。


「明日会う事になってるシーダン男爵とはゼニータ会長も面識がありますよね。どんな方ですか?」


「どんな方…私は鉱山の運営上での付き合いが殆どだったが、それは先代までの話でね。今代のシーダン男爵は先代の長女…チェキータ殿でしたかな?」


「そっスね。チェキータ・アンドレア・シーダン男爵。去年病死した母親から爵位を継いだ現当主っス」


 …昨年、病死した、か。三十年で三代も当主が代わってるて、少し早い気がしたが…だからか。


「…そうでしたな。で、チェキータ殿だが…あまり金勘定には強くない方だと思うよ。シーダン家は代々ゴリゴリの武闘派貴族でノワール侯爵家家臣団でも切り込み隊長を任せられる程だった。…それは先々代の話だがね。多分、チェキータ殿も同じだろう」


 金勘定に疎い武闘派貴族……なんでそんな人が鉱山と密接な関係にある街の領主に?


 他にも適任が居ただろうに。


「それは私も思うがね。私として脳筋が相手でやりやす……んんっ、なんでもない」


「それはもう言ったも同然ですよ、御祖母様…」


 あぁ…うん。脳筋相手なら手玉にとれるからやりやすいと。


 好き勝手に出来たわけですね。


 で、現シーダン男爵も武闘派貴族だ、と…他に情報は?無いの?


 年齢は二十歳?いや、もっと性格とかが知りたいんだけど…酒好き?


 まとめると…武闘派な脳筋で酒好きの借金持ち貴族になりますけど…それで正解?


 借金の理由にもよるけど…ダメじゃね?

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