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第127話 美味しく頂きました

「せぇや!」


「やったぁ!ジュンの勝ちー!」


「あたいも終わったぜい」


 ふぅ…今回の依頼はジャイアントフロッグ討伐。


 依頼者は近くの村の村長でジャイアントフロッグの数は五匹。


 象並の巨体なので遠くから見える上一ヵ所に固まっていた為に距離がある内にファウの魔法で五匹中三匹をダウン。


 残る二匹の内、一匹をアム。もう一匹を俺に任せてもらった。カウラとファウのサポートもあってアッサリ終わってしまった。まぁ、ちょっとした不幸はあったが。それ以外は何にも無く。


 俺Tueeeeeのチャンスも無く……はふぅ。


「何を残念そうな顔してんだ?」


「いや、別に。ところで犠牲者(カタリナ)は?」


「ああ、そういやどこだ?」


「湖で身体洗ってるよ」


「犠牲者というより迂闊者」


 五匹の内、生き残った二匹はこちらに向かって来たのだが…一匹はカタリナが迎え撃つと突っ走った挙句にジャイアントフロッグの長~~~い舌に捕まる、事は無かったのだがもう一匹が口から粘液を吐いて攻撃。


 ベッタベタのネッチョネチョになって身動きが取れなくなって捕食される寸前までいったが、そこは俺が華麗にフォロー。


 俺が魔法でカタリナとジャイアントフロッグを引き離した隙にゼフラさんが回収していた。


「って、ちょうど帰った来たぜ」


「うぅ…酷い目にあった。こういうのはイーナの役回りの筈なのに…」


「………酷い言い様だけど、それには同意する。でも、その格好は何…」


 粘液塗れになったのだがら水浴びをするのはわかる。わかるが…ちゃんと着替えて来なさいよ。


 上はノーブラにシャツ一枚、下はパンツ一枚…しかも身体をよく拭かないで着たのか色々と透けちゃいけないモノが透けとるし。


「貴族令嬢が見せていい姿じゃないぞ…」


「何故だ?女が外でこんな格好する事なんて珍しくないだろうに。それにジュンはもう何度も私の裸を見てるじゃないか。何を今更」


 誤解を招く言い方をするんじゃない。ローエングリーン家に泊まってた時に毎回強引に混浴して来ただけだろうに。


 その混浴も最初は照れまくりだったくせに。恥じらいを捨てるのが早すぎない?


 拾って来なさい。待っててあげるから。


「いやお見事。見事な手並みだったよ」


「とても素敵で華麗。見惚れてしまいました、ノワール侯爵様」


 少し離れた位置で観戦していたブルーリンク辺境伯家組が、拍手しながら近付いて来た。


 家臣達は赤い顔でキャアキャア言ってる。なんかサインしてくださいとか言って来そうな雰囲気だな。


「さぁて。それではジャイアントフロッグの解体は我が家臣達に任せてくれ。おい」


「「「はっ!」」」


 …そう言えばそうだった。本当にジャイアントフロッグ、食うのね。


 本当に食べられるのかなぁ…とってもカラフルだよ?個体ごとにカラーリングが違うけど、オレンジのやつなんかヤドクガエルにそっくりなんだけど。大きさ以外。


「どの個体も損傷が少なくて助かる。特にジャイアントフロッグは舌が珍味らしいからな。フフフ…楽しみだ」


 舌…この大きさだから牛タンより量はあるだろうが…本当に珍味なの?


「…どうやって食べるんです?唐揚げとか?」


「からあげ?からあげとは何かな?」


 あれ?もしかして唐揚げってこの世界に存在しない?


 …そう言えば食べてないな、唐揚げ。孤児院でいくつか日本の料理を作った事はあったが唐揚げは…無かったか?


「唐揚げというのは料理ですね。材料があるなら作りますけど」


「ほう!ノワール侯爵は料理が出来るのか。しかも私が知らない料理…実に興味深い!今ある食材、調味料は好きに使ってくれて構わない。是非作って欲しい」


 …昨日の昼食でも思ったが、よくこんなに旅先まで持って来るな。


 ええと…何とか出来そうかな。油は十分あるし、調理器具もある。火力不足は…魔法で何とかするか。


「ジュンの料理って久しぶりだよな~」


「しかも新作。楽しみ」


 …プレッシャーかけて来るなぁ。解体が進んで肉はどんどん来るし、多少失敗しても構うまい。


 しかし、流れで蛙の唐揚げを作る事になったが、大丈夫かな。


 確か前世では蛙肉は鶏肉に近い味とか聞いた事あるし、蛙の唐揚げって実際あったと思うから…大丈夫だろ。食った事はないし作った事もないが。


「はい。取り合えず試食をどうぞ。塩かマヨネーズをつけるといいですよ」


「ふむ…こ、これは!」


「お、美味しい!」


 …美味いのか。蛙肉………く、食ってみる、か?


『マスター…辺境伯とその妹に毒見させたん?』


 人聞きの悪い事を。毒見じゃないし試食だし。自称グルメなら一番に食べたいでしょ。


「むぐっ…あ、普通に美味い」


「マジか?…おお!うめえ!」


「ほんと!ねぇねぇ、ジュン!これも特許とれるんじゃない?」


「特許?料理法で特許とか取れるのか?」


 いやマヨネーズで特許とれるならイケるのか?


 ……そう言えばアレも食って無いなぁ。丁度大量の油もある事だし、アレも作るか。


「えっと、ブルーリンク辺境伯、家臣の方に芋の皮むきをしてもらいたいのですが」


「芋?構わないが……もしかして、まだ新作料理があるのかな?」


 そう俺が作ろうとしてるのはポテトチップスだ。味付けはシンプルに塩味でいいだろう。


 蛙肉の唐揚げを作ってる間に芋の皮むきをしてもらい、更に手本を見せて薄切りに。


 それをササッと素揚げにして、塩を振る。


「どうぞ。これは素手で食べてください」


「ふむ。実にシンプルな料理だが、これも初めて見るな………おお!美味い!」


「美味しいです!手が止まらないです!」


 というわけでポテトチップスも大好評。蛙肉の唐揚げとポテトチップスだらけの食事会になってしまったが、皆美味しそうだし問題無かろう。


 健康には悪そうだが。


「何?このマヨネーズを作ったのもノワール侯爵だと?」


「ですがマヨネーズは確か私が子供の頃に出始めた物でしょう?その頃はノワール侯爵様も子供だったのでは?」


「まぁ、そうですね」


「確かジュン君…いえ、ノワール侯爵が五歳の頃です」


 あの時大人だったゼフラさんが唯一覚えてたらしい。カタリナも五歳だから覚えてないのは無理もない。


「凄いな、ノワール侯爵は。そんな幼い頃から才能豊かな子供だったのだな。…それに、ずっと気になっていたのだが、そのミスリルの宝剣はもしかしてレッドフィールド公爵の?」


「あ、はい。レッドフィールド公爵からの頂き物です」


 正確には三つ子から出されたクイズに正解した報酬として貰ったんだが。


 …今思えばクイズに正解しただけでよくこんなのくれたな。深く考えずに正解してしまったが、何か目的があったのだろうか。


「…ほほう。ノワール侯爵はあの三つ子を見分ける事が出来たのか」


「その言葉から察するにブルーリンク辺境伯もあのクイズを?」


「うむ。不正解だったがね」


「あれは何の意味があるんですかね。本当にミスリルの宝剣をくれたのも驚きですけど、レッドフィールド公爵に何のメリットも無いと思うんですけど」


「あれは三つ子のわがままに過ぎないよ。なぜ、そんな事をしたのかは…言わないでおこうか。恨まれても嫌だしな」


 三つ子のわがまま?何の為にそんな事したんだ?ミスリルの宝剣なんてお高い物を用意してまで…本当にメリットが思いつかん。


「レッドフィールド侯爵家にとってはミスリルの宝剣なんて大した出費にもならないだがね。しかし…レッドフィールド公爵は本気だろうな」


「本気?何の話です?」


「そんなもの、決まってるだろう?ノワール侯爵と縁を結ぼうとしてるんだよ。イエローレイダー伯爵も動いてるんだろう?イエローレイダー伯爵は勇み足を踏んで失敗したらしいが」


 …何故、それを知っている?一昨日の話だぞ?本人が言い触らすとも思えないし。


「ノワール侯爵は自分が如何に注目されているか自覚した方が良い。侯爵の屋敷から泣きながら出て来たイエローレイダー伯爵は複数人に目撃されているから、今頃は王都中の貴族の噂になっているぞ」


 Oh…マジかい。それ、どう考えても良くない噂が広まってるよな。


 美人伯爵が泣きながら屋敷から出て来る…うん、どう考えても悪い噂しか浮かばねぇ。


「これは私達もうかうかしてられないな。なぁ、カミーユ」


「そ、そうですね…」


「唐揚げ、ポテトチップス、マヨネーズ…食を探求する者としてはノワール侯爵のような才ある人物とは是非とも縁を結びたい。これから仲良くしてくれたまえよ」


 えー…友達としてならいいですけど…面倒臭い事になりそうな予感がビンビンするのは何故?

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