第122話 情報をもらいました
「お、戻っ…た、か?」
「………魔狼の群れ、討伐完了しました」
「………あ、ああ。それはいいんだが…なんだ、そいつらは」
魔狼の群れを討伐し冒険者ギルドに戻るとステラさんの出向かえを受けた。が、ステラさんは困惑顔。いや、ステラさんだけでなく、ギルドの職員も全員だ。
「…此処を出た時より、増えてないか?いや、確実に増えてるだろ」
「増えてますね…」
「往復でかなり人数増えたよなぁ…」
「この人達、なんで付いて来るの?」
「暇人」
依頼を受けて王都を出るまでに着いて来た人達と王都に戻って冒険者ギルドに着くまでに行列に合流した人達。
冒険者ギルドに入り切れないし、数えるのもバカらしい数になっていた。
「…自分の男がモテモテというのは悪くない気分だが、この事態は少々考え物だな」
「おい、勝手にジュンを自分の男にしてんじゃねーぞ」
「ギルドマスターはジュンの婚約者じゃありませーんー」
「セクハラエロフは御断り」
「誰がセクハラエロフだ!エルフだエルフ!」
ステラさんはエロフでいいじゃん、もう。実際会うたびにセクハラ三昧だし。今も尻に手を伸ばしてるしさぁ。
「そんな事よりもギルドマスター。この狼についてなんですが」
「そんな事ってお前…重要な事だぞ。…そいつやっぱり魔狼なのか。ちょっと違うように見えるが」
「群れのボスだった個体です。他のと大きさと毛色も違うし、変異体とか特殊個体、或いは別種じゃないですかね」
「見ての通り、ジュンに降伏して服従してっからよ。従魔登録頼むわ」
通常の魔狼は焦げ茶色だった。だがこいつは銀色の毛。更には知能も高いようで俺の言う事を理解して従っている。無闇に人を襲う事もなさそうだ。
屋敷の番犬くらいには出来るだろう。番犬ならぬ番狼か。
「…ふむ。ちゃんと制御出来るなら問題無いだろう。従魔がしでかした事は飼い主の責任になるから、注意しろよ。手続きは…私がするか」
「「「えええー!私がやりますよ!」」」
「やかましい!ジュンの担当はギルドマスターの私だ!お前らには任せん!散れっ!シッシッ!」
「「「職権乱用!権力横暴!」」」
息ぴったりなギルド職員の方々を無視し、従魔登録を完了。従魔の証となる首輪をもらった。
犬型の従魔には首輪型の証で統一されているらしい。
首輪は魔法道具になっていて、対になる魔法道具を使えば居場所の特定も可能だとか。
通りで登録料に金貨一枚もとられるわけだ。
「よし。これで登録は終わり。魔狼討伐の報酬はこれだ」
「ありがとうございます。それじゃ」
「待て待て。そう急がなくてもいいだろう。どうだ、私の部屋で御茶でも」
「身の危険を感じるので遠慮します。それじゃ」
「待て待て待て待て待て!話があるんだ話が!」
「最初っからそう言やいいだろうによ」
「…お前達は来なくていいぞ」
「ジュンとギルドマスターを二人きりにするとか。ありえないですぅ」
「己を知れ」
ファウはなんだか毒舌になってないかい?仰る通りなんだけどさ。
で、話があると言うのでギルドマスターの執務室へ。
流石はギルドマスターの部屋と言うべきか、中々に高級感のある部屋だった。
魔獣の首の剥製があるのが冒険者ギルドらしいっちゃらしいのか。
「それで話って何です。外で人を待たせてるので手短にお願いしますね」
カタリナとゼブラさんにファリダさんは馬車で待機中だ。
今頃、行列に混じってた貴族達から質問攻めにあってるに違いない。
出来るだけ早く戻らないと、文句を言われそうだ。
「あぁ。いくつかあるんだが…お前、これからも冒険者を続けるつもりか?」
「勿論。どうしてそんな?」
「今日一日でわかったろう。多分、明日になればもっと増えるぞ。行列が」
…うん、言わんとする事はわかった。そりゃ依頼を受けるたびにあんな行列作るわけにも行かないし、現場に連れて行くわけにもな。
何らかの解決手段を用いる必要はありそうだ。
……いやいや、おかしくね?つつが無く冒険者をやる為に皆との婚約を前提に協力をしてもらった筈なのに。
早速問題出てるし。
『それはあくまで貴族やら組織やらエロース教やらの介入を防ぐのがメインやからな。そっちは現に防げとるやろ?マスターがなんの後ろ盾も無い状態やったら冒険者ギルドに来る前に誘拐犯に遭遇しとるで』
…そりゃそうだが…確かに問題も出てるわけで。
『行列に参加してたんは殆どが何も知らん一般人やろ。冒険者か平民、親から何も聞いてない貴族令嬢。それが突発的に着いて来ただけで。流石にそんなんまで事前に対応しろって言うんわ酷やで』
それもそうか…しかし、それならそれで対処は必要だぞ。何か考えはあるか?
『そこはそれ。マスターはノワール侯爵やねんから。軽く脅せば引くやろ』
ううむ……そういう強権を振りかざす貴族は嫌いだったんだがなぁ…
『しゃあないやん。それに何も悪い事しようって訳やない。お互いの為やねんし。魔獣が棲む場所まで着いて来られたら最悪の結果になるんわ簡単に想像出来るやろ?』
…そうだな。仕方ない。地道に警告していくしかないか。
冒険者にはステラさん…ギルドマスターから警告してもらって。
「私から冒険者に警告するのは構わないがな。行き先で偶然遭遇する事までは止められないぞ」
…つまり、偶然を装って接触して来る輩まではどうにも出来ない、と。
そりゃそうだ。大人しく言う事に従う連中は良いが、何処にでも跳ねっ返りは居る。
勝手なイメージだが、冒険者は他に比べて多そうだ。
「それも高ランクになるほどな。高ランク冒険者にはプライドが高い奴も多いし、性格に難がある奴が多い。マチルダやジーニなんてマシな方だぞ?更に言えば私は超良識人扱いだっぞ」
「そこで自分を良く言わない方が好感持てるのに…」
院長先生は戦闘中以外はあの通りの母性溢れる人だし、司祭様は…敵対しない限りは大丈夫だろ、うん。
「兎に角、あの行列を何とかするように動け。アム達はランクを上げる事を意識しろ」
「あたいらが?」
「どうしてですかぁ?」
「今言ったろうが。高ランク冒険者には性格に難がある奴が多い。お前達よりランクが上のな。ジュンの護衛なら高ランクの私達の方が相応しいとか言って絡んで来るぞ。ランクを上げれば、それだけである程度は防げる」
ああ…居そうだなぁ。俺に絡んで来たらなら返り討ちにするんだが。高ランクを鼻にかけ、イキってる冒険者を返り討ち…それもまた俺Tueeeee…いいね!
『その場合、ほぼ間違い無く相手は女やで。それも美人の。殴ったり出来るん?』
……無理っス。大罪人でも無い限り無理だな。
「ランクアップか…最近はずっとジュンに合わせて低ランクの依頼しか受けてなかったしなぁ。Bランクになるのはまだ先だよな」
「だねぇ。ジュンの成績にはならないけど、次からはわたし達の依頼に付き合って貰う?」
「それはダメ。ジュンはお休み」
「それはヤダ」
ただでさえ、俺Tueeeeeの機会が少ないと言うのに。冒険者稼業は出来るだけ休みたくない。
ま、その辺りは後で相談するとして。
「話は終わりですか?」
「いや、まだだ。ミスリル鉱山の件は上手く行ってるか?」
「ん?アニエスさんとソフィアさん任せで、俺は特に何もしてませんけど…今のところは問題無さそうだとしか」
「ミスリルドラゴンの番は探しているのか?」
「探して見つかると思います?」
高位のドラゴン…それも人類に友好的で交渉可能な存在の雄。そんなもん何処でどう探せばいいのやら。
「そう言うと思ってな。私の方で集めておいた。これにまとめてあるからローエングリーン伯爵らに渡しておけ」
「……どうしたんですか、ステラさん。急に有能なギルドマスターぶっちゃって」
「何が急だ!私はいつだって有能だったろうが!」
いや、有能なのは潜入とか調査とかくらいで、普段はセクハラ上司って感じだもの。
「てか、どうやって集めたんです?」
「私は冒険者ギルドマスターだぞ?ギルドマスター同士の横の繋がりという物がある。各地のギルドマスターからドラゴンに関する情報をもらったんだ。自腹をきってな」
おお…それは確かに有力な情報網だろう。期待しても良さそうだ。
「勿論、ジュンからの見返りを期待して――」
「見返りにこれまでのセクハラは不問にしてあげますね」
「……もうちょっとまからないか?」
ならんね。これでもかなりのサービスだと思いますが?
「チッ……それともう一つ。これは別に大した事無いし、知らなくても問題無いんだがな。ドミニーが戻って来たらしい」
「ドミニーって…」
院長先生達の元冒険者仲間の?四人の内、唯一現役冒険者だって言う…
「此処暫くは帝国に居たらしい。最近アインハルト王国に戻って来たと、帝国との国境近くの街のギルドマスターが教えてくれた。あいつを味方にしておくと便利だそ。男に興味無さそうだったしな」
…なるほど。現役Sランク冒険者なら、さっき挙がった問題解決にもなりそうだ。
単純にどんな人なのかも興味がある。
「王都に来たら此処に来る筈だ。そしたら連絡してやる。口説き文句でも考えておけ。ついでに私を口説いてくれても…」
「お疲れ様でしたー失礼しまーす」
王都に来たら、か。別の場所でバッタリと会ったりして、な。




