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八九三の女  作者: 七星瓢虫
14/69

[姉妹]

中学校の正門を潜ると

制服の採寸、申し込み会場である体育館への道を

水先案内人のように教師達が誘導していた


少女が通学予定の中学校は叔母の母校だ


大した思い出もない学校生活だったが

少なからず、叔母の胸に込み上げてくる思い出があるらしく

道すがら記憶の断片を拾うように目線を巡らせる


叔母は卒業と同時にホステスとして働いている

裏街では至極、当然の事だ


寧ろ、ホステスなら上上だ


時折、少女と目が合うと

「うふふ」と、含み笑う叔母の姿に少女も自然と口元が綻ぶ


二人、時間を掛けて会場である体育館に着いた頃には

生徒達も保護者達も捌けていて、採寸作業は支障なく進む


制服販売業者の年配の女性社員が用紙に記入しながら

付き添いの叔母に話し掛ける


「今、身長百六十糎ですよね?」

「どうしましょう?少し大き目にして置きますか?それとも」


「大き目でお願いします」


そうして少し離れた場所で

試着し終えた制服等を若年の女性社員に渡している少女に

聞かれないように年配の女性社員に顔を寄せる


「あの子の母親、百七十近くあったんで」


「あ、それなら大き目にしましょう」


適当に受け答えながらも少女と目の前の叔母を見比べる

年配の女性社員に、にかっと笑う


「あたしは、チビの母親似なの」

「姉は父親似ですご~く背が高かったの」


納得したのか

将又、客の要望を優先したのか

にっこり返す年配の女性社員は再び、申込書に目を落とす


「体操着、ジャージー等も大き目で注文しますか?」


「は~い」


次の小間は通学靴の採寸で、注文はこれで最後だ

若年の女性社員に誘導されるも叔母を振り返る少女に

「大丈夫、行って行って」と、右手を振って応えた


遠く、少女の背中を見つめる


どんどん姉に似てくる

どんどん姉に近付いてくる


姉に比べれば自分はマシだ

姉は学校に通う事なく、娼館で働く毎日


母親と同じ道だ


父親なんか知らない

父親なんか分からない

もしかしたら自分と姉は種違いだとも思う


あまり似た所がなかったから


そんな姉が手と手を取り合って

愛し、愛された相手と裏街を出て行くのは仕方ない事だ

自分を残して裏街を出て行くのは仕方ない事なんだ


幸せを望んでも怨んだ事なんか、ない


不意に叔母は唇を噛み締める


姉は裏街を出て行ったが

姉の失敗は同じ裏街出身の相手と添い遂げた事だ


お陰で表街で生まれた千は裏街に逆戻りだ

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