8章「山本香と猫又マジシャン」
その日全ての授業が終わり、放課後となった。
殆どの生徒たちは、下校するか部活動に向かう。
僕は帰宅部なのでいつもならすぐに帰るところだが、今日は予定がある。
バケを引き連れて屋上に向かった。
・・・・・・
屋上は冷たい風が吹いていた。
最近暑かった気温が、ここでは低くなっている。
屋上を見渡すと、一人の制服を着た少女がいた。
高一だろうが、背が低いからか中学生に見える。
彼女に寄り、声をかけた。
「・・・君か?手紙をくれたのは」
彼女は振り返った。
「ああ、貴方が・・・虎太郎先輩ですか」
彼女は何やらよく分からない髪飾りをつけていた。紅白の色の。
「さて・・・早速本題に行きましょうか。私は、貴方を疑っているんです。失礼だけど」
「・・・」
無言でいた。
そしてその後、彼女は声を少し大きくして言った。
「貴方。妖怪に取り憑かれてますね」
風がその瞬間吹いた。
「・・・どういう事だ」
「おや?先輩。姿が見えてないんですか。長い間取り憑かれてますね。およそ3日間でしょうか。なら仕方ありませんね。私が今居る妖怪の位置を指さします」
彼女が人差し指を向けたのは・・・。
バケの方だった。しかも彼女の指がバケに透けている。
「分かりましたか?ちゃっちゃと退治しちゃいましょう」
彼女は懐から大幣を取り出した。
そしてバケに向けた。
「私の名は、『山本香』。妖怪よ。貴様の真の姿を見せろ!」
そこからすぐに香は呪文の様なものを呟き始めた。
「ク・・・アアア!!!」
バケが頭を抑え苦しみ始めた。
咄嗟に香に叫んだ。
「辞めろ!!バケは僕に何も危害を加えていない!」
いつの間にか呪文無しでバケに何か出来ている。
「・・・先輩・・・。貴方は妖怪の危険性が分からないんですか?妖怪一つ居るだけで、町が滅ぼされてしまうこともあるんですよ・・・?でも、もう彼は本当の姿を暴きますよ」
そう言った直後、バケの体が紫色の炎に包まれた。
そして悲鳴が聞こえなくなった。
それから5秒経ち・・・
バケは消え、黒いマジシャンの様な服を着た少年が現れた。
それには猫又の2つに別れた尻尾と、猫耳がシルクハットの上から猫耳が生えていた。
「・・・ここまでか。さあ、ショーの開幕だ」
その少年が言い放った。