2章「いつもの」
「ご乗車ありがとうございました。五香、五香です」
アナウンスが車内に響く。
僕は謎の声を聞き、また眠ってしまったようだ。
あの声は、何だったんだろう。僕の知り合いにあんな声の人はいない。それより、もう降りなくては。
駅から出ると、もう星空が浮かんでいた。
一抹の夢物語の様に謎の声の事件は終わってしまった。
そう、思っていた。そう、願っていた。
・・・・・・
家に帰り、さっさと寝、また朝を迎えた。
あり合わせの朝食を食べ、準備して高校に向かった。
我ながら料理は器用に出来る。まあ、コンビニ弁当を食べるより自炊の方が栄養面も良いし、飽きもこない。そして、意外と楽しいから好きだ。
学校は辛いか?と、聞かれると、そうでも無いと答えるだろう。
逆に、学校が楽しいかと聞かれると同じようにそうでも無いと答える。
そんな物だ。学校生活なんて。
だが、友達は2人いる。
「よう、おはよう。コタロー」
「やあ、コタロー。いい朝だね」
向かってきたのは僕より背が高い、茶髪の同級生と、黒縁眼鏡をかけた逆に背が低い同級生だ。
名前は、茶髪が清水明、眼鏡が佐藤雄介だ。
2人共、元は中学から付き合いで、そこで高校になり僕に仲良くさせてもらっている。
佐藤は成績優秀、スポーツ万能・・・と言いたい所だがそこまでスポーツは万能ではない。それでも彼が凄い事に変わりはない。
清水はどちらも及第点だが、クラスでは所謂、陽キャだ。クラスの盛り上げ役で、それでも僕や佐藤の様な余り目立たない人にも仲良くしてくれる。
「にしても、今回のテスト難しかったよなぁ・・・佐藤はどうだった?」
「98点」
「軽々しく言うなよ・・・コタローは?」
「僕は・・・」
いつもの通学路を2人と歩く。この光景が僕は大好きだ。
この様ないつもの日常が続いて欲しい。そう切に願う。