ただの案山子と陰険眼鏡のニヤニヤ
「──ッ!?早…ッ!!近…っ!陰険眼鏡~!!(怒泣)」
「フフフフ…ッ!!(笑)」
「カカーシッ!!」
ブンッ、ブンッ!
鋭利な指?藁を伸ばしてくる“ただの案山子”から必死に逃げ惑うたまゆら…
ガッ、ガリッ!ドォーンッ、ドンッ!!
岩石や地面がたまゆらが必死に避けた端からただの藁の指や拳?から逃げる度に穴が空いていく。
…片や愉しそうな陰険眼鏡の高笑いが神経を逆撫でする。
「うひぃっ!?またぁ…ッ!!~~ッ!!せいッ、はぁ…っっ!!」
手にした野太刀を振り下ろし一閃。…浅い。
「うわぁぁーーっ!!?(泣)」
「カカーシッ!!」
「フフフフフフフフッ!!」
ATK40のたまゆらの攻撃!残念、ただの案山子はDEF50もある。ダメージ、1。(因みに通常フィールドだと普通に0だが、チュートリアルフィールドの為最低1は通るようになっている)
おまけに俊足を持っている「ただの案山子」だ…クリティカルになりそうな攻撃はすべからく察して、避けてくる。
貯まるフラストレーション、間が開く…開いた間合いの外からただの案山子の指刺突…擦っただけでHPが…50ずつ削られていく。
「死ぬ!死ぬ!!死ぬぅぅ~~っ?!(泣)」
HP200しかないたまゆらが“ただの案山子”に正攻法で勝てる映像は見えない──と言うか、後数回で確実に詰む。
必死に避ける、「カカーシッ!!」避ける、「カカーシッ!!」攻撃。1のダメージ!ダメだ…攻撃が効いていない…!!
因みにこれはチュートリアルなので負けても問題はない。精々が陰険眼鏡に嗤われるだけだ。あと、不名誉な称号『ただの案山子に負けし者』を授かる。それと陰険眼鏡に笑われ過ぎたプレイヤーは『陰険眼鏡の笑いツボ』と言う大変不名誉で不本意な称号を獲得する…効果は近くを通る度に忍び笑いされる。特定NPC(住人)の好感度微上昇。
魔法を封じられたたまゆら…さあ、どうする?このまま負けた場合──不名誉で不本意な称号が二つも手に入る事になるぞ。
「…っ、それだけは…!断じて!許容…、出来ない!!──スキル【混沌の使者】!!!」
ゴゥ──ッッ!!
《──深度0.0001%…、発動を検知。プレイヤーたまゆらを上位存在へと顕現させます──効果は10分。》
たまゆらの初期アバターの髪色は白銀色、瞳は赤紫、肌は白磁…、だ。
それが、この特殊スキル【混沌の使者】を使用すると…髪は漆黒に染まり、瞳は血色に輝き、白目の部分は紫へと変わり…肌は蒼白くなっていたーー。
「──ッ!?な、」
陰険眼鏡の驚愕に見開かれた瞳、笑いの止んだ間抜け顔にたまゆらは少し溜飲がすく思いだ。
「カカーーシッ!──ッ!?」
案山子の“針千本”も変化したたまゆらの身体を貫きはしない。
「…よくも」
フォースの暗黒面へと堕ちたたまゆらの──いや、【混沌の使者】たるたまゆらはその背に漆黒の鴉羽根を生やし素早く飛翔、接近。
ザシュッ!
「よくもよくもよくもよくも」
ザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ!!!
「笑われるのも!逃げ続けるのも!疲れたんですよ、嫌なんですぅ~~ッッ!!おのれ、陰険眼鏡!おのれ、ただの案山子!!許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないーーーッッ!!!」
◇混沌の使者解放時◇
HP:1000/1000
MP:1000/1000
ATK:1000
DEF:1000
AGL:1000
ING:1000
MID:1000
RAK:1000
[スキル]
混沌の断罪・混沌の牢獄・混沌の時天秤
[魔法]
カタストロフ・終わりを望む歌・終焉の慈雨・*******・*******・***・**…<これ以降は深度不足で使用できません。尚*表記は深度不足による閲覧制限です。解除するには深度を深めましょう。>
レベルに変化はなく、能力値が固定化されるようだ。
「混沌の断罪!混沌の断罪!混沌の断罪!混沌の断罪──ッッ!!」
「カカーー……」
【混沌の断罪】
防御力を無視した貫通攻撃。部類は物理攻撃で武器に依存するスキルなのでこのチュートリアルエリアでは制限を受けない。
たまゆらが野太刀を振るう度に斬擊が飛ぶ…不可視な漆黒の刃は5振りでただの案山子のHPを消し飛ばして尚止まらず──グリンッ!
「…次は」
「──ッ!?ま、まさか…お、落ち着きなさい、渡り鳥よ!これはチュートリアルで…」
ニタァ~~ッ。
怒れる混沌の使者が微笑んだ。
…チュートリアル画面が終わらない──!?よ、よく見れば…空間が“混沌の牢獄”の中だ…!!
そこは真っ暗な宇宙空間…“ただの案山子”もなく、セレストとたまゆらのみ。
【混沌の牢獄】
対象を亜空間に閉じ込め、使用者に対する一切の敵対行動が取れなくなる。
混沌の使者限定の捕縛用スキル。魔法及びスキルの使用不可、武器による攻撃の不可。…望むならどんな事でも。発動にMPを必要としない。
「お・ま・え・だぁ~~ッ!!陰険眼鏡!!よくも嗤ったなぁ~っ!こっちは必死なのに…こっちは必死なのにーーッ!!(怒)」
「──ッ!?お、落ち…グァアアッ!!貫通攻撃…アガ、アガガガ…ッッ!!!」
「…混沌の断罪、混沌の断罪、混沌の断罪、混沌の断罪、混沌の断罪からの──混沌の時天秤!!」
「!!?な、なん──ぁあ゛っ!!」
セレストの頭上に縦5m、横3m、中心の高さ5mの天秤が現れる。
ゴイン──ッ!
不可視のソレは重さ等なく、真っ直ぐとセレストの頭上から体内へと堕ちていく──。
「…貴方のステータス、レベル、魔法、スキル──全て私のモノに。…命だけは取らないであげますよ。ねぇ、セレストさん?」
“天秤”の左右は【時】を象徴する三日月と星の彫刻があった。
【混沌の時天秤】
縦5m、横3m、中心の高さ5m、左右に【時】を象徴する三日月と星の彫刻が着いた蒼銀色の不可視の天秤を敵対者へと落とす。思考発動するMPを必要としない奪取系スキル。口頭で告げた能力値やスキル、魔法を使用者のものとする。
尚、ゲーム内時間24時間経過すればこの術によって奪われたステータス、レベル、スキルや魔法は再び本人の元へと戻る。
…因みに得た能力値はゲーム内時間24時間経過すれば自動的に解除される。だから、むちゃくちゃチートにはならない。
おまけでその瞬間劣化コピーで深度に応じてスキルはレベル1へと戻り、魔法は初期の魔法を幾つか劣化コピーできる。
──混沌の使者、やべぇ!!
…これ、鑑定変わりに使えるかもよ?しかもスキルで、デメリットもないし。思考操作でわざわざ口にしなくても発動する…そして一度発動さえしてしまえば──相手の能力を丸パクリできる。相手の能力を丸々スキャン…やべぇ。やべぇよ!!
…で、今現在のたまゆらのステータスは…
名前:たまゆら
性別:女
種族:混沌の使者(※種族スキルを使用中)
職業:魔法使いLv2new!/錬金術師/侍
称号:混沌の使者
Lv.20(+86)
HP:1000/1000(+80000)
MP:1000/1000(24000)
SP:100(+5)
ATK:1000(+8000)
DEF:1000(+6500)
AGL:1000(+5000)
ING:1000(+24000)
MID:1000(+30000)
RAK:1000(+5000)
で。
やっぱりオール5000じゃなかった。流石は格上NPCである。高度な隠蔽スキルをお持ちだ。
即スクショ撮ったった☆
スキルと魔法はーー
[スキル]
魔導空間・魔法支配・弓導師・ 錬金術・召喚術・並列思考・精霊守護・自動MP回復EX・解体・料理・調合
[魔法]
各種ボール系、各種アロー系、各種ランス系、各種バレット系、各種ウォール系、各種能力アップ、各種能力ダウン、ヒール、ヒーリング、妖精の園、ディスペル、リカバー、サイクロン、水竜の大津波、火精霊の咆哮、風精霊の舞い、大地の怒り、メテオ、神の雷、極楽浄土の花、テレポート、リターン
…尚重複している奴はスルーで。
[魔導空間]…持っていると詠唱阻害スキルや魔法を弾く結界を自パーティー全員に付与する上、魔法操作の速度をスキル分加算する。MP自動回復(微弱)。魔結界の上位互換。
[魔法支配]…己よりレベルの低い魔法使いや魔術師、魔導師の魔法や魔術、召喚術…等のその全てを己の支配下に置き任意でキャンセルしたり、妨害したり、相手の回復魔法や付与術を自パーティーに掛けたりする。職業レベルに依存する。
[弓導師]…弓のスペシャリスト。短弓、小弓、長弓、和弓、設置弓…等の弓なら何でも完璧に扱いこなし、また自軍の弓持ち全員にスキル精密射撃、威力向上、スタミナ減少速度低下を付与する。
[精霊守護]…中級精霊までならレベルやステータス、スキル、魔法の全てを任意思考で隠蔽したり、改変できる。
精霊言語に通じ精霊文字の刻印に精通する。
…隠されし精霊の里や庵、祠への立ち入りを許可される。
何人も精霊の守護を突破して鑑定すること叶わず。
…どう見てもこれが原因よね?βテスト中、誰も陰険眼鏡の【鑑定】が出来なかった~って掲示板で騒いでたもの。
条件が大精霊以上の精霊と契約する事。大精霊と一対一で戦い、勝利する事。尚、召喚獣の使役は1体まで可。厳しい~。
そもそも“精霊”とはどこで会うのか?また、唯一関係ありそうな種族がエルフ…ドワーフはなんか、ちょっと違う。や、生産職プレイしたいなら火の大精霊に好まれるので…お好きにどうぞ。(どこに居るか不明だが)
テレポートは自分が行った事のある街や村、砦や城に瞬時に移動できるRPGお馴染みの瞬間移動魔法で、リターンはそのまんま。ダンジョンの入り口や自身が最後に訪れた街の入り口に転移する魔法だ。
「フフフッ、フハハッ、アーハッハッハッハッ!!」
腰に手を当てどこぞの悪役のように高笑いするたまゆら…彼女の闇は深いようだ。
傍らには“屍”の陰険眼鏡…
──称号【陰険眼鏡を打ち倒し者】を獲得しました。──称号【はじめて笑い袋のギルド職員を沈黙させた人】を獲得しました。
──称号【勇者(笑)】を獲得しました。
──称号【復讐するは我に在り!】を獲得しました。
「うるさーい!!」
…称号【天の声に対するナイスツッコミ】を獲得しました。
「!?」
……………
………
……。