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アンドロイドの君へ  作者: 阿賀野基晴
第1章 アンドロイド
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第5話:君との関り


「すみません。私、何かしましたか?大丈夫ですか?」


そう言うアンドロイド。


「あぁ…。すまない。君のせいじゃないんだ。ただ今は、…ここはもういいから、別の部屋の掃除を頼む。」


「…分かりました。」


アンドロイドを部屋から追い出し、いつものように部屋に閉じこもる。

他の部屋から掃除の音が聞こえる。

家事を再開したのだろう。


俺はティッシュで涙を拭き、鼻をすすって落ち着かせる。


「…冷たかったな。」


自分の手を眺めながら言う。

当たり前のことだが、少し怖かった。

それがアンドロイドであると分かっているのに、そのリアルな動作や見た目に脳が少しでも人間であると錯覚してしまう。

その錯覚は少々のことでさえ恐怖となる。

人であるはずなのに、こんなに冷たく硬いのだと。

それが愛する者の形をしているのだ。

こんなに辛いことは、ない。


「今日だけの辛抱だな。」


麗奈が今頃上司に掛け合ってくれているはずだ。

そろそろお昼休憩のはずだ。

もう少ししたら電話して聞いてみよう。


「修二さーん」


アンドロイドに呼ばれた。

なんだよもう、関わりたくないのに。


「はいはい。なんだよもう。」


俺はドアを開ける。


「すみません。ここの電球つけてもらってもいいですか?」


見るとチカチカと今にも消えそうな電球だった。

しかも少し高い位置。

そういえばいつもここは俺が変えてあげていたな。

今みたいに妻が呼んでくれて、そのたびに…


おっと。

もうこういうことを考えるのはやめよう。

そろそろ、ちゃんとしなければ。


「あぁ。いいよ。脚立を持ってくるから電球を持ってきてくれ。」


「はい!」


俺は脚立を用意する。


プルルルル


「ん?…あぁ麗奈か。」


麗奈から電話がかかってきた。


「もしもし?」


『お父さん?どう?E-00。ちゃんとやってる?』


「何だよお前。ちゃんとやってるかって、そっちで見れるんじゃないのか?」


『見れるって…あぁログのことを聞いたの?ログは確かにあるし見れるけど何か不具合が起こった時しか見ないわよ。そんなのずっと見てたら私も何もできないしね。』


そりゃそうか。

一日中テレビを見続けるようなもんだ。

そんな無駄なことはしないか。

よかった~~~~~~。


「いや、特に変わったことはないよ。…いや違う!!そんな話じゃなくて!!」


『ん??なにかあったの?』


「なにかもなにも、ちゃんと上司に言ったんだろうな??」


『…。あ、昼休憩終わっちゃう。ごめんもう切るね。』


「おい!!!!!今始まったばっかだろお前!!待て!!」


『じゃあね~。』


ブチッ


こっちの話を聞くこともなく切られた。

だが俺も負けてはいられない。


電話をとにかくかけまくる。


1回、2回、3回…

5回目で麗奈が出た。


『もう!!音切ってても目障りだからやめて!!』


「やめてじゃねぇよ!聞いてくれたんだろうな???あぁ??」


『もう!その話は終わったの!!やっぱり駄目だから家で面倒見て!』


「はぁ??俺はそんなの許可してないぞ!?」


『お母さんの許可があるんです~。誰にも文句は言われません!!…もういいから、お父さんは何か問題があるときだけ連絡してくれればいいから。』


「問題って言ったってだな…。」


ガチャ


ん?

玄関が開く音がしたな。

聞き違いではない。

宅配便か何かだろうか。


電話をしながら玄関の方を見る。

が、誰もいない。


ん?


誰もいない??


「!?」


俺は急いで家中を駆けまわる。


『ん?なになに?なにかあったの?』


「い、いや…。別に…。」


ハッとして窓の外を見る。

そこには、あのアンドロイドがいた。


あいつ、外に出歩きやがった!!


『え??なに??どうしたの??』


確か麗奈の伝言でアンドロイドを人に見せるなって。

これは本当にやばい。


「いや、なんもない。あ~っと…USB探してただけだ。」


『…あ、そ。じゃあもういいでしょ?この話はこれ以上は終わりね。もう切るから。じゃあね~。』


後半はほとんど聞いていなかった。

とにかく、今はあいつを連れ戻さなければ。

近所の人に見られでもしたら終わりだ。


「何やってんだよもう!!」


俺は寝間着を着替え、玄関を出た。

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