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アンドロイドの君へ  作者: 阿賀野基晴
第1章 アンドロイド
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第4話:アンドロイドの君

自分の部屋の椅子に座りながら、今日もSNSやゲームと学生みたいなことをしてる。

俺が学生の頃からスマホを触りながら成長してきたのだ。

昔の人の今の俺と同じ歳の人達と比べると大分違うだろう。


こんな風にスマホをいじりながら、俺は嫌なことから目を背けている。


ゴ――――――


掃除機をかける音がする。

どうやら本当に家事全般できるようだ。

くそ。

俺の知りたい欲がうずく。

どうやって動いているんだろう。


ちょっとだけ、触ってみるか。


気になり出したら止まらない。

俺は自分の部屋のドアに手をかけ―


ガチャ


「わっ!」


「おぉっ!!」


同時に驚く声。

っていうかアンドロイドも驚くのかよ。

それっている機能なのか?


「あ、すみません。掃除しに来ました。」


「あ、いや…うん。お願いする。」


驚きついでにすんなり受け入れてしまった。

アンドロイドが掃除機をかける中、俺は追いやられるようにベットの上に座ってそれを見ていた。


「…どうやって動いてるんだ?」


ぼそっと呟く。


「え?」


そう言ってアンドロイドは掃除機を切った。


「何か言いましか?」


「あぁ…いや…。」


キョドりながら否定する。

あぁ、恥ずかしい。


「そうですか。何かあったら言ってくださいね。」


そう言って続きをしようとする。

ダメだ、もう耐えられない。


「あ、あの!!」


「…はい?」


微笑みながらこちらを向く。

あぁもう。

その少し笑った顔でこっちを向くのをやめてくれ。

ドキドキする。


「あの…えぇと。」


何を言おうかも忘れてしまったじゃないか。


「あ、…ログとかって、取ってる?」


よく整理できないまま口走ってしまったけど結果オーライ。

聞きたかったことの1つでもあるからな。


「ログは取っていますよ。音声、映像、内部動作、もろもろ全てがこの家のネットワークに接続されており、社のほうに送信されています。」


「あぁ…なるほどね。」


なるほど。

ということは―


「この家も俺も全部丸見えってことか!?!?」


今朝の麗奈との会話や発言。この家の様子や今の俺ですらデータとして残っているのか!?


「あ、データに関する閲覧権限は麗奈が持っているので大丈夫ですよ。プライバシー保護のためです。」


なるほど。

だからと言って恥ずかしいけど。

他人に見られていないだけマシだ。


「あ、あの。…ちょっと触ってもいいか?」


うわ。

これ言ってみたけどなんか…変態みたいだな。

いや!!

こいつはただのアンドロイドだ!

俺は屈しない!


「あ、いいですよ。」


そう言ってアンドロイドは下に掃除機を置き手を差し出す。


不覚にも、いや、もうこの外見だとしょうがない。

ドキッとしてしまった。


「どうそ。」


俺は唾液を呑み込み手を伸ばす。

あぁ、なんだろう。

すごい、泣きそうになる。


意を決して、その手を俺は掴んだ。


「…っ。」


当たり前だ。

散々思ってきたことだ。

その手は硬く、冷たく、人のそれとは大きく違うのが分かった。

それでもかなり似せてはいるのだろう。

肌ざわりなんかはかなりリアルだ。

心のどこかで少しでも代わりになるだろうと思っていた。

ここにきて、ようやく俺はちゃんと気付く。


こいつはアンドロイドで、妻はもういないのだと。


そう思うと、また涙が出てきた。

きっとこれもログに残っているのだろう。

俺は、隠すように、泣いた。

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