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アンドロイドの君へ  作者: 阿賀野基晴
第1章 アンドロイド
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第2話:新しい朝と新しい君


トントントン


なんだか聞き覚えのある音が聞こえる。


ジャ――――


何かが焼ける匂い。


カチャカチャ


食器が奏でる音。


グツグツ


この香りは。

忘れもしない。

あいつの、みそ汁の香り。


「!!」


ハッと目が覚めた。


「…夢か。」


おおかた、娘の麗奈(れな)が性懲りもなく朝ごはんを作りに来ているのだろう。

来なくていいと言ったはずなのに。

麗奈は俺が務めている大学に入学し、かなりの好成績で学部、修士を卒業し大手のメーカーに就職した。

就職2年目にして長く付き合っていた男と籍を入れ、その一年後男の子を出産している。

産休、育休を終え会社復帰し、子供はもう4歳にもなる。

ここ最近の朝は麗奈が俺の家に、その息子は麗奈の夫が保育園に連れて行っているのだろう。


こんなことを考えるだけで、麗奈に悪いことをしていると自覚する。

やはりここはガツンと言ってもう来ないようにさせるしかない。


「くっ…っ。」


伸びをしてベットから立ち上がろうとする。


「お父さん!!!遅いって!!!私も仕事があるんだから!!」


「おい!麗奈!!もうお前ここには…」


「はいはいはいはいもう今日からは来ないって。だから今日が最後。」


「…お、おぉ。」


ガツンと言い切る前に止められてしまった。

本当はちゃんと言うつもりだったんだぞ?

しょうがなく言わないだけで。


まぁそんなことはどうでもよく、今日を最後にすると娘が言っているのだ。

俺もそろそろちゃんとしないといけない。


「それにしても、いつの間にお母さんの料理ができるようになったんだ?」


匂いだけで分かる。

これは妻の料理の匂いだ。


「ん?…あ~、それはまぁ、ねぇ。」


「あぁ?なんだよ。朝から変にニヤニヤしやがって。」


「ニヤニヤしてないし!!!!!!」


俺はリビングの扉を開いた。


「ニヤニヤしてるだろうが。気持ちわ―」


「おはよう。修二(しゅうじ)さん。」


俺は、目を見開く。


「ご飯できていますよ。」


毎日、もう一度会いたいと願った妻が、

生きていてほしかった妻が、

最も愛した、愛している妻が、

ドアを開けたそこに立っていた。


「なっ…え、な、…な???」


俺は上手に声も出せなくなっていた。


「ふっふっふ…。お父さんへ!じゃ~~~ん!!」


麗奈が大きく手を広げて前に現れる。

年甲斐もなくはしゃぎながら。


「はぁ…???」


俺はまだしゃべることができない。

と、いうより。

なんだこれは。

確かに目の前にいるのは妻だ。

さっきからの仕草や声使いまでもが妻そのものだ。

でが、決定的に違うのは、見た目が20代後半くらいと言うことだ。

結婚したての頃のような―


「な…おま…。」


相変わらず声はうまく出ない。


「驚いてるね~?前から言っていた私のプロジェクトが遂に完成したんだ。その試作段階で用意したってこと。」


「??」


麗奈のプロジェクト。

話はずっと聞いてきていた。

たしかそれは――


「こちら我が社の試作である完璧なアンドロイド!!アンドロイド E-00 です!」


「…え!?お、…えぇ??アンドロイド!?…なの、か??」


「…私はE-00。今日から修二さんのお世話をします。よろしくお願いしますね。」


そう言って、そのアンドロイドは、妻と同じ顔で微笑んだ。

本物と、まったく同じように。

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