第15話:君のもとへ
「…おかしいな。」
もう午後4時くらいになる。
それなのに、麗奈から連絡はない。
「…ちょっと電話かけてみるか。」
色々遠回りなことをしたが、結局自分で家に電話をかけることにした。
プルルル…プルルルル…
「…出ないな。」
何かあったのだろうか?
不安が募る。
「いや!そう言えば…。」
今朝来るときに電話にも出ないようにしろと言ったな。
人間でなく、アンドロイドだ。
言われたことは決して曲げないだろう。
言いつけ通り無視しているに違いない。
そうとなると余計家の状況が見えないから不安だ。
麗奈もどうやら忙しいようだし。
「4時まで…あと5分か。」
授業を持っているわけではないし、今日は4時になったら帰ろうかと帰り支度を始める。
「失礼します。」
そんな最中に限って、学生がノックと共に入ってきた。
「んお!はいはい!どうした??」
ビックリして変な声が出たけどまぁ気にしない。
「このプログラムなんですけど…。」
そう言ってその学生はプログラムのエラー部分を見せ、解説を始める。
おいおい、それ絶対時間かかるやつだろ。
こんな時に限って…。
「…分かった、ちょっと見せてみろ。」
それでも未来のある学生だ。
自分事で学生の時間を無駄にするようなことはしない。
俺は鞄を机に置き、学生のプログラムを見る。
麗奈からの応答はまだない。
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別に普段の仕事からすると遅いわけではないのだが、俺は17時に学校を出て、急ぎ足で家へと向かっていた。
ワクワクしながら帰っているわけではない。
とにかく心配なのだ。
麗奈からは何の返事もないし。
こんなことならアンドロイドの状態を監視できる何かアプリでも…
って、機械相手だからってそれはやりすぎか。
それに自分のでもないわけだし。
そうこう考えている内に家に着いた。
この時点で、俺は大きく動揺していた。
家の前に知らない車が一台あったからだ。
「…!!!」
俺はすぐに車を停め、走って玄関へと向かう。
「E-00!!」
扉を開けたと同時に、そう叫んだ。
「うわっ!びっくりした~。」
そこにはノートパソコンを持った麗奈がいた。
「なっ。お前ここで何してんだ??」
「それが…。」
その言葉を聞いて、俺はリビングへと急ぐ。
そこには2人のスーツを着た男達に囲まれている床に倒れこんだアンドロイドがいた。
「なっ…!!どうしたんだ!?」
アンドロイド相手にかなり動揺する。
「お父さん!!ちゃんと話聞いて!!」
「あ、お邪魔してます。」
「すみません勝手にお邪魔して。」
二人の男が言う。
「E-00が数時間前にエラーでシャットダウンしてただけなの。今その復旧に来てるだけだから、心配しなくても大丈夫だよ。」
そう言いながら、手持ちのノートパソコンをカタカタする。
「エラーって…、バグか何かがあったってことなのか?」
「それがログを見てもよくわからないのよ。急に途切れてる感じで。映像でも最後に何かしていたわけでもないし…。」
「そんな…。ありえないだろう?ちょっと見せてみろ。」
そんな風に設計するわけがない。
俺は麗奈のパソコンを覗こうとする。
「ちょ!…ちょっと来て。」
麗奈は小声になりながらも俺をまたリビングの外へと連れていく。
「…なんだ??」
つられて俺も小声になる。
「こんなことあの場だと言いづらいの。…少しおかしいのよ。これ。」
「あぁ?そりゃそうだろうよ。エラーも何も出ずに止まってるんだから。」
「そうなの。それってさ、誰かが終了させたってことなんじゃないかなって思ったの。」
「…!?」
誰かが、故意に、アンドロイドの機能を停止したということか?
「お前それって…。」
「そうだよ!やばいんだよ…。何の目的かもわからないし、誰かも分からない。一番やばいのは、E-00がシャットダウンした情報が来なくてしばらく分からなかったってのが本当にやばい…。」
「なっ!!じゃあ何かされてたとしても分からないってことか!?」
この表現は何かちょっと誤解を招きそうだな。
「しーっ!!とりあえず今一応解析してるところだけど、多分再起動させれば元通りなると思う。ただ、やっぱりこの家にはもう置いておけないかも…。」
「そんな…。」
どうにかならないのか。
今からでも上司ともう一度話してみないか。
そんなことを思っては、無駄なことだと頭の中で棄却する。
その犯人は見つかるのか。
そもそも、そんな犯人が本当にいるのかもわからない。
あぁ、もう一日、学校を休んでおけばよかった。
もっと早く帰っていればよかった。
麗奈も俺も、それからはもう何も言わなかった。




