第9話:君の行動
和解と言うか、理解と言うか。
とにかく俺とアンドロイドの間に合った何かは消え失せた。
そのまま俺達は電球を取り換えてお互いのことをする。
アンドロイドは家事の続きを。
俺は明日にでも仕事に行けるようにと準備を始めた。
と、その前に。
さっきまで麗奈にあんなことを言っていたが、上司に言うのはやめてもらわなければならない。
散々言ってしまってのこの結果だが、うやむやにはできない。
俺は電話をかける。
プルルルル―
…でない。
確かに昼休みはもうとっくに終わっているしな。
気付いた時に折り返し電話をかけてくるだろう。
自分で上司に相談するよう仕向けたが、ここまでわが家の情報に特化したアンドロイドなのだ。
そうそう切り替えることはできないだろう。
なぜそれをさっきまで強行しようとしていたのかは自分でもわからないけど。
普通に考えて無理だろう。
「修二さん。遅くなってすみません。ご飯できましたよ。」
「あぁ。ごめん。ありがとう。」
俺は少し遅い昼食を食べに行く。
「ん?…これは、つけうどんか?」
温かい汁につけて食べるうどんだ。
つけ麺のうどん版。
だが、これはわが家では夜ご飯でしか見たことなかった。
「そうです!…お昼ご飯じゃなかったですか?」
「ん?…あぁ。大丈夫。確かに夜しか見ないけど、いつ食べてもおいしいもんだ。」
「…すみません。私にはデータしかないから、何が何時に適しているかまではわからないんです。」
なるほど。
料理ができるデータはあるが、それが朝食用なのか昼食用なのかなどは分からないのか。
確かにそれを分ける必要はないかもしれない。
必要ならそれも覚えさせれば良いだけだし。
「大丈夫だよ。これはいつ食べてもいい奴だから。また何かあったら言うから好きにしてくれ。」
「はい!ありがとうございま…。」
ん?
どうしたんだ?
急にアンドロイドの動きが止まった。
笑っていた顔から、文字通りシャットダウンしたような、そんな表情になる。
手足や腰も真っ直ぐになり動きが止まる。
『あー、あー…。』
聞き覚えのある声が再生される。
『もしもし…あ、お父さんそこにいる!』
麗奈だ。
しかもどうやら映像も見ているらしい。
何より面白いのは、アンドロイドの口の動きや表情なども連動して動いている。
かなりすごい。
「あぁ、ここにいるぞ?麗奈、ちょうどいい。さっきの話なんだが。」
『お父さん!!!約束!!破ったでしょ!!』
「あぁ?やくそ…。っ!!」
ハッとして気付く。
忘れていたわけではない。
その後の事が上手くいきすぎてなんか解決した気分になっていたのだ。
そういえば俺は、約束を破ってしまっていた。
『E-00!!外に出したでしょ!!!!』
かなり怒った口調で言う。
顔があまり怒らなかった妻の顔だから少し新鮮だが、そんなことは今どうでもいい。
「あ、そういえば~。でも誰にもばれなかったぞ!?」
『そうじゃなくて!!今こっちはそれでてんてこ舞いなんだよ!!』
「すまん!麗奈!!!次は気を付けるから!!」
『そうも言ってられないのよ!!…ん?ってかお父さん、E-00の子と認めたの?…ってそんな話は今いいとして!!』
感情の行ったり来たりが激しい娘だ。
『E-00は超機密なんだよ!!見られるのも本当は危ないの!!』
「だが待てよ!自分で外に出たんだぜ??外に出ないようにしておかなかったのか?」
『本当に何でもできるようにしてるからそういうプロテクトはかけてなくて…。』
「今回は仕方ないだろ。誰にも気づかれなかったし、次気を付ければ…。」
『それがそうもいかないのよ。上はもう回収の検討を始めちゃってるの。危険な可能性があるからって。』
「はぁ!?…まじかよ。」
『もちろんE-00はもう我が家に特化されてるからそんなにすぐに回収にはならないと思うけど。でももしかしたら回収になるかも…。あぁ…私の努力の結晶がぁ…。』
「お、落ち着け麗奈!とりあえずまだ決まったわけじゃない!!お前も立ち会ってどうにか待ってもらってくれ!」
麗奈が就職したメーカーとは何度か共同研究をした仲だ。
いやだからと言って何ができるとかはないし、俺の意見を聞かせるほどの立場でもない。
それでも俺は、君をここにいさせるための案を練る。




