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Imagine World  作者: サツマイモ
『感想世界』
62/81

憤怒世界(ガールズアングリー)

「わたしは、怒っています!」

鍋パーティーのさなか、彼女―龍澤央那は突如として立ち上がった。立ち上がったと言っても、ようやく僕の座高より少し高くなるくらいで、全くと言っていいほど覇気は感じられなかったが、しかし憤怒であることは何となく伝わってきた。


「どした、急に」

佐渡島先生は、クジラ肉をほおばりながら問いかける。片手に持たれたジョッキは、すでに空だった。


「どうしてもこうしてもないです」

彼女は、持ち場から動くと、

「どうして、こんな奴に」と言いながらうてなの頭をグーで挟み、「負けたことになっているんですか!」とぐりぐり押し始めた。


「痛い痛い痛い痛い」


うてなは抵抗しなかった。きっと、この乱戦が怖かったのだろう、疲れているようだ。

「でも、あの状況で倒せたとしても、君は彼の従僕にはなれないと思うな」

うてなは、口で抵抗する。それに対し、龍澤は「むぅ」と頬を膨らませて抵抗する。

「なんで?」

「だって、君のご主人様は、私や先輩にぞっこんだもの。もし、君がここで私らを殺したら、きっと彼が暴走すると思うな」

彼女は、これ見よがしにしたり顔で僕を見つめた。


「そうなんですか、ご主人」


そんなこと言われても。

僕にはそんな能力を兼ね備えているわけでもないし、万が一怒りのあまりに実力行使しても、彼女にすぐ殺されてしまう。

そんな判断をするかどうかは、なってみないと分からない。


「いえ、君ならきっとそうすると思いますよ」

静々と鍋に箸をつついていた先輩は、静かに呟いた。


「君は、そういう人間でしたから」

そんな言葉を、呟いたのだった。


鍋の後、僕らは帰り支度をしていた。

「結局、龍澤の仕業ってことでいいんだよな?」

「はい、そうですね!」

元気よく手を挙げる龍澤。


「お前のせいでこんなことになったんだぞ?」

まあ、とにかく死人が出なくて良かった。

しかし、能力を返すとは何だろうか。


僕には反響世界という唯一無二の能力があるはずなのだが。


「佐渡島先生」

僕は尋ねる。

「おいおいわかる。今は、かけがえのない二人から、どちらを選ぶか考えとけ」

先生は笑う。

「どちらかを選ぶ?」

僕は反芻する。

「知識か、能力か」

先生は、かっこよくそう言って、コテージのドアを閉めた。


真っ暗の道はいつもの通りを別世界へと変化させた。

先輩もうてなも龍澤も、すっかり寝てしまった。


「先生、龍澤のことどうするんですか?」

「あー、どうしようか」

「え、考えてなかったんですか?」

彼女は、思いっきり笑ってから、僕に言った。その言葉はとても新鮮で、しかしどこか懐かしかった。

「明日のことは今日考える。でも、今日のことは明日考える。世界はそうやって回っているんだよ」

「意味わかんないですよ」

「いつか分かるさ」


僕らのドライブは、もう少しだけ続くのだった。


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